「一度くらい変えてみるか」の再来を防ぐために 石破茂の感じる国民の空気

■コロナ禍で近づく総選挙について 石破茂の異論正論(12)


 菅内閣の支持率が低迷する中、野党の支持率も上がらない。不確実な未来に不安を抱く国民は少なくないが、コロナ禍の終息はいまだ遠く、その後遺症が深刻なこと、そして秋には衆院選が行われていることだけは確実である。現在の状況に石破茂氏は自民党議員として強い危機感を抱いているという。

 石破茂の異論正論、第12回である。

 ***


■近づく「試験」の日


 新型コロナ禍の暗いムードを吹き飛ばすかのような日本選手たちの五輪での活躍ぶりには素晴らしいものがあります。

 しかしながら、私たち政治家は、「コロナ後」のことも見据え、考えておかなければなりません。

 衆議院議員にとっては「試験」の日が近づいてきています。言うまでもなく秋には行われる総選挙です。そして、このままでは自公政権に厳しい審判が下されるのではないか。そのように思えてなりません。

 いくつかの地方での再選挙、補欠選挙の敗北に続き、東京都議会選挙でも満足のいく結果を得ることはできませんでした。これらのことは、有権者の不満あるいは不信のあらわれだと捉えるべきでしょう。

 都議選には私も応援演説にずいぶん出向きました。また、最近は地元、鳥取県で街頭演説も再開しています。そうした場面で有権者と顔を合わせた際にも、やはり強いご不満を感じます。

「国民をバカにするな」といった気分、「自分たちを軽く見ているのではないか」といった疑念です。

 同志の衆議院議員、齋藤健さんはご自身の選挙区である野田市、流山市、松戸市内の駅前にこまめに立ち続けていますが、「雰囲気がとても悪いですよ」と言っていました。

 現在の感じは、私には麻生政権の末期に似ているように思えます。あの頃、多くの国民が「一度くらい変えてみるか」という気持ちになったことで、自民党は下野し、民主党政権が誕生しました。

 ちなみに前回、下野した後、野党時代に私は『国難』という本を出しました。ここで安倍政権(第1次)、麻生政権、福田政権を振り返りつつ、自省を込めて次のような文章を書いています。

「友を守り、身内を大切にすることも、冷静沈着な対応をすることも、とても重要なことですが、それが国民には正確に伝わりませんし、そもそもマスコミが理解してくれません。

 私は福田、麻生両内閣にいましたが、不祥事への対応がどのように報道され、国民の目にはどのように映るのか、世論はどのように反応するのかについて、総理の周辺がもっと細心の注意を払うべきだったのかもしれません。『身内の論理より国民の論理』を掲げて、潔さとスピード感を印象付ける工夫がもっとあるべきだった、と閣内にいた人間として反省しています」

■「ダメな野党」頼みではいけない


 その後、安倍前総理が再び総裁となり、自民党は与党に復帰しました。さまざまな実績がある一方で、この間、「ダメな野党」に救われてきた面があるのは否定できません。

 経済政策についても、「金融緩和して円安に誘導し、輸出が増えることで株は上がり、景気が良くなる」というアベノミクスで描いていたシナリオについて、「本当に自分たちの利益になっているのだろうか」という疑問を抱いた人は数多くいらっしゃいます。株価は上がっても、個人の幸福につながっていないのではないか。そんなふうに感じる方も多いのではないでしょうか。特に地方では、その恩恵を感じていない人は多くいます。

 そうした疑問に対しても「いやいや、悪夢のようだった民主党政権を考えれば、いまの政権は素晴らしいでしょう」という答でずっとしのいできました。つまり、「民主党はコリゴリだ」「あれよりは自公がマシ」と考えてくださる方が多いことに助けられてきたのです。しかし、そろそろそういう気持ちも薄くなっているように感じます。

 実際に「悪夢」という面はあったのですが、ではその悪夢からさめて随分経ったいま、現状に満足できるのか、このままでいいのか、と考える人が増えているように感じます。

 何かおかしい。

 国民がそういう気持ちを抱くようになっています。ツイッターで「#自公以外」がトレンド入りし続けているのは、そのあらわれと捉えるべきでしょう。

 次の選挙での自民党候補は、2013年の政権復帰以降に国会議員になった人が候補者の過半数になる予定です。ある意味で、追い風に乗って議員になった人がとても多く、地道な選挙活動をあまりやったことがない。そういう人たちがどれだけこの空気を感じられているだろうか。そんな不安を感じます。古いと思われるかもしれませんが、地道な選挙区の挨拶廻りや街頭演説などを通して、世の空気は感じられるものです。

 もちろん、立憲民主党や共産党など現在の野党が政権を担うことで、日本が良くなるのであれば、それはそれで結構なことでしょう。しかし、そのような能力が彼らにあるとは到底思えません。日本が抱える多くの問題を批判はしても、その解を示してはいません。ですから万が一、彼らが政権を取ってもまた「悪夢の〇〇政権」が繰り返される可能性は十分あるでしょう。

 国民の不満が溜まり、与野党ともにその解消法を見出せていない中、「試験」の日だけが近づいている。しかし、少なくとも与党の私たちは、もはや「ダメな野党」頼みであってはならない。そのことを肝に銘じなければならないでしょう。

 では政府、与党は、また政治家は何を示すべきか。それについては次回触れます。

2021年8月11日 掲載

関連記事(外部サイト)