【極秘文書入手】3回目のワクチン接種は“在庫頼み”の状況 政府の致命的失策が発覚

【極秘文書入手】3回目のワクチン接種は“在庫頼み”の状況 政府の致命的失策が発覚

話題の尽きない総理の右腕

 英国ではオミクロン株の新規感染者が1日に1万人を超え、日本でも第6波への不安が高まる。そうしたなか、政府は新たなワクチンや飲み薬がいつ入手できるか分からないという致命的失政を犯していた。しかもあの「官房副長官」は不都合な真実を隠蔽し……。

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 岸田文雄総理が全幅の信頼を寄せる木原誠二官房副長官(51)。本誌(「週刊新潮」)(2021年49号)が“愛人・隠し子”疑惑を報じた官邸の軍師は、政権の最重要課題である新型コロナ対策を巡っても、看過できない問題を引き起こしていた。

 官邸関係者が嘆息交じりに明かす。

「つい先日、“コロナ対策本部”の会議が直前の前日に取りやめになりました。最大の理由は3回目のワクチン接種を巡る政府の混乱にあります。加えて、霞が関と官邸のパイプ役である木原さんの調整力不足や、官僚に責任を押しつける姿勢が問題視されているのです」

 内閣総理大臣を本部長とする〈新型コロナウイルス感染症対策本部〉は、政府のコロナ対策を統括する最高司令部に他ならない。

 オミクロン株の世界的拡大を前に、ワクチン接種や経口薬(飲み薬)の承認といった喫緊の課題を検討するため、コロナ対策本部の会議が12月9日に開かれる予定となっていた。


■極秘資料を入手


「ところが、8日に官邸で行われた厚労省から総理への説明でトラブルが起きまして……。レク資料には、3回目接種に向け、22年3月までに〈ファイザー社 約2400万回分/モデルナ社 約1700万回分〉のワクチンを自治体に供給し、〈モデルナ社のワクチンの政府在庫約500万回分を追加配布する〉と記されていました」(同)

 本誌は〈対外秘〉とされるこの極秘資料を入手。そこには〈12/8総理御説明用〉〈12/9政府対策本部資料案〉という文字と共に、関係者の発言を裏づける文言が確認できる。

 さらに本誌は、後藤茂之厚労大臣の〈御発言 要旨〉、つまりは官僚側が用意したスピーチの草稿も手に入れた。そこでは、ワクチンは〈供給量の中で、できる限り前倒します〉とし、加えて、〈ファイザー社の経口薬「PF-07321332」(国内未申請)についても、必要量の確保に向けて交渉を行っており、速やかな合意を目指します〉とつづられている。この内容が官邸の逆鱗に触れたというのだ。


■“在庫頼み”の危うい綱渡り


「率直に言えば、厚労省の説明資料は努力目標に過ぎない代物。ワクチンと飲み薬の納期に関して、ファイザー社との前倒し交渉が全く進展していないことを示す内容でした。この説明に対し、“前倒し接種”に躍起な木原さんをはじめとする官邸側が激怒。“これでは前倒し接種を始めても早々に行き詰まる”“厚労省は岸田政権発足から2カ月余り、何をしてきたのか!”というわけです。結果、翌日の対策本部の会議は中止に追い込まれてしまった」(同)

 国のコロナ対策を先導すべき会議がドタキャンされる異例の事態――。

 だが、製薬会社との交渉の遅れは、役人に責任転嫁して済む話ではないのだ。

 厚労省は3回目接種のため、22年中に1億2千万回分のワクチン供給を受ける契約をファイザー社と結んでいる。とはいえ、厚労省関係者によれば、

「“何月に何万本分が納入される”といった具体的な見通しはほとんど立っていない。事実上、納期はファイザー社への“白紙委任”状態が続いているのです」

 先の資料に記載された、3回目接種に充てるモデルナ社の〈1700万回分〉は、1、2回目の接種で使い切れなかった在庫から計上されたもの。また、ファイザー社のワクチン〈2400万回分〉は1600万回分の在庫と、22年1月中に自治体に配布予定の800万回分を合計した数字を指す。

