改憲布陣 自民党四役が前面 対韓国揺るがぬ姿勢

改憲布陣 自民党四役が前面 対韓国揺るがぬ姿勢

記者会見する高市早苗総務相=11日午後、首相官邸(鴨川一也撮影)

 安倍晋三首相(自民党総裁)は11日、内閣改造と党役員人事を行い、第4次安倍再改造内閣を発足させた。悲願の憲法改正や課題山積の外交・安全保障、社会保障にどう臨むのか、新たな布陣から読み解く。

■憲法改正

 首相は憲法改正に向けた与野党調整をにらみ、二階俊博幹事長や岸田文雄政調会長を続投させ、党四役が前面に立つ挙党態勢で臨む決意を示した。秋の臨時国会で停滞する改憲議論の進展を図る構えだ。

 「長年の悲願である憲法改正を、党一丸となって力強く進めていきたい」

 首相は11日の党役員会で、党四役全員の名前を挙げながら憲法改正への協力を要請した。これを受け、役員会後の記者会見では四役全員が改憲に取り組む決意を表明した。

 とりわけ鍵を握るのが二階氏だ。これまで憲法改正で目立った動きは見せてこなかったが、11日の会見では「総裁の意向に沿い、党を挙げて努力を重ねたい」と明言。周辺にも「世の中で憲法改正より大事なことはない。しっかりやる」と語るなど変化も見られる。二階派の議員は「首相から幹事長続投と引き換えに憲法改正を頼まれたのでは」とみる。

 自民党がまとめた憲法9条への自衛隊明記など4項目の改憲案は、主要野党の抵抗で国会に提示すらできていない。7月の参院選で、参院の改憲勢力が発議に必要な3分の2を割った事情もあり、野党を議論の場に引き出すにはより高度な駆け引きが必要となる。

 野党対策だけでなく、改憲に慎重な公明党との調整も課題となる。同党と太いパイプを持ち、首相が「党内一の政治的技術を持つ」と評価する二階氏の協力は不可欠といえる。

 岸田氏に期待する声もあがる。首相はこれまで下村博文選対委員長ら保守色の強い側近に改憲議論の中核を担わせてきたが、発言に野党が反発し、国会の憲法審査会の日程に影響が出る場面もあった。自民党関係者は「野党に柔軟な姿勢をアピールするためにも、ハト派の岸田氏が改憲議論で目立つのは良いことだ。『ポスト安倍』にもつながるだろう」と語る。

 このほか、多数派工作が必要となる参院の取りまとめ役として、参院幹事長には信頼を寄せる世耕弘成前経済産業相を起用した。

 党の責任者である憲法改正推進本部長や、国会の憲法審査会の会長人事も焦点となる。(石鍋圭、広池慶一)

■外交・安全保障

 茂木敏充外相と河野太郎防衛相が当面する課題の一つは、出口の見えない韓国との関係だ。

 いわゆる徴用工判決などで関係が悪化する中、外相として厳しい対韓姿勢を貫いてきた河野氏の交代は、韓国側に「日本政府が反省した」と誤解される恐れがあった。だが、韓国海軍艦による自衛隊機へのレーダー照射事件後も融和姿勢が目立った岩屋毅氏を代え、河野氏を防衛相に据えたことで、安倍晋三政権の対韓方針に揺るぎないことを示したといえる。

 軍事的挑発を強行する北朝鮮をめぐり日米韓による協力の重要性は増すが、文在寅(ムン・ジェイン)政権は日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA=ジーソミア)破棄を決め、安全保障分野の協力関係まで悪化させた。茂木、河野両氏は毅然(きぜん)とした姿勢を保ちつつ、韓国側に反省を促し、関係を正常化させる努力を引き出すことが求められる。

 一方、外相交代がマイナスに作用しかねないのが、北方領土問題を含む日露平和条約締結交渉だ。

 首相とロシアのプーチン大統領は今月5日、交渉責任者である河野氏とラブロフ露外相に「双方が受け入れられる解決策」を見つけるための共同作業を進めるよう指示したばかりだ。

 外務省幹部は「交代の影響はない。外相同士でしっかりやっていくことに変わりない」と語るが、強硬な対日姿勢のラブロフ氏との関係を構築し、交渉の突破口を開くことができるのか。茂木氏の手腕が問われる。(原川貴郎)

■社会保障

 「女性活躍」「1億総活躍社会」などを掲げてきた安倍晋三首相が11日の記者会見で「全世代型社会保障検討会議」の創設を表明した。少子高齢化が急速に進む中、官邸主導で社会保障制度の基盤強化を急ぐ。新会議の議長は首相が務め、有識者と関係閣僚で構成する案が有力だ。

 新会議では厚生年金のパートらへの適用拡大や、公的年金の受給開始年齢の上限引き上げなどが検討課題となる見通し。後期高齢者の医療機関での窓口負担や、介護保険サービスの利用者負担をそれぞれ原則1割から2割に引き上げることも議論するとみられる。

 昭和22〜24年生まれの団塊の世代が、令和4年から75歳以上の後期高齢者になり始めるとあって、時間はあまりない。6年にはすべての団塊の世代が後期高齢者になり、政府の試算によると、社会保障給付費は平成30年度の約121兆円から、令和7年度には約140兆円に急増する。

 現状を放置すれば、年金、介護、医療などの社会保障費は膨らむばかりで、給付と負担のバランスも崩れるのは確実だ。現役世代には負担が重くのしかかる。首相が「1億総活躍社会」などを進めてきたのは、こうした事態を避けるためで、「働き手」つまり社会保障制度の「支え手」を増やす意味合いがある。

 今後、着手する改革はその延長線上に位置づけられる。「痛み」を伴うだけに、社会保障制度を維持する意義を国民に理解してもらう必要がある。(坂井広志)

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