【激変する安全保障】北ミサイル「低高度」なら日本の防衛網を突破!? 安全保障に死活的影響も政府は危機感乏しく…能天気なコメント繰り返し

 北朝鮮の弾道ミサイル発射が止まらない。先月25日以降、16日朝の発射分を合わせて6回目となる。防衛省は一連の発射を「短距離弾道ミサイル」と断定した。そして、東部・咸興(ハムフン)付近から10日、日本海に発射されたミサイルは、北朝鮮が公表した写真では、ロシア製の弾道ミサイル「イスカンデル」に似ている。

 ならば、弾道ミサイル発射を禁じた国連安全保障理事会決議違反となる。北朝鮮への制裁が強化されてもおかしくないが、発射を強く非難する声すら聞こえない。

 ドナルド・トランプ米大統領に至っては、「すべて短距離だ」と問題視せず、「北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長から、とても美しく前向きな書簡を受け取った」「また会談を行うことになると思う」と、米朝首脳会談の開催に意欲を示す。

 厄介なのが、北朝鮮がいう「低高度滑空跳躍型飛行軌道」(7月25日発射)である。実際、同日の発射は「低高度」(ディプレスド)軌道であった。低高度だと、大気の抵抗を受け、飛距離が短くなるが、それでも同日は600キロも飛んだ。すでに「中距離」核戦力全廃条約(INF)が禁じていた射程500キロを超えている。

 しかも低高度ではなく通常軌道なら、九州や中国地方が射程に入る。なのに、射程下の日本政府が(米国と歩調を合わせて)「短距離」と言い続ける姿勢はいただけない。

 同日は下降段階で水平飛行した後、「跳躍」(=急上昇・ホップアップ)したらしい。ならば、自衛隊は弾道を正確に計算できない。その結果、ミサイル防衛網を突破されてしまう。

 岩屋毅防衛相は「総合ミサイル防空能力の強化を進める」と胸を張るが、具体策は示さない。

 日経新聞は11日朝刊で、海上自衛隊のイージス艦の「(迎撃ミサイル)SM3で撃ち落とせるのは高度70キロ以上だ。高度が50キロ程度の新型ミサイルには対応が難しい」と報じながら、同じ記事で「(地上配備型ミサイル迎撃システム)イージス・アショアの配備など迎撃網の多層化を進め、数回の発射で着実に撃ち落とせる体制を整える」などと識者コメントを掲載した。

 意味が分からない。

 政府も発射の度、「現時点において、わが国の安全保障に直ちに影響を与えるような事態は確認されていません」と能天気に繰り返すだけだ。

 百歩譲って「現時点」でそうだとしても、近い将来、日本の安全保障に死活的影響を与える事態ではないのか。何しろ、「北朝鮮は核兵器の小型化・弾頭化をすでに実現しているとみられる」(日本政府)のだから。

 だが、三度発射されても国家安全保障会議(NSC)すら開かず、ハト派の自民党幹事長から苦言を呈される始末。官民とも、あまりに危機感が乏しい。

 ■潮匡人(うしお・まさと) 評論家・軍事ジャーナリスト。1960年、青森県生まれ。早大法学部卒業後、航空自衛隊に入隊。第304飛行隊、航空総隊司令部、長官官房勤務などを経て3等空佐で退官。拓殖大学客員教授など歴任し、国家基本問題研究所客員研究員。著書に『安全保障は感情で動く』(文春新書)、『誰も知らない憲法9条』(新潮新書)など。

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