志位委員長「自衛隊活用論」の大ウソ 元幹部は「党綱領を読んでいないんじゃないか」

 志位和夫・日本共産党委員長(67)の「有事の際には自衛隊を活用する」という発言が波紋を呼んでいる。「自衛隊は違憲」と言い続けてきた共産党は、都合の良いときだけ利用するのか、というわけである。ところが志位委員長は「急に言い出したことではない。2000年の党大会で決定し、綱領に書き込んでいる方針だ」と反論した。実際、日本共産党綱領を読んでみると……。

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 2020年1月18日に改訂された党綱領には、“自衛隊”という単語は都合4回登場する。それらの一文を並べると、以下の通りだ(註・引用内の括弧は編集部が付記した)。

《日本の「自衛隊」は、事実上アメリカ軍の掌握と指揮のもとにおかれており、アメリカの世界戦略の一翼を担わされている。》

《軍事面でも、日本政府は、アメリカの戦争計画の一翼を担いながら、「自衛隊」の海外派兵の範囲と水準を一歩一歩拡大し、海外派兵を既成事実化するとともに、それをテコに有事立法や集団的自衛権行使への踏み込み、憲法改悪など、軍国主義復活の動きを推進する方向に立っている。》

《「自衛隊」については、海外派兵立法をやめ、軍縮の措置をとる。安保条約廃棄後のアジア情勢の新しい展開を踏まえつつ、国民の合意での憲法第九条の完全実施(「自衛隊」の解消)に向かっての前進をはかる。》

 志位委員長は、自衛隊活用論を「綱領に書き込んでいる方針」と言うけれど、綱領にあるのは「自衛隊はアメリカの戦争計画の一翼を担っている。そんな自衛隊は憲法9条に違反しているのだから解消する」と言っているに過ぎない。自衛隊活用など、読み取ることはできない。

 志位委員長はなぜ、「2000年の党大会で決定し、綱領に書き込んでいる方針だ」などと言ったのだろうか。元共産党参院議員で党政策委員長を務めた筆坂秀世氏に聞いた。


■党内では言われていた


筆坂:実は不破哲三さん(92)の時代から、共産党内で自衛隊活用論が言われていたことは間違いありません。その点は志位さんの言った通りですよ。もっとも党綱領にはありませんけど。

――党内で言われていたことは事実らしい。

筆坂:以前、田原総一朗さんの討論番組に不破さんが出演したときがあってね……。

――筆坂氏の著書「日本共産党」(新潮新書)に詳しい。少し長くなるが参照しよう。

《……引き金となったのは、二〇〇〇年八月二七日のテレビ朝日「サンデープロジェクト」だった。田原総一朗氏が司会で、自由党の小沢一郎党首(当時)と不破議長の討論がおこなわれた。ここで不破氏が、生放送中に自衛問題で小沢氏と田原氏に追い詰められてしまったのである。どういう議論になったか紹介しておこう。》

《不破氏が憲法で「国権の発動」としての戦争も、「武力による威嚇または武力の行使」も「国際紛争を解決する手段としては放棄する」とうたっていることをあげ、日本は国連の軍事活動には参加しない、と述べたのに対し、次のような議論が続く。》


■必要なありとあらゆる手段


《小沢 不破さんがそうだとは言いませんが、そういう議論で憲法を解釈していると、日本の防衛は日本の軍備でやるべきだという議論に発展していくんですよ。どうやって日本を守るのか。

田原 どうするんですか。

不破 われわれも自衛の権利は認めています。

田原 自衛隊は認めるんですね。

不破 この憲法のもとではわれわれは自衛隊は認めない。

田原 もし敵が攻めてきたどうします。

不破 そのときは自衛の行動をとります。

田原 自衛隊がなかったらだれがとりますか。

不破 必要なありとあらゆる手段を使います。

田原 どうやって。

不破 といっても、そのときに、われわれは一遍に自衛隊を解散するつもりはありませんから。そういう状態のないことを見極めながらすすめますから。

 このやりとりは、共産党の自衛隊論を語るうえで、なかなか興味深いものだった。侵略には「必要なありとあらゆる手段を使」い、「一遍に自衛隊を解散するつもりはありません」というのは、いざとなれば自衛隊を活用すると言うことを意味する。》

――つまり田原氏に言質を取られちゃったわけだ。

■2005年にも転換


筆坂:番組が終わると不破さんから「自衛隊問題をもう少し深める必要があるね」と私に電話があって、それがこの年9月の中央委員会、さらに11月の第22回党大会での自衛隊論へと繋がっていったのです

――志位委員長の言った「2000年の党大会」とは、このことだったのか。

筆坂:自衛隊が憲法違反の存在であることは明らかとしつつも、自衛隊解消には時間がかかる。その間に必要に迫られた場合は、自衛隊を国民の安全のために活用するのは当然、というわけです。こうした自衛隊活用論がはじめて公式に認められ、中央委員会総会の決議案には明記されたのです。ところが、綱領に加えられることはありませんでした。

――なぜ20年以上、書き加えられることはなかったのか。

筆坂:実は2005年に共産党は、さらに方針を転換したんです。ジャーナリストの松竹伸幸さんが共産党中央委員会に在職中、自衛隊活用論に則って論文を書いた。それが共産党指導部から「活用論は誤りだ。それは共産党が与党になった時のことであって、今のことではない」と言われたと、彼は後に「改憲的護憲論」(集英社新書)で書いています。つまり、活用論はそこで引っ込められたのです。

――なんだかブレブレだ。


■読んでなかった?


筆坂:共産党は自衛隊の取扱いで迷走してきました。若い党員は知らないかもしれませんが、共産党は長らく、憲法9条を改正して合憲の軍隊を持つべきという考えだったのです。本来、革新政党ですからね。ところが94年の党大会で、憲法9条を堅持するという大転換が行われた。その結果、敵から攻められた場合は「警察力や自主的自警組織など憲法9条と矛盾しない自衛措置をとる」ことが基本になった。いわゆる“竹やり作戦”です。それが2000年に活用論となり、05年に再び否定されてしまった。やっぱり、本音では自衛隊活用なんて言いたくはないんでしょうね。ロシアから侵略される可能性のある今は、いざとなったら自衛隊を使うとも言うけれど、平時には言いたくないんですよ。だって16年には、共産党の藤野保史・政策委員長が、防衛費を“人殺し予算”と言い放ったことまであったじゃないですか。今や日本共産党は、すっかり護憲政党になってしまいました。

――これでは党綱領に書き加えられるわけがない。

筆坂:未だに綱領に“自衛隊の解消”とあるのに、自衛隊活用なんて加えたら矛盾も甚だしいですからね。もう言ってることが支離滅裂です。この日本で、社会主義・共産主義の展望なんて持っている人がいるんですか。日本共産党の存在意義そのものが問われていると思います。

――ところで志位さん、何で「綱領にある」なんて言っちゃったのだろう。

筆坂:ちゃんと読んでないのかもね。そう言われても仕方がないでしょう。

デイリー新潮編集部

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