安倍氏が首相経験者として初の台湾訪問を調整中 岸田首相・林新外相ら“親中”をけん制

安倍氏が首相経験者として初の台湾訪問を調整中 岸田首相・林新外相ら“親中”をけん制

権力闘争が本格化する

■ゴッドマザーも駆けつけた式典


 安倍晋三元首相が、首相経験者として初めて台湾を訪問する計画が持ち上がっているという。安倍氏は超党派で作る親台議連「日華議員懇談会」の顧問を務めており、その動きは、中国との距離が近いとされる岸田文雄首相や林芳正外相へのけん制と指摘する声も少なくない。

 安倍氏は産経新聞のインタビュー記事(7月29日付)で、2020年7月に逝去した李登輝元総統について「状況が許せばお墓参りをしたい」と語り、これに対して台湾側も手放しで歓迎していた。

 また最近では、2年ぶりに開かれた中華民国建国記念日(10月10日)を祝う台北駐日経済文化代表処(=大使館)主催の式典に安倍氏は欠席したが、ゴッドマザーこと洋子さんが駆け付けている。

「来年にもと言われるこの訪台計画は、中国との距離が近いと言われる岸田さんや新しく外相になった林さんへのけん制と言われています。2人は共に伝統的に党内リベラルの宏池会所属で、特に林さんは日中友好議員連盟会長。就任直後に出演したBS番組で、中国の新疆(しんきょう)ウイグル自治区などの人権問題に関して、“どう考えても深刻に懸念すべき問題”と指摘していましたが、対中姿勢について、安倍さんや弟の岸信夫防衛相とは水と油でしょう」

 と、政治部デスク。


■林さんは火中の栗を拾わされている


 この中国の人権問題をめぐっては、担当の首相補佐官を新設し、中谷元・元防衛相(64)の起用が決まった。

「9月の自民党総裁選で訴えた目玉政策の1つです。中国に言うべきことはただす、親中や媚中などではないとアピールしたかったのだと解説されていますが、正直、新疆の人権問題は看過し難いもので、『言うべきことはただす』といったレベルははるかに超えていると思いますがね」(先のデスク)

 もちろん岸田氏の対中姿勢についてはお手並み拝見というところなのだが、その一方で、安倍氏が林氏を警戒する理由は別にもある。

「安倍さんは林さんの能力を高く評価し、首相在任中に林さんを農水相や文科相で登用してきましたが、どういうわけか起用されるタイミングが、いつも省内がバタついている時だったりしました。そのため地元での長年の遺恨があって、林さんは火中の栗を拾わされているとよく言われたものです」(同)

 その遺恨については説明が必要だろう。

 今回の衆院選で山口3区(宇部市など)から当選した林氏は、もともと山口4区の安倍氏と同じ下関市を拠点としてきた。中選挙区時代は林氏の父・義郎元蔵相と安倍氏の父・晋太郎元外相とは共生してきたが、1996年の衆院選で小選挙区制が導入されるにあたって勢力図が書き換えられたのだ。


■ガチンコで戦えば林氏の方が強い


 別のデスクに聞くと、

「下関市を含む山口4区からは、前の選挙で晋太郎氏から地盤を受け継いでいた安倍氏が出馬することになり、義郎氏は比例代表中国ブロックから出馬することになりました。以降、林氏には地元に衆院の選挙区がなく1995年に参院議員に。地元の首長選では安倍家vs林家の仁義なき戦いが展開されていくことになります」

 それから林氏は河村建夫元官房長官の牙城・山口3区を手に入れるべく、浸透を画策。今回の衆院選で不出馬に追い込んだのだった。

「林氏の衆院転身計画は実現までに10年以上かかりましたが、次の衆院選では山口県の定数が1減って区割りが見直される見込みです。山口は1区に高村正彦自民党前副総裁の地盤を継いだ子息の高村正大氏、2区に岸信夫防衛相が陣取っている中で、候補者調整がさらに必要になってくる。3区と4区が合区される可能性が高いとされ、実際ガチンコで戦うことはないものの、万一そうなったら林氏の方が安倍氏より強いとも言われている。2度首相をやった人と、これからやろうとしている人との期待感の違いも当然あります」(同)

 安倍氏は細田派に復帰して次期会長に就任。また岸田首相の依頼を受けてのことだが、12月上旬にマレーシアに特使として派遣されることが固まったりするなど、徐々に表立った活動を再開している。


■十八番の安倍外交で点数を上げやすいように


 このデスクは、「今回の林氏の外相就任は、岸田氏が彼を次期首相の有力候補と見ていることの表れでしょう」
とし、こう続ける。

「安倍氏がキングメーカーとして影響力を発揮できているなら宏池会が続けて政権を運営しようがなんてことはないはずですが、どうもそこまでではない。まして林政権となれば安倍氏は冷遇されるのは間違いない。とにかく存在感を高め、求心力をキープし続けなければ今回の河村氏のようになってしまうことを安倍氏はもちろんよくわかっている。岸田首相としては安倍氏をあまり追い込んで敵対するのは得策ではないと考え、十八番の安倍外交で点数を上げやすいように、マレーシアへの特使派遣というカードを切ってきたのでは。とすれば、なかなか岸田首相は人の心が読めているとも言えますね」

デイリー新潮取材班

2021年11月10日 掲載

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