「河野政権」誕生なら官房長官と幹事長は誰になる?新しくも混沌とした未来を完全予測

【自民党総裁選挙】河野太郎氏が新総裁なら小泉進次郎氏が官房長官か

記事まとめ

  • 総裁選挙で優勢とみられる河野太郎氏が新総裁となった時の、官房長官を予測している
  • 自らに近い議員が登用される可能性があり、小泉進次郎氏の名前が浮上している
  • 菅義偉首相も“近い”存在だが、安定感は抜群だが辞任したばかりでさすがに非常識とも

「河野政権」誕生なら官房長官と幹事長は誰になる?新しくも混沌とした未来を完全予測

「河野政権」誕生なら官房長官と幹事長は誰になる?新しくも混沌とした未来を完全予測

河野太郎ワクチン担当相

 自民党総裁選挙は党員票でリードが見込まれる河野太郎氏が現段階では優勢だ。決選投票にもつれ込む可能性も高く、結果は予断を許さないが、本稿では異端児と呼ばれる河野氏が新総裁、新首相となったら日本の政治はどう変わり、どこへ向かうのか、取材を基に予測してみた。浮かび上がってきたのは「新しくも混沌とした未来」だった。


■若手を抜擢 時計の針は進むが


 河野氏は従来から「世代交代」を訴えてきた。2009年の総裁選初挑戦の時には森喜朗元首相らを念頭に「悪しき体質を引きずっている人は、ベンチに入れるべきではない」と言い放った。今回は出馬宣言の前に安倍前首相や麻生財務相のもとに足繁く通うなど、ベテラン・重鎮に気遣いを見せたが、16日のテレビ番組では「実行力、行動力がなかったらリーダーに選んでもらう資格はない。私は私の思いを最後までやりきりたい」と語っている。閣僚や党役員人事では中堅若手議員が多数登用されることになるだろう。

 一方で安倍氏、麻生氏、二階幹事長は主要ポストにはつかない見通しだ。菅首相72歳、二階幹事長82歳が顔だった自民党からは様変わりし、時計の針が回った印象が打ち出される。

 だが「世代交代」ばかりでは済まないのが人事だ。安定的に政権運営できる態勢かどうかを考えなければならない。統治能力のない政権は、あっという間にダッチロール状態に陥るだろう。死活的に重要となるのが2つのポスト、党をまとめる幹事長と政府をまとめる官房長官だ。


■河野政権での幹事長は


 幹事長だが、河野氏の周囲には適した人材がなかなか見当たらない。今回、支援に回った石破元幹事長の顔は浮かぶが、河野氏は周辺に「石破さんには協力はしてもらうけど、タッグを組むわけじゃない」と話し、一定の距離を置いている。石破氏を嫌う麻生氏への配慮からも幹事長への起用はないとみられる。

 そんな中、河野側近議員は挙党態勢を築くために「総裁選で戦った3人を何らかの形で使うことになる」と話す。岸田元政調会長は有力な幹事長候補の1人だろう。

 また河野氏周辺には、党の安定のために安倍氏に近い萩生田文科相や甘利税調会長を抜擢してはどうかという声もある。だが河野氏と連携して、安定的に党運営ができるかは不透明だ。


■官房長官には側近を起用か


 より難しいのが官房長官人事だ。首相との一体感が求められるだけでなく、スポークスマンとしての発信力と官僚組織をグリップする力が問われる。周辺によると河野氏は自らが考える政策の推進のために首相官邸の布陣には特に拘りが強く、「自らに近い議員」から登用したい考えだという。

 そうすると浮上するのは小泉環境相(当選4回・40歳)や平将明議員(当選5回・54歳)だ。2人とも河野氏が右腕と頼む議員で、官房長官になればフレッシュな政権の顔として注目されるのは間違いない。しかし、官僚をコントロールして行政を仕切る能力には疑問符がつくし、果たしてこの混迷の時代を乗り切っていけるだろうか。

 そして「近い」と言えば菅首相がいる。官房長官としての安定感は抜群だが、辞任したばかりの首相を政権の要に起用するのはさすがに非常識だ。また側近議員ではないが、総裁選で選対本部長に就任した伊藤達也元金融担当相(当選8回・60歳)の収まりは悪くない。だがこれまで河野氏と政治行動を共にしてきたわけではないし、異端児をどこまで支え切れるのか予測がつかない。

