日大事件で注目の私大ガバナンス改革に「立民」も「国民民主」もダンマリを決め込む理由

日大事件で注目の私大ガバナンス改革に「立民」も「国民民主」もダンマリを決め込む理由

なぜダンマリを決め込むのか……。泉健太・立憲民主党代表(左)と玉木雄一郎・国民民主党代表

■対案が出て来ない


 文部科学省が立ち上げた会議体の提言を文科省自身が否定するという異例の展開になっている「大学ガバナンス改革」。年間100億円近い補助金を得ながら、出入り業者からの多額の現金を懐に入れるなど、やりたい放題だった日本大学の前理事長に国民の怒りは収まらないが、もとはと言えば大学にガバナンスが欠如していたことに問題があった。

 それを「他の公益法人並み」にすべきだとした「学校法人ガバナンス改革会議」の結論に、私立大学経営者やその意を受けた自民党の文教族議員ばかりでなく、あろうことか野党も背を向けているという。国民のカネを貪る教育分野の「政官業」のトライアングルは打破できないのか。

「改革会議の提言に替わる文科省案を、昨年末までに作ると報じられていたのですが、対案は年が明けても出てきません」

 そう語るのは、文科省の中堅官僚だ。

「経営に当たる理事長や理事会に対するチェック機能を評議員会に持たせるという改革会議の案に対して、論理的に反論するのは至難の業です。さらに、他の財団法人などに比べて多額の税金がつぎ込まれていますから、大学だけガバナンスは緩くてよいのだと言えるはずがありません。私大経営者に焚きつけられた大物自民党議員たちは末松信介文科大臣に改革会議の案を何とか潰してほしいと進言していますが、日大の事件もあり、中途半端な妥協案を出せば、今度は文科省が批判されます。担当の私学部は困り果てています。そこで再度、別の会議体を作って時間稼ぎしていれば、世の中の関心が薄れるのではないか、と考えているようです」


■労働組合の既得権益が侵される


 それにしても、自民党の族議員が大学経営者の声を聞くのは分かるとして、なぜ、野党はそんな自民党を批判しないのだろうか。大学経営に詳しいジャーナリストが解説する。

「自民党の場合、地元の有力者である大学経営者から頼まれたから反対している、というケースがほとんどで、実は大学のガバナンスに関心を持つ国会議員はあまりいません。一方、立憲民主党や国民民主党の議員が改革に賛成しないのは、支援団体である組合が関わっているからなんです。

 今の評議員会には職員代表が評議員として加わることができるのですが、改革会議の提言では職員は兼務できないようにしています。これは雇用されている職員が評議員になっても、雇用されている立場では経営者である理事のチェックができないという判断からです。他の公益法人も同じような規定になっています。ところが、大学によっては職員枠をあらかじめ決めていて、労働組合に入っている職員が評議員になっている。つまり改革案では労働組合の既得権が侵されてしまうため、ガバナンス改革に野党が乗ってこないのです」


■改革派の理事長も反対


 しかし、評議員の半数までは現職の理事が加わることができるため、過半数は経営側が押さえているのが実情だ。組合が評議員にこだわる意味があるのだろうか。

「大学によっては、理事長も職員上がりで、理事会も職員が実質的に支配しているところが少なからずあります。創立家出身の理事長でも、理事会を職員で固めているケースが多く、組合からすれば、職員に理解がある理事会体制を守るためにも評議員ポストを握っておくことが重要なのです」(同)

 大学の経営は創立家と職員が一体となって経営権を握り、うるさい教員を抑え込むという構図になっている。ガバナンス改革で外部理事や外部評議員の発言権が強まれば、これまでの職員の特権も奪われるというわけだ。

「いくつかの大学で、企業など外部から招かれた理事長が、経営理念のない大学の体制に呆れ、改革の大ナタを振るっているケースがあるものの、たいがいワンマン化していきます。それは改革の過程で抵抗する教授たちと対立しても、現在の制度は理事長に権力が集中しているので、“問答無用”となるからです。

 今後、急速に進む少子化を考えれば、教員の数を減らしたり、職員の待遇を引き下げたりすることが経営改革の柱になるはず。これに反発する職員を抑え込むために強権を握っておきたい改革派理事長も、ガバナンス改革には反対なのです。本来は、ガバナンスを強化すれば理事長の権力の正当性も高まり、改革がやりやすくなるのですが、そういう考え方ができる人は少ないですね」(同)


■世界ではESGの重要性が増している


 では、このままガバナンス改革は進まないのか。ガバナンス問題に詳しい大学教授が語る。

「いえいえ、今、世界ではESGの重要性が増しています。Eは環境、Sは社会、Gはガバナンスです。国の助成金だけでなく、寄付金などを集めようとする組織は、ESGが問われます。日本はまだこれからですが、他国を見ればガバナンスの不備のある組織に国が助成金を出したり、篤志家が寄付をしたりすることはあり得ません。早晩、日本の大学もガバナンスを抜本的に見直すことが求められるでしょう。

 ガバナンス改革会議の出した提言は、ほんの『序の口』のようなものですが、それにすら抵抗している大学は今後、資金集めができなくなるのではないかと思います。日大に国が助成金を出すことは難しいでしょうし、卒業生でもガバナンスが再構築されたと感じるまで、寄付しないという人もいるかもしれません。ガバナンスが大学の生き残りにとって大きなカギになることは間違いないでしょう」

デイリー新潮編集部

関連記事(外部サイト)