公務員のボーナス0・15ヶ月削減「先送り」 官邸官僚が考える給与削減阻止の理屈

公務員のボーナスの0.15カ月削減を勧告 官僚たちは不満で岸田文雄内閣は先送り

記事まとめ

  • 人事院がボーナス引き下げを勧告したため、主要都道府県が12月のボーナスを引き下げた
  • しかし、岸田文雄内閣は勧告の実施を先送りし、前年並みのボーナスを支払ったという
  • ボーナス引き下げ勧告に対し、霞が関の官僚たちは不満タラタラだったらしい

公務員のボーナス0・15ヶ月削減「先送り」 官邸官僚が考える給与削減阻止の理屈

公務員のボーナス0・15ヶ月削減「先送り」 官邸官僚が考える給与削減阻止の理屈

2021年9月、会見を行う川本裕子・人事院総裁(日本記者クラブの公式YouTubeチャンネルより)

■ベンチマークは「給与の増加」


 2022年の経済政策における最大の焦点は、多くの人々の「給与」が増えるかどうかだろう。岸田文雄首相が繰り返す「新しい資本主義」の中味は今ひとつ判然としないが、成長の果実を分配することだと力説しており、ベンチマークは「給与の増加」になるはずだ。ところが、経営環境の厳しい民間企業の給与引き上げは簡単には実現しそうにない。

 それならば、ということなのかどうか。大盤振る舞いの予算を使って「公的部門」の給与引き上げを行う心積もりのようだ。果たしてそれで、日本経済を復活させることができるのか。

「12月に国家公務員や地方公務員のボーナスが支給されましたが、ちょっとした混乱が起きました」と語るのは大手新聞の地方部デスクだ。

「人事院が昨年10月に0.15カ月の引き下げを勧告したのを受け、東京や大阪、愛知など主要都道府県が12月のボーナスを引き下げました。しかし、国は勧告の実施を先送りし、22年夏のボーナス額で調整することになったのです。選挙があって国会審議ができなかったためと説明していますが、過去に例がない異例の措置です」

 支給を遅らせるというのなら話は分かるが、引き下げ勧告の実施を先送りし、前年並みの月数を支払ったというのだ。


■官僚たちは不満タラタラ


「2021年6月に民間人で女性の川本裕子・早稲田大学大学院教授が人事院総裁に就任しました。コンサル出身の川本さんは早速独自色を出し、霞が関の働き方改革を打ち出す一方で、民間よりも高く設定されているボーナスの引き下げを勧告したのです。新型コロナの影響で民間のボーナスは減少傾向ですから、さすが民間出身だけあって感覚はまとも。ところが、わずか0.15カ月の引き下げにも霞が関の官僚たちは不満タラタラでした」

 それを岸田内閣は「先送り」にしたわけだ。議会日程が理由というものの、霞が関への「配慮」が透けて見える。閣僚からは「公務員のボーナス引き下げは景気にマイナスになるので先送りは当然」という声も出ていた。

「人事院勧告では、月給は据え置きになっています。民間給与との差は小さい、という結論でしたが、調査の比較対象はあくまで大手企業。民間の感覚からすると公務員給与はかなり恵まれていると映るはず。リストラに遭うリスクはゼロですし、毎年のように昇進昇格していきますから、役人天国と言われても仕方ないのが実情です。据え置きになったことで、2022年の夏は引き下げが議論を呼びそうです」(前出の政治部記者)。


■結局、税金や保険料


 先送りした分、夏のボーナスが削られるうえ、月給も引き下げになる可能性が出てくるというのだが、「霞が関官僚は岸田内閣で一発逆転を狙っている」と語るのは経済ジャーナリストだ。

「公務員の給料が景気へ影響を与えてはいけないというのを金科玉条にすれば、給与引き下げを回避できると考えているんです。官邸官僚が岸田首相に吹き込んでいるようで、政府が12月24日に閣議決定した2022年度当初予算案に盛り込まれた『看護や介護、保育分野の処遇改善』を突破口にするつもりです」

 岸田首相が看護士や介護士、保育士などの収入を来年10月から3%程度引き上げるためとして約600億円を予算措置している。それと公務員給与とどう関連するのか。

「こうした職種はサービス価格が保険などで決められている『公的価格』です。公的サービスの引き上げは結局、税金や保険料ですので、国が予算をばら撒けば引き上げは可能。岸田内閣は分配を『公的部門』から始めようとしているようです。そうした流れの中で、公務員給与を引き下げるのは流れに逆行する、というのが官邸官僚の理屈でしょう」(同)

 実は、似たような理屈は地方自治体も言い出している、と前出の地方部デスクは言う。

「市役所職員のボーナスを減らせば、地元商店街などでの消費が減って地域経済にマイナスだというのです。逆に、もっと職員の給与を増やせば、景気対策になると言い出しかねません」


■民間企業が利益を上げるのが健全


 この調子では国も地方も、景気を良くするには公務員給与を増やせばいい、という主張がまかり通ることもあり得るという。だが、本当に公務員の厚遇が景気にプラスになるのか。大学教授が解説する。

「消費にお金が回るので短期的にはプラス面もあります。しかし中長期的には、国や地方自治体の人件費が増えれば、その財源を確保するために増税などで穴埋めするか、他の支出を削って人件費に回す必要が出てきます。役人の場合、直接利益を生む業務に従事していませんから、公的部門の人件費を肥大化させても経済的にはあまり付加価値を生んでいるとは言えません。やはり民間企業が利益を上げ、それが人件費の増加につながる形が健全なのです」

 岸田首相が言う「分配」が民間セクターではなく、公的セクターへの分配増だとすると、ますます民間は貧しくなっていく。官僚の給与を増やせば景気が良くなるというのは、どう考えても危険な論理でしかない。

デイリー新潮編集部

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