 二階派幹部は冷ややかにこう語る。「河野は安定したチームが作れないからどうせ短命だよ。衆院選をのり切ってもらって、その後のことはまた考えればいい。」河野新首相は最初の人事から、極めて難しい判断が迫られることになる。


■異端児解禁 政策の振り子は左に触れるが


 立候補会見で「自民党は保守政党だ」と語り、党内保守層への配慮を見せた河野氏。だが脱原発、女系天皇、選択的夫婦別姓、同性婚、移民受け入れなどに前向きで、外交・安全保障政策はそれほどではないにしても、自民党では最もリベラルな部類に入る政治家と言っていい。

 周辺が「河野さんは今も派閥会長の麻生さんと緊密に相談していたり、サラリーマン的な動きもできる」と語るなど、組織の論理を無視して持論を貫くことはないとの声もある。だが首相になるということは社長になるわけで、従来の主張が滲み出るのは時間の問題とみられる。側近議員も「党内融和は大事だが、改革派の旗は降ろせない」と強調する。これによって自民党政治の政策の振り子は左に大きく振れることになる。

 総選挙までは勝利のために党の結束は保たれるだろう。だがその後も河野政権が続いたとして、冬に訪れるとみられるコロナ感染再拡大への対応や菅首相退陣で3万円台まで上昇した株価や景気の動向、また原発問題などを巡る国会での激しい論戦で、政権を取り巻く状況は徐々に厳しくなることが予想される。そして内閣支持率が低下してくれば、党内保守派の反発が強まる可能性がある。

 安倍氏は周辺に「河野は危険だ。首相になったら突っ走って党が壊れかねない」と話している。自民党のベテラン職員も「党分裂の火種が生まれないか心配だ。来年の参院選前に変なことにならないといいが」と語るなど、警戒感は根強い。


■発信革命 TwitterなどSNSを駆使 しかし…


 Twitterのフォロワー数が240万人をこえる河野氏。一般のユーザーからの投稿にも反応するなど、「ノリの良さ」が若者に受けている。菅首相の説明能力が問題視されただけに、その発信力は新時代の首相を予感させる。河野氏周辺は「政府の記者会見や発信の仕方をゼロベースで考え直したい。国民に『河野は自分たちの味方だ』と思ってもらいたい」と意気込む。

 だが情報発信を続ける上で最大の懸念は、マスコミとの軋轢だ。官僚への威圧的な対応は巷間報道されているが、河野氏の記者に対する姿勢もあまり変わりがない。河野氏周辺は「理不尽だと思うとすぐにスイッチが入るのは、昔からだ」と話す。

 外務相時代も答えたくない質問に一切答えず、「次の質問どうぞ」と繰り返したり、意に沿わない報道を「誤報だ」と決めつけたり、軋轢が絶えなかった。

 首相になれば、大臣とは比べ物にならないほど激しいバッシングに晒される。理不尽と思えるものもあるだろう。そこでぶっきらぼうな対応を繰り返したり、Twitterで嫌な相手にブロックを掛けるように取材拒否の姿勢を取るようになると、記者やカメラマンの背後にいる国民との対話の機会を失ってしまう。その果てにSNSに閉じこもると、多くの国民を取り残してしまう。

 国のリーダーとなった河野氏が忍耐強くマスコミと向き合い、丁寧な説明や発信を続けられるかは、政権の持続性を占う試金石になるだろう。立憲民主党の枝野代表は周辺にこう話している。「河野はマスコミや官僚とあっという間に敵対するだろうね。すぐ化けの皮が剥がれるんじゃないかな」


■衆院選で審判を


 河野氏が総裁になることをめぐっては、政策の振り子を振り、世代交代を進めれば少なからず意味があるという期待感がある。一方で自民党分裂の可能性もはらんだ政治の混乱の幕開けになるとの危機感もある。それは世代や立場、選挙が直近の衆院議員か来年の参院議員かでも大きな温度差がある。

 自民党が誰を新総裁に選び、この国にどんな未来をもたらすのか。我々国民はその判断に、来るべき総選挙で審判を下さなくてはならない。そのためにもこの総裁選をしっかり注視し、見極めていく必要があると思う。

青山和弘(あおやま・かずひろ)政治ジャーナリスト
1968年、千葉県生まれ。東京大学文学部卒。92年、日本テレビ放送網に入社し、94年から政治部。野党キャップ、自民党キャップを歴任した後、ワシントン支局長や国会官邸キャップ・解説委員を務める。与野党を問わず幅広い人脈を持つ。本年9月からフリーの政治ジャーナリスト。

2021年9月19日 掲載

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