駐日ロシア大使が維新に送った“政界工作文書”の中身 松井代表は「一方的なプロパガンダである」

 4月9日放送のTBS「報道特集」で、ロシア軍による民間人殺戮を「(ウクライナ軍・当局による)自作自演のでっち上げ」と断じたミハイル・ガルージン駐日ロシア大使。実はガルージン氏は、野党トップにも呆れた内容のプロパガンダ書簡を送り、懐柔を図ろうとしていたのだ。

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<最近はロシアによるウクライナでの特別軍事作戦は国会の場を含め、日本では幅広く話題になっています。その歴史的背景と実態に関する客観的な評価が残念ながら日本国内ではとても少ないため、閣下に直接にお手紙を書くことにいたしました>(以下、引用部分は全て原文ママ)

 時候の挨拶のあとに、こんな文章で始まる一通の書簡。差出人は「在日ロシア連邦大使」の「M.ガルージン」。宛名には<大阪市長 日本維新の会代表 松井一郎 閣下>の名が記されている。

 書簡が発送されたのは3月29日。当時、維新の会所属の鈴木宗男・参院議員が「ゼレンスキー大統領になってからミンスク合意、停戦合意を履行しなかったことが今日の事態を招いている」や「(侵攻の)原因をつくった側にも責任がある」などとブログや講演で発言し大炎上。松井代表が火消しに追われる事態となっていた。

 その騒動の余熱が冷めぬタイミングで書簡は送られた。

■“ナチスの蛮行そのもの”と主張


 そこには以下のような内容が綴られていた。

<ウクライナの現政権が、国連安全保障理事会から承認されたミンスク和平合意による履行の義務を怠りました。つまり、国際法に違反しました。特に、ドネツクとルガンスクとの直接の対話を通じて和平を実現する約束を果たしませんでした。(中略)ウクラナイ軍による砲撃及び空爆が行なわれ、住宅と公共施設を破壊し、経済的封鎖を設定するなどジェノサイドをやり続けてきました。ナチスの蛮行そのものです>

 これまでのロシア側の主張を繰り返したものとも言えるが、それらが嘘に塗れたプロパガンダであるのは周知の事実。それでもガルージン大使はこう強弁する。

<米国をはじめ西側諸国はウクライナ政権にミンスク和平合意の履行を促すことなく、ウクライナに大量に兵器を調達して、明らかなナチスの性質を持つウクライナ政権の許しがたい侵略性をかばってきました。事実上ウクライナ政権によるジェノサイドを黙認してきました。それに加え、つい最近、現政権は核兵器及び生物兵器の保有をちらつかせる言動までし見られるようになりました。同国内にてアメリカが管理している生物学研究所で生物兵器関連の作業が行われたことが益々明るみに出ています>

 外務省は8日、ガルージン大使を呼び、在日ロシア大使館の外交官ら8人を国外追放すると通告。しかし、そのなかにガルージン大使は含まれていない。

■日本への不満も爆発


“放言王”ガルージン大使の暴言は今回が初めてではない。

 これまでも、キーウ(キエフ)のアパートやハリコフの市庁舎が破壊されたことを「ウクライナ軍による誤射」と主張。また4月に入ってからも、アメリカの駐日大使に「米国政府とNATO(北大西洋条約機構)関係者が嘘をつき続けているのは厚かましい限り」などとツイッター上で挑発した。

 書簡にも自己正当化の言葉が延々と続く。

<我々の目的はウクライナ政権が8年間にわたりドネツクとルガンスクに対してやっている戦争とジェノサイドを終わらせることにあります。(中略)我々の課題は国連憲章に明記されています原則と価値に合致しています。特に、第51条に述べられている自衛権に基づいています>

 さらに日本に対する批判と不満も記すのだ。

<日本の政党が、今のウクライナ政権と共通の価値や、共通の課題を持つことは私にとって信じがたいことです。(中略)ウクライナの非軍事化並びに非ナチ化を目的として特別軍事作戦を実施しているロシアが逆に批判されているのは極めて不公平であります>

 そして書簡はこう締め括られる。

<機会を借りて、閣下とお目に掛かり、率直な意見交換が出来ますことを期待致します>

■松井代表は“既読スルー”


 永田町関係者によると、

「書簡が送られたのは松井氏だけのようだ。他の政党トップなどには届いていない。“親露派”とも見なされる鈴木宗男氏の所属する政党だからこそ、宗男氏擁護の意味も込めて牽制したのか。もしくは次の参院選で躍進が確実視される維新に対し、先手を打って籠絡を試みたのか。ガルージン氏の真意について憶測が広がっています」

 当の松井代表に訊ねると、

「私の手許に届いたのは3月31日か4月1日だったと思う。(読んだ感想は)ロシアの一方的なプロパガンダである」

 との回答を寄せ、全く相手にしていない素振りを見せた。

 在日ロシア連邦大使館にも書簡送付の意図などを質問したが、締切りまでに回答はなかった。

 誰も踊らないのに笛を吹き続けている姿は滑稽でしかない。

デイリー新潮編集部

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