自衛隊が派遣終了、隊員感染ゼロ 自然災害と異なり試行錯誤

 河野太郎防衛相は16日、新型コロナウイルスの感染拡大で災害派遣した自衛隊員に撤収命令を出した。隊員延べ4900人が46日間、集団感染が発生したクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」などで活動した。緊急時対応に慣れた組織とはいえ、自然災害とは全く異なる任務に試行錯誤が続いた。

 自衛隊幹部は「ウイルス相手というだけでなく、自衛隊の判断で動けない点でも今までとは全く違う」と振り返る。

 河野氏が災害派遣を命じたのは、中国湖北省武漢市から政府のチャーター機で邦人第1陣が帰国した2日後の1月31日。2月3日には乗員・乗客約3700人のクルーズ船が横浜港に入港した。防衛省は自衛隊病院の医官や看護官、薬剤官らをクルーズ船に送った。

 隊員による船内消毒や医療機関への感染者搬送も担った。厚生労働省の基準ではマスクや手袋、ガウンの着用のみが義務付けられているところ、自衛隊は独自判断で防護服を着用。防衛省関係者は「接客レベルを重視する船側から『乗客に不安を与える』との理由で防護服着用を控えるよう頼まれた」と明かす。

 英国船籍のクルーズ船の運営者は外国人船長で、自衛隊医官のほか厚労省の検疫官や職員、災害派遣医療チーム(DMAT)らが同居する医療班は厚労省が主導した。内閣官房職員らも乗る船内の指示系統は一本化されなかった。

 隊員は防護服着用を続けたが、配膳などの乗客対応は船長の指揮下で、当初比較的軽装だった船の乗員を中心に実施。乗員、厚労省の職員や検疫官、内閣官房職員らにも感染が相次いだが、自衛隊員はゼロ。河野氏は13日の記者会見で「自衛隊から感染者を出さないことを一番重要視しなければならない」と述べた。危機管理能力は示せたが、もどかしさもあった。

 船から医療機関への感染者搬送や、乗客の一時滞在施設への搬送も自衛隊の救急車やバスが担った。自衛隊病院など関連病院では133人の入院を受け入れ、今は14人が入院している。

 クルーズ船では隊員延べ2700人、下船者や武漢からの帰国者の一時滞在施設では延べ2200人が活動した。今後も自衛隊病院での感染者受け入れは継続する。河野氏は「自治体だけで対応が困難な状況が発生すれば対応する」と述べ、具体例として離島から本土への患者搬送などを挙げた。(田中一世)

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