茂木幹事長VS高市政調会長 不仲の全真相 自民党幹部「もはや子どもの喧嘩状態」

茂木敏充幹事長と高市早苗政調会長の関係悪化が決定的に 中国への対応を巡って対立

記事まとめ

  • 高市早苗政調会長は茂木敏充幹事長と対立し、党運営で蚊帳の外に置かれているという
  • 『高市外し』に対し、高市政調会長は5000円給付で茂木幹事長の面目を潰したらしい
  • 高市政調会長が厳しい状況に置かれた要因に、安倍晋三氏との距離の変化があるという

茂木幹事長VS高市政調会長 不仲の全真相 自民党幹部「もはや子どもの喧嘩状態」

茂木幹事長VS高市政調会長 不仲の全真相 自民党幹部「もはや子どもの喧嘩状態」

つばぜり合いを繰り広げる茂木幹事長と高市政調会長

「私は9月に替わるわ」

 自民党・高市早苗政調会長は自嘲的に周辺にこぼします。9月の党役員人事で政調会長から外されることをはやくも覚悟している発言です。茂木敏充幹事長との関係悪化が決定的になり、党運営で蚊帳の外に置かれている高市氏。支持率好調の岸田政権の内側で今何が起こっているのか。その実態を取材しました。【青山和弘/政治ジャーナリスト】


■「茂木VS高市」衝突の発端


 政調会長は党の政策立案をつかさどる重要ポストです。高市氏は、昨年9月の自民党総裁選での健闘を受けて、党四役の一角を手にしました。一方、幹事長は、候補者の公認や政治資金の差配など党務全般の責任者。本来、政調会長と幹事長とは二人三脚が求められます。なぜここまで関係が悪化したのでしょうか。

 発端は昨年10月の衆院選直後、公明党が選挙公約の筆頭に掲げた「高校生以下の子供への一律10万円給付」のあり方をめぐる協議で、政策責任者の高市氏が外されたことです。

 高市氏は公明党の主張について「自民党の公約とはまったく違う」などと公然と反発していました。茂木氏は「高市は公明党の竹内政調会長とウマが合わないだろ。スピード感が求められているんだ」と周辺に語り、自らが交渉役となったのです。


■中国への対応を巡る対立


 その後、2人の亀裂を大きくしたのが対中外交を巡る問題です。北京五輪の外交的ボイコットを訴える高市氏は12月14日、突然首相官邸を訪問し、岸田文雄首相への直接交渉を決行します。

「党幹部の一人がなんで勝手にスタンドプレーをしているんだ!」

 高市氏の行動は茂木氏の不興を買います。しかし高市氏はひるみません。この3日後の17日、開催中の臨時国会で中国の人権問題についての非難決議を採択するよう茂木幹事長に直談判します。しかし、茂木氏は「今はタイミングではない」と却下。これ対して高市氏は、記者たちの前で「悔しくてたまらない」と怒りを露わにします。

 茂木氏としては、岸田首相とも擦りあせわせて見送りを判断している上、前外務大臣としての自負もあります。党幹部にも関わらず持論を声高に主張し、記者の前で自分を公然と批判した高市氏の態度に激高。関係悪化は決定的となります。政権与党のナンバー2とナンバー3が目も合わせないという、異常事態に陥ったのです。


■「高市外し」と高市氏の「逆襲」


 そして、年明けの通常国会。政局の焦点はガソリン代の値下げを巡る国民民主党との協議でした。茂木氏はこの協議でも高市氏を外し、さらに参院選対策として考え出した年金受給者に対する5000円の給付についても事前にまったく相談しませんでした。

「政調会長なのに私は聞いていないんだけど」

 高市氏の不満は頂点に達します。首相官邸に出向き、岸田首相に直接訴えます。

「自民党の党則には、党の政策は政調を通すようにちゃんと書いてあります。守ってもらわないと困るんです」

 ここは「聞く力」を標榜する岸田首相、3月28日の党役員会で、居並ぶ党幹部を前に党則を読み上げました。

「党則には『党が採用する議案は政調会の議を経る』と書いてあります。党内手続きを尊重するようにお願いします」

 しかし、この役員会の内容を記者団にブリーフする担当は、当の茂木幹事長。記者会見でこの部分をスルーしました。高市氏の怒りは収まりません。翌日には、

「年金受給者への5000円の給付は新年度の予算での実施は白紙」「ゼロベースで話し合っていきます」

 5000円の給付は党内外から評判が悪く、再検討した上で他の経済対策にまぶす方針となっていましたが、主導した茂木幹事長の面目を敢えて潰した発言。自民党幹部は「もはや子どもの喧嘩状態」と頭を抱えます。


■ショートケーキかチョコレートケーキか


 何とか仲を取り持とうとしたのが自民党「いい人キャラ」代表格の福田達夫総務会長です。福田氏の差配で週に一度、党四役がざっくばらんに話す「お茶会」が開かれることになりました。ところが、3月30日の初回、高市氏は途中退席します。その後、記者団にこう言い放ちました。

「お茶会と言うのでお紅茶やケーキが出てくるのかと思ったら、ペットボトルのお茶が置いてあって驚いた」

 翌週に向けて福田氏は、ケーキを用意しようとしますが、遠藤利明選対委員長がチョコレートケーキを希望したのに対して、高市氏がショートケーキを主張。福田氏は頭を抱えます。結局ショートケーキになったのですが、自民党議員も苦笑いするしかありません。

「茂木さんも高市さんもチームプレーの人じゃないからな。こうなることは分かっていたよ」

 ただ、政権の中枢で繰り広げられる子どもじみたつばぜり合いは、単なる笑い話では済まないのです。


■開いた安倍元首相との距離


 高市氏がここまで厳しい状況に置かれた要因の一つには、総裁選で後見人的存在だった安倍晋三元首相と距離が離れたことがあります。高市氏は安倍氏が派閥会長になった折には安倍派に入り、安倍派を基盤に次期総裁を目指すつもりでした。しかし安倍派内には高市アレルギーが強く、強引に高市氏を入会させれば安倍氏の立場がなくなります。安倍氏は周辺にこう語っています。

「もともと総裁候補としては派閥に入れないと伝えてあったから。入れてくれないと言われても困るよ。高市さんの問題は彼女の性格の問題だね」

 安倍氏は周囲に公然と不満を漏らす高市氏に手を焼くようになっていきました。自民党幹部はこう語ります。

「安倍さんの後ろ盾がない高市さんでは、もはや党四役に入れておく意味がない」

 自民党幹部の間では早くも後任の政調会長に、安倍派の西村康稔前経済再生担当相の名前などが浮上しