542億円「アベノマスク」発案の“エリート官僚”が秘かに復活 厚労省の“イベント”にも登場

542億円「アベノマスク」発案の“エリート官僚”が秘かに復活 厚労省の“イベント”にも登場

岸田文雄首相

 少し前の話になるが、昨年12月24日、時事通信は「鈴木財務相、俗に言えば『損切り』=アベノマスク廃棄」との記事を配信した。

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 アベノマスクは2020年4月から配布されたが、どれほど国民に不評だったかはご記憶の方も多いだろう。担当記者が言う。

「昨年11月には会計検査院が、輸送費なども含めた支出は542億円にのぼり、1枚あたり200円の税金が使われたことを明らかにしました。検査院は報告書で『入札が行われず、業者の言い値だった』ことも指摘しています。今なお8272万枚が在庫として保管されており、その費用として20年度末までに6億円の税金が使われたことも注目を集めました」

 12月6日に開会した臨時国会で、野党は追及の構えを見せていた。国民民主党の川合孝典・参議院議員(57)は、「このままのペースだと在庫処分には33年以上かかる」と指摘した。

 これに岸田文雄首相(64)は“奇襲”を仕掛けた。臨時国会が閉会した12月21日、記者会見で突然、「マスクは希望者に配布し、残ったものは廃棄する」と発表したのだ。

 野党は振り上げた拳を下ろさざるを得なくなり、全国紙は政治面で岸田首相と安倍晋三元首相(67)の関係を取り沙汰する記事を掲載した。


■“戦犯”の責任は不問!?


 冒頭でご紹介した時事通信の記事は、鈴木俊一財務相(68)が閣議後の記者会見で、「アベノマスクを廃棄することは『損切りだ』」と解説したことを報じたものだ。

「損切り」は金融や証券の世界で主に使われる言葉だ。SMBC日興証券のホームページでは、以下のように説明されている。

《投資家が損失を抱えている状態で保有している株式等を売却して損失を確定させることをいいます》

 アベノマスクを破棄することは損失を確定することになる。税金を無駄に使ってしまったことは事実だが、これ以上、損が膨らむことはない。どうか許してください──岸田政権のメッセージは、こんなところだろう。

 しかしながら、アベノマスクという愚策が実行された“戦犯”の責任を問う声は、与野党からもマスコミからも聞こえてくることはない。永田町関係者が言う。

「当時の安倍首相に『全国民に布マスクを配れば不安はパッと消えますよ』と進言したのは、経済産業省の官僚である佐伯耕三氏です。灘中・高から東京大学に進み、通商産業省に入省しました。安倍政権を首相政務秘書官として支えた今井尚哉氏の意向もあり、2017年に史上最年少の42歳で首相事務秘書官に抜擢されました。安倍首相のスピーチライターを務めたことでよく知られています」


■佐伯氏の“左遷”報道


 その体型などの容姿も相まって、週刊文春や朝鮮日報が「官邸の金正恩」と報じたことも話題になった。

「安倍首相との密接な関係だけでなく、“権力を笠に着た”問題行動も報じられました。18年4月には衆院予算委員会で玉木雄一郎・国民民主党代表(52)にヤジを飛ばし、謝罪することになりました。また、年上の官僚にもかなり威圧的な言動をとっていたと伝えられています」(同・関係者)

 驕れる者久しからず──佐伯氏に再び焦点が当たったのは、20年9月に菅義偉前首相(73)が内閣を発足させてからだ。

 産経新聞は10月21日の朝刊に「チーム菅 霞が関に地殻変動 経産失速、省庁主導権争い」の記事を掲載し、今井氏や佐伯氏について次のように記述した。

《重要政策を取り仕切ってきた官邸官僚は新政権発足で影響力を失った。筆頭格の今井尚哉首相補佐官兼秘書官はエネルギー政策担当の内閣官房参与に任命され一線を退いた。首相補佐官兼内閣広報官の長谷川栄一氏や、今井氏の秘蔵っ子で42歳の若さで首相秘書官になった佐伯耕三氏は官邸を去った》


■重要会議に出席


「経産省に戻った佐伯氏に与えられたのは『大臣官房参事官兼大臣官房グローバル産業室付』というポジションでした。ノンフィクションライターの森功氏は著書『墜落 「官邸一強支配」はなぜ崩れたのか』(文藝春秋)で、佐伯氏の配属先はガランとした会議室で、『まるで現代版の座敷牢に閉じ込められているみたい』と周囲の同情する声を記しています」(同・関係者)

 ところが、である。その佐伯氏が復権を果たしているというのだ。

「昨年7月1日に人事が発表され、商務情報政策局の生物化学産業課長に就任したのです。一部のメディアは《官邸から戻った有力官僚のポジションとは言い難い》(註)と報じましたが、ポジションとしては医療産業、それもワクチン開発と生産にも関わる部署です。政府の重要政策を担うポストであることは言うまでもありません」(同・関係者)

 昨年8月に厚労省で「医薬品産業ビジョン策定に向けた官民対話」が開かれた。出席者の顔ぶれは公式サイトでも紹介されている。

「日本のトップ医療メーカーの会長がずらりと出席し、行政機関では当時の厚生労働大臣である田村憲久氏(57)の名前が筆頭に挙げられています。まさに官民のトップが集う会議ですが、ここに佐伯氏は経産省の出席者として名を連ねています」(同・関係者)


■果たして真実は?


 更に今月には「政策キーパーソンと語ろう!〜vol.4 経済産業省 商務・サービスグループ 佐伯生物化学産業課長との60分間〜」というイベントも開催される予定だ。

「公式サイトを見るとオンライン形式のシンポジウムで、佐伯氏はバイオ医薬品や創薬ベンチャー事業などの注目政策を担う人物だと紹介されています」(同・関係者)

 どうも“閑職に飛ばされた”というイメージとはそぐわないのだ。

「生物化学産業課長の辞令が出たのは昨年7月ですから、まだ菅内閣の時でした。菅内閣の時に“飛ばされた”かのような動きがあったのは事実でしょう。とはいえ、今の精力的な行動を見ていると、アベノマスクの失策追求などから守るため、一時的な“緊急避難先”を提供した人事だったように思えてきます」(同・関係者)

註:経産次官逃した「新原」飼い殺し 「菊池桃子の夫」は何とかお払い箱は免れたが、菅政権は使い勝手の良さを利用するだけだ(雑誌『FACTA』21年7月20日)

デイリー新潮編集部

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