小池都知事、国政復帰へのシナリオとは 二階幹事長、国民民主・玉木代表…急速にすり寄る人々

小池都知事、国政復帰へのシナリオとは 二階幹事長、国民民主・玉木代表…急速にすり寄る人々

役者としては一流?

 まさかの結末となった都議選から一転、再び小池百合子都知事(69)と自民党の二階俊博幹事長(82)の策謀が始まった。迫りくる衆院選。誰の神輿(みこし)に乗るのか、あるいは神輿ごと乗っ取るつもりなのか。魑魅魍魎(ちみもうりょう)が跋扈(ばっこ)する政界で、「道ならぬ道」を行く彼女が見据える先は。

 ***

 4年前、一度は政権をつかみかけた風が再び吹き始めている。都政を牛耳る女帝が「初の女性総理」という“頂”へたどり着くための風が――。

「国会に戻ってくるなら大いに歓迎だ」

 今月8日、TBSのCS番組に出演した自民党の二階俊博幹事長はこう言って見せた。すると翌日、小池百合子都知事は会見で返す。

「二階先生からいつもご指導いただいていることに感謝申し上げたい。(国政復帰は)頭の片隅にもありません」

 気脈を通じているとはいえ、都議選を敵同士で戦ったはずの二人。実はこのやり取りにこの都議選の位置づけ、そして、今後の行方が示唆されている。

「二階さんは先の都議選の小池さんの振る舞いを問題ナシとしているのでしょう」

 とは、政治部デスク。4日に投開票が行われた東京都議選。下馬評では自民党が50議席を超え、都民ファーストは10議席前後ではないかと言われてきた。しかし、蓋を開ければ、自民党は選挙前の25議席から33議席に伸びるにとどまり、自公で過半数に届かず。かたや、小池知事が最高顧問を務める都民ファは「五輪無観客」を公約に掲げ、選挙前の46議席から減らしたものの、31議席と予想に反し、大健闘した。

 デスクが続ける。

「都民ファ健闘の要因になったのは、選挙最終日、過労で入院していた小池さんが退院直後、候補の応援に入ったことでした」

 その日、小池知事は病み上がりの体を押し、酸素ボンベまで持参して、20弱の選挙区に応援に入った。

 元通産大臣で自民党東京都連最高顧問の深谷隆司氏が言う。

「病院に入った後、世論は彼女への同情に傾いていきました。この最終日の影響は大きかったです。都連も“やられた!”という感じでした。僕から見れば、彼女は疲れているふりはしているけれど、あんなに手を振ってニコニコして元気いっぱい。まったく健康じゃないかと思いました」

 都民ファ関係者がこの内幕を明かす。

「応援に入ることは前日の夜に決まりました。選対幹部数人が小池さんの自宅である中野区の“エコだハウス”に集まったのです。陣営幹部から小池さんに“多くの選挙区に入ってほしい”という求めがあった。体調は万全ではなく、声を出しづらかったので、マイクでの演説はしないという話になりました」

 この“マイクを握らない”という点がミソだった。

「二階さんと小池さんの間に密約があったという話が流れています」

 と先のデスク。

「昨年の都知事選で自民党は小池さんを応援しています。その頃から、二階さんは小池さんに対し“都議選では自公と都民ファ両方を応援する”という話をしていたのです。実際、都連関係者に二階さんの側近である林幹雄(もとお)幹事長代理が“二階さんから小池さんに(3党を応援するよう)注意している”と通達しています。二階さんと小池さんの間に萩生田光一文科相が入り、小池さんサイドとの交渉が進められてきました」

 最終的に小池知事サイドが拒否し、計画は頓挫してしまったが、

「都議選最終日の都民ファ候補への応援ではマイクを握らなかったことで、積極的に応援はしていないという形にした。自民サイドに“都民ファに頼まれて仕方なく”“でも街頭演説はしていません”と言い訳することも可能になった。国対委員長の森山裕さんは小池さんのことを“うまくやっているよな”と、苦笑していました」(同)

 都議選翌日の5日、小池知事は自民党本部に現れ、二階幹事長と会談している。表向きはコロナ対策を協議するためだったが、都議選の応援についての説明をしたのは明らかだった。

「二階さんも林幹雄さんも小池さんの行為については不問に付しています」(自民党関係者)

 二階幹事長が冒頭の発言に至ったのはそうした背景があったというわけなのだ。


■「ケミストリーが合う」


 ほとんど選挙の表舞台に立たずして予想以上に議席を獲得し、圧倒的な「力」を見せつけた小池知事。秋にも予定される衆院選を前に早くも彼女にすり寄る人たちが現れている。

 一人は国民民主党の玉木雄一郎代表である。

「玉木さんはしきりに小池さんとの関係をアピールしていますよ」

 と、政治ジャーナリスト。

「小池さんが入院した時にも“彼女にメールした”と吹聴(ふいちょう)し、都民ファの議席数を見て“さすがだね”と絶賛していました。以前から玉木さんは彼女とサシで話すことができる関係です。国民民主党は衆参あわせても19議席という小所帯で、党の存続すらも風前の灯。そこで、小池さんとの連携を模索しているのです」

 国民民主党の議員は、

「もともと『希望の党』で一緒だったし、都議選でも連携した。お互いケミストリーが合うのは事実。小池さんは国政に進出するでしょう」

 もう一人が自民党の中谷元・元防衛相だ。

 所属する谷垣グループの会合で7日、「衆院選後、小池新党との保守合同を真剣に検討すべきではないか」と発言したのである。

 中谷氏に真意を訊くと、

「今回の都議選での評価を真剣に反省し、自民党もウイングを広げないといけません。特に無党派層や若者、女性などです。というのも、過去の教訓があるからです」

 そう言って、1993年の細川護煕(もりひろ)内閣発足の例を挙げる。

「直前の衆院選で自民党は過半数割れし、(細川護煕元総理の)日本新党が小沢一郎さんらの非自民と連立を組み、自民党は政権を失うことになりました。次の衆院選で自公が過半数をとれなかった事態を想定する必要があります。政権の維持を考え、小池さんが新党を作るのであれば、という意味で『保守合同を』と申し上げました」

 こうして彼らが小池知事に近づくのも、衆院選が目前に迫っているからだ。特に自民党は「敗北」も現実味を帯びてきている。直近のNHKの世論調査では菅内閣への支持率は33%と過去最低、不支持率も46%で過去最高だった。党内にも「このままでは戦えない」という焦りが充満しているが、それに拍車をかけているのが、菅総理の行動だ。

 官邸関係者が言う。

「最近の総理は視察が多い。今月1日には総理たっての要望で、児童5人が死傷した千葉県八街(やちまた)市の交通事故現場に献花し、12日には熱海の土石流現場を視察。熱海はともかく、八街の現場は痛ましい事故とはいえ、一国の総理としてはまずはコロナ対策を優先すべきだった、パフォーマンスととられかねないと官邸内でも不安の声が上がっています」


■“次の幹事長候補”


 その間隙(かんげき)を縫って、小池知事は着実に外堀を埋めている。公明党対策だ。

 前出の自民党関係者が指摘する。

「彼女は公明党代表の山口那津男さんと親密な関係を築いています。最近も何度か“今日も行ってきたの、信濃町”と本人が周囲に話しています。都議会で自公両党との関係修復を狙っているのでしょう」

 一方、二階幹事長も、

「二階さんの最大の目的は幹事長続投です。5月発売の『月刊Hanada』で安倍前総理がポスト菅として、加藤官房長官、茂木外相、下村政調会長、岸田前政調会長の4人の名前を挙げました。安倍さんが所属する清和会幹部は4人を“実は次の幹事長候補だ”という解説もしています。そうした安倍さんらの動きを警戒しているのが二階さんで、小池さんを手中に収めていることをブラフにし、続投を狙っているのです」(同)

 政治アナリストの伊藤惇夫氏が解説する。

「さすがに次の選挙のタイミングで都知事を辞めて国政に進出してしまえば、都政を途中で投げ出したと批判されるだけです。とはいえ、彼女は今でも初の女性総理への野望を捨てていない。いまはそのタイミングを見計らっている時期といえるでしょう」

 さらに彼女の肚の内をこう推察する。

「小池さんが考えているのは、自民党内に根強い自身へのアレルギーを取り除くこと。そのために次の衆院選で自民党候補を応援し、協力した上で自民党への復帰の道を探ることはあり得る。かたや、玉木さんとの連携は小池さんにたいしたメリットはありませんが、小池さんを国民民主党の代表として迎えるなら別です。小池代表として自民党との連立を模索する可能性はある。いずれにせよ、総理を狙うのは“次の次”の選挙になるでしょうね」

 五輪後には無観客開催となった赤字分の負担を巡り、国と都の押し付け合いにもなるが、無論、次の衆院選で自公が過半数を割ってしまえば、先の中谷氏の言葉の通り“小池政局”となるのは目に見えている。

 それを避けるには一にも二にもワクチン接種を進め、新規感染者を減らし、菅内閣の支持率を上げることだとされる。加藤官房長官は周囲にこう語っている。

「緊急事態宣言の期限である8月22日までに高齢者はワクチンを2回接種した上で2週間が経過して免疫ができている。さらに全人口の4割も2回接種し、効果が出ているはずだ。マンボウは効かない、宣言が効くと信じるしかない」――。

 少しでもワクチン接種を広めてから衆院選を行おうと、自民党内では衆院議員任期満了後の11月投開票まで取り沙汰されている。

 小池知事が恋焦がれてきた「初の女性総理」という称号。4年前の“希望”再び、となるか。

 これまで時の権力者に近付き、政界渡り鳥と揶揄されてきた女帝が歩むのは針の穴に糸を通すような細く、かつ険しい「道なき道」ならぬ「道ならぬ道」である。

「週刊新潮」2021年7月22日号 掲載

関連記事(外部サイト)