WTO敗訴 外務省「政治判断委ね過ぎた」 訴訟戦略で反省

WTO敗訴 外務省「政治判断委ね過ぎた」 訴訟戦略で反省

外務省庁舎外観=2017年7月29日(古厩正樹撮影)

 韓国による福島など8県産水産物の輸入禁止措置を世界貿易機関(WTO)の上級委員会が事実上認めた問題で、外務省は16日の自民党会合で訴訟戦略の不備を認め、輸入規制撤廃とWTO改革に努める考えを示した。一部の議員が求めた韓国への対抗措置や漁業者への救済策が今後の議論の焦点となりそうだ。

 自民党水産、外交両部会などの合同会議で、外務省幹部は「政府全体としての訴訟戦略を練ることができなかった」と総括し、「専門家と弁護士事務所のやりとりに任せすぎていた」「高度な政治的判断が必要となる場面で、専門家レベルの判断に委ね過ぎてしまった」と反省点を並べた。

 WTOでは、「1審」に当たる紛争処理小委員会(パネル)で日本の主張が認められたものの、その判断を上級委が取り消した。外務省にとっては想定外の逆転敗訴だったが、「パネルで勝ち、慢心の上にあぐらをかいていた」(官邸関係者)と厳しい視線が向けられる。外務省関係者は「これほど怒り、それを抑えようとしている安倍晋三首相を初めて見た」と漏らし、省内で「敗因分析」を進めてきた。

 自民党部会では、一部議員が韓国の「工作活動」が上級委の判断に影響した可能性をただす場面もあった。外務省幹部は「上級委や事務局への接触は厳しく禁止され、証拠もない」と説明したが、議員らの不信感は残ったままだった。

 外務省にとっての救いは4月26日のWTO会合で発言した12カ国・機関のうち、米国など11カ国・機関が上級委判断を問題視する日本を支持したことだ。部会でも報告され、外務省はこれを説得材料に輸入規制を設ける国々に、規制の撤廃や緩和を働きかけたり、上級委改革に向けた国際協調を強めたりする考えだ。

 この日の部会では、複数の議員から「韓国からの輸入に対抗措置を検討すべきだ」との声が上がった。その一方、水産庁は韓国の禁輸措置で影響を受けているホヤの養殖業者に対する支援策を提示した。宮城県では東日本大震災前、生産するホヤの7〜8割を韓国に輸出していた。韓国に輸出できなくなった養殖業者がワカメ養殖などに転換する際の支援策だが、対抗措置も含めて議員の意見が集約されることはなかった。

 浜田靖一水産総合調査会長は会議後、記者団に対し「聞き置いた。これから議論していきたい」と述べ、議論を積み重ねる考えを示した。(原川貴郎)

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