麻生前財務相を外し、安倍元総理の意向を“無視”… 岸田総理の人事への評価は

岸田文雄新総理の人事に透けて見える思惑 安倍晋三氏の要望は受け入れられず?

記事まとめ

  • 岸田文雄氏は閣僚人事について「麻生さんを外したことを見てほしい」と強調したそう
  • 岸田氏は安倍晋三氏に連絡を取っておらず、人事の結果に安倍氏は不満を募らせたとも
  • 党役員人事は甘利明幹事長の独断場で、その意向は閣内にも反映されているという

麻生前財務相を外し、安倍元総理の意向を“無視”… 岸田総理の人事への評価は

麻生前財務相を外し、安倍元総理の意向を“無視”… 岸田総理の人事への評価は

岸田文雄内閣総理大臣

■「麻生さんを外したことを見てほしい」


 解散を決断し、自信に満ち溢れた表情を見せた岸田文雄新総理。党役員と官僚人事に透けて見える思惑とは――。

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 いよいよ、船出となった岸田総理は周囲に、

「来年の参院選までは大変だ。うちの派閥は人数が少ない。すぐに好きな人事はできないだろう」

 と「弱い派閥」ゆえの苦悩を漏らしている。1982年、田中角栄の後押しで誕生した中曽根康弘内閣も、官房長官や重要ポストを田中派に譲り、融和を図った歴史がある。「田中曽根内閣」と揶揄された所以だ。

 実際、今回も官房長官と幹事長ポストは自派閥で出さず、党役員と閣僚人事も岸田陣営の勝利に貢献した派閥に配慮されている。ただし、中でも岸田総理は、

「麻生さんを外したことを見てほしい」

 と強調しているという。今回の人事で「3A」の一人である麻生太郎前財務相は閣内から外れ、党の副総裁に就任した。歴代3位、約8年9カ月に及んで安倍政権、菅政権を支えた重鎮の首に岸田総理が鈴をつけたのだ。自分は与党実力者の傀儡(かいらい)ではないと強調したかったのか、さらに、もう一人の「A」に対しても――。


■安倍元総理の要望を無視


「安倍元総理の要望は受け入れられませんでした」

 と、囁くのは細田派(清和研)関係者。

「安倍さんは出身派閥の細田博之会長に対し、何度も電話して“高市早苗を幹事長に”と要望していました。さらに、官房長官は萩生田光一さんにという希望も持っていた。ただ、派内には安倍さんの高市幹事長案について、二人とも派に属していないことから、“部外者が部外者を推すようなもの”と怒る人も出た。そこで調整能力に長けている松野博一さんを官房長官に据えるべく細田さんは岸田さんに直談判しました。岸田さんは安倍さんに連絡をとっておらず、人事の結果に安倍さんは不満を募らせていました」

 しかし、もう一人の「A」にはおんぶにだっこなのだから、皮肉という他ない。

 政治部デスクが解説する。

「党役員人事は幹事長となった甘利明さんの独壇場ですよ。幹事長代理には同じ神奈川選出で、盟友である田中和徳元復興相を起用し、国対委員長には甘利さんが主宰するグループに参加する元復興相の高木毅さんを起用する意向です」


■下着泥棒の過去がある高木毅氏が党幹部に


 本誌(「週刊新潮」)は6年前、高木氏の “下着ドロボー”の過去を報じている。かいつまんで概要を説明すると、約35年前、30歳前後だった高木氏が地元、福井県敦賀市の一軒家の合鍵を作って侵入。なんと20代女性のパンツを盗んだのである。本誌は被害者の妹の証言を紹介し、それを受けて国会でも大問題となったが、当の高木氏はシラを切り通した。

「国会であまりに騒ぎになったんで、県連の費用で調査したんです」

 と振り返るのは、当時の県連会長で高市政調会長の元夫、山本拓衆院議員だ。山本氏は本誌報道の翌々年、県連で「下着ドロ」を調査した結果、「高木氏は窃盗で現行犯逮捕されていた」と記者団に語っていた。

「でも、その調査内容をすべて発表するとややこしくなるんで、発表はしなかったんです。あんまり言えないけど、高木は実質、(下着ドロボーを)認めたんですよ。だから、表に出さず、不問に付したんです。発表していたらとんでもないことになったね。でもあれは事実だから。余罪もあったし」

 しかし、もうすでに“とんでもないこと”になっている。まさかの“元パンツ大臣閣下”が党幹部へご就任なのだから……。


■干された二階派


 その甘利氏の意向は閣内にも反映されている。経済再生担当大臣に就任した山際大志郎衆院議員である。

「山際さんも神奈川県選出で甘利さんと同じタイミングで4年前に麻生派に加入するなど、直系の議員です。組閣にあたり、甘利さんは山際さんに“大臣の希望はあるか”と尋ねています。すると山際さんは“経産大臣でお願いします”と言ったのでその線で進んでいたのですが、事前に報じられ、他派閥からハレーションを呼んだ。そこで経済再生相に就くことになりました。コロナ対策担当でもあり、いずれにしても重要なポジションです。ただ、山際さんは目上の人にも直言したり、陰口を叩くことも多く、“上手くやれるのか”という声が出ています」(官邸関係者)

 抜擢されれば、干される派閥も。二階派である。派幹部がため息をつく。

「党役員には一人も入らなかったな。それを知ったうちの最高顧問の伊吹(文明)さんが岸田さんに“どうなっているんだ!”と電話したんだよ。でも岸田さんから“うちの派閥も出していない。お察しください”と言われてしまったそうだ。まあ、閣内に2人の大臣、特に3期生の小林(鷹之)が入って良かったけどな……」


■地味な陣容の行く末は……


 権勢を振るった前幹事長派閥も形無しである。その小林氏は経済安保担当大臣に。しかし、抜擢の理由は「二階派だから」ではない。

 前出・官邸関係者の談。

「小林さんは政策通で甘利さんから絶大な信頼を置かれる一方、開成高校出身でもあります。永田町における開成のつながりは太く、官僚を含めた同窓会組織・永霞会もあります。自民党の開成出身議員は岸田さん含め8名いて、総裁選では必ずしも全員が岸田さんを応援していないのですが、コロナ前は開成出身者の官僚と頻繁に飲んでいました。昨年にはその8人で飲み会を開き、最後は校歌を歌って結束を確認したそうです」

 気心の知れた若手を抜擢し、意気揚々の岸田総理。だが、その陣容は「地味」の一言に尽きる。

 政治アナリストの伊藤惇夫氏は、

「松野官房長官が鉄壁で官邸を守れるか、未知数ですし、甘利幹事長も、自身の“政治とカネ”の問題があり、選挙にはマイナスとなります。実務型の菅前総理が世論に受け入れられなかったのは、岸田さんもよくわかっていて、いま一生懸命柔らかいキャラクターを作ろうとしている。ただ、わざとらしく見えることもあるので、そのあたりを有権者がどう受け止めるか、でしょう」

「週刊新潮」2021年10月14日号 掲載

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