 要するに、新規ワクチンの確保はほとんど進んでおらず、前倒し接種が“在庫頼み”の危うい綱渡りであることが明らかとなったのである。


■ひとえに政府の手腕


 目下、欧米各国ではオミクロン株が猛威を振るい、ワクチン確保競争も熾烈を極めている。そうした事情を踏まえても、

「やはりメガファーマ(巨大製薬企業)との交渉には、政治のリーダーシップが不可欠です。そもそも、ワクチン供給を巡る契約では具体的な納期を月単位で明記しません。だからこそ、菅政権では、和泉洋人首相補佐官らが下交渉を行い、河野太郎ワクチン担当相、そして、菅義偉前総理がCEOとのトップ会談といった交渉プロセスを踏んでワクチンを確保してきました。22年に供給が予定されるファイザー、モデルナ両社との契約はいわば菅政権の遺産。本来であれば、その契約をもとに岸田政権が先頭に立って“納入前倒し”と“納期の確定”を強く求めなければならなかった。しかし、岸田政権は発足から2カ月余り、“3回目接種の前倒し”を喧伝する一方で、ワクチン対応を厚労省に丸投げしてきました」(同)

 医師でもある国民民主党の足立信也参院議員は、次のように指摘する。

「3回目の接種に向けて世界中でワクチンの需要が高まるなか、何よりも政府がすべきことはワクチンの数を確保すること。それはひとえに政府の手腕にかかっています。3回目の接種が必要になることはかなり前から明らかだったはず。第5波が落ち着いているうちに、積極的に準備を進めておくべきでした」


■来春以降の接種にも悪影響


 政治がリーダーシップを発揮せず、官僚に丸投げした結果、世界での争奪戦に敗北。もたらされたのが先の極秘資料だった。そして、木原氏を司令塔とする官邸は“不都合な真実”が表面化することを恐れ、会議自体を握り潰したわけである。

 こうした状況に焦りを募らせた岸田総理は、“幻の会議”から8日後の12月17日早朝、ファイザー社のブーラCEOと電話会談に臨んでいる。その後の会見で総理は、医療従事者や高齢者ら約3100万人を対象に、「原則8カ月以上」としていた2回目と3回目の接種間隔を1〜2カ月短縮すると発表。飲み薬については200万回分の供給で基本合意したと付け加えた。

 しかし、先の官邸関係者の表情は晴れない。

「どうにかトップ会談にこぎ着けたものの、実質的には“ゼロ回答”。前倒しでのワクチン確保の言質は取れず、経口薬の納期も決まっていません。そのため、前倒し接種は依然として“在庫頼み”です。政府は当初、22年3月までの追加接種対象者を4100万人と見込んでいましたが、新規ワクチンの確保が見通せないことから、前倒し対象者を減らさざるをえなかった。このまま供給スケジュールが確定できないと、来春以降の接種にも悪影響を及ぼしかねません」

 肝煎りのコロナ対策が綻(ほころ)びを見せ始めた岸田政権。そうしたなか、霞が関の怒りを買っているのが他ならぬ木原氏である。


■省庁に責任転嫁


 政治部デスクによると、

「木原さんは口癖のように“菅政権は厚労省に潰された”と漏らしています。とりわけ、菅政権下で厚労省がワクチンの国内治験にこだわり、日本の接種が大幅に遅れたことに強い不信感を抱いている。実際、岸田政権が発足すると厚労省出身の総理秘書官は任命されませんでした。そんな状態では円滑な意思疎通など望めませんが、一方で木原さんは先手の対応をアピールすることに余念がない。たとえば、岸田総理が12月6日の所信表明演説で語った“8カ月を待たずに、できる限り前倒しします”という文言は、木原さんが押し込んだと囁かれています」

 問題はそれだけではない。

 国交省は11月29日、航空会社に国際線の新規予約停止を要請した。だが、岸田総理から帰国を希望する日本人への対応を考慮してほしいとの指示があり、わずか数日で撤回している。

「この件について木原さんは報道番組で“『慎重すぎるとの批判は私が全て負う』という岸田総理の発言により、強い決意が霞が関に伝わった結果だ”と発言した。要は、国交省が独断で行き過ぎた措置を講じたと言いたかったのでしょう。しかし、1日の入国者数を5千人から3500人に引き下げるよう指示したのは政府で、これを実現するには停止要請以外に手がなかった。木原さんはここでも調整役として機能せず、しかも、最後は省庁に責任を押しつけている」(同)


■無理のある釈明


 司令塔としての資質が問われている官房副長官。

 そこで、厚労省のレクに憤り、会議を握り潰した一件を木原氏に質すと、

「9日に会議があるということ自体、知りませんでした。私は滅多に怒ったりしないので、そんな事実はないと思いますよ」

 だが、首相動静によれば、木原氏は12月8日の午前と午後の2度にわたって、岸田総理、松野博一官房長官、さらに、後藤厚労相、吉田学厚労事務次官を交えた話し合いに参加している。さすがに「知りませんでした」は無理があるだろう。

 続いて、総理の所信表明演説に関しては、

「いや、私じゃないですよ。そもそも、私にそんな力はありませんから。まぁ、その文言が入っているのは確かですけどね」

 と仰るが、「総理のスピーチは経産省出身の荒井勝喜秘書官が原案を書き、木原さんが最終的にまとめている」(先のデスク)という。


■ファイザー製が不足か


 さらに、入国規制を巡る混乱について木原氏は、

「水際対策は厳し過ぎるほど、厳しくやった方がいいとは総理に進言しましたが、私は国交省に指示するラインではないので。国交省の措置はテレビでも申し上げた通り、総理の発言が強く伝わったんだろうな、と」

 あくまでも自身の責任には言及しない木原氏。しかし、彼がブレーンとして主導する現政権のコロナ対策が、各所で混乱を引き起こしていることはもはや疑いようがない。実際、自治体からは悲痛な叫びが聞こえてくる。

 危機感を募らせるのは東京都中央区の担当者だ。

「政府によれば、2回目のワクチン接種まではファイザー製とモデルナ製が5:1の割合だったものの、3回目は6:4になる見込みだそうです。そうなると、やはりファイザー製が不足することが懸念されます」

 政府は3回目に別会社製のワクチンを接種する“交互接種”の有効性をアピールし、強く推奨してモデルナ製を活用したい考えだが、

「交互接種にしても、たとえば1、2回目にモデルナ製を接種した方がファイザー製を希望することも考えられる。結局、ファイザー製が足りなくなる事態が生じるのではないか」

 政府が在庫一掃で前倒しを進めたところで、“ファイザー待ち”という大混乱は避けられそうにない。


■ファイザーが圧倒的


 1、2回目の個別接種でファイザー製のワクチンのみを使用してきた兵庫県播磨町の担当者はこう語る。

「町民からは“ファイザーを打ちたい”という声が圧倒的です。心筋炎など、モデルナ製ワクチンの副反応を恐れる高齢者は少なくありません。ただ、供給割合を考えると町民の希望には応えられそうになく、非常に残念です。また、ファイザー製とモデルナ製では保管する温度が異なるので新たな冷凍庫が必要になりますし、投与量や希釈の有無にも違いがある。2種類を使用すればミスが起こりかねないと心配しています。前倒しするにしても、ワクチンがいつ、どれくらい供給されるのかさえ不透明な状態ですからね……」

 まだ計画の立てようがない様子。とはいえ、3回目のワクチン接種と経口薬が、第6波を最小限に抑えるカギとなるのは間違いない。

 東京歯科大学市川総合病院の寺嶋毅教授が言う。

「日本では1月から感染者数が増加し、2月頃に第6波が起きる危険性があります。ただ、オミクロン株のデータはまだ限られているものの、3回目接種で抗体価を増やせば、重症化を防ぐ効果は向上します」

 他方、経口薬の重要性についても指摘する。

「承認間近のモルヌピラビルは入院・死亡リスクを30%下げるとされ、ファイザーの経口薬は同じく9割近く軽減させるといわれています。これまでは感染者数の増加が入院患者数の増加に直結し、医療体制を逼迫させてきました。しかし、自宅療養中の患者が使える経口薬が登場すれば、状況を一変させる期待が持てます。今後はコロナ治療の担い手が、大手の専門病院から身近な町のクリニックに代わることも考えられる。経口薬は医療体制を守る“壁”となるかもしれません」


■第6波を抑えるために必要な措置は


 しかし、圧倒的に高い効果が期待されるファイザー製経口薬の納期が確約されていないのは前述の通り。浜松医療センター感染症管理特別顧問の矢野邦夫氏の見解はこうだ。

「WHOが毎週更新している最新データを見る限り、オミクロン株は感染力ではデルタ株を上回るものの、重症化率はそれほどではないと思われます」

 ドイツの保健相に就任したカール・ラウターバッハ氏は、オミクロン株が感染力を高めた反面、致命的ではなくなったとして、「新型コロナの大流行の終息を早める“クリスマスプレゼント”になるかもしれない」と語ったという。だが、

「重症化率が3分の1になっても感染者数が3倍になれば医療体制への影響は変わらない。第6波を抑える意味でも、3回目接種を進めるべきです」(矢野氏)

 いずれにせよ、ワクチンと飲み薬が第6波対策の要であることは事実。それを滞りなく調達するための交渉を担うべきは岸田政権だろう。事は国民の命に関わる大問題。これまで以上に“政治”の責任が重くなることは言うまでもない。

「週刊新潮」2021年12月30日・2022年1月6日号 掲載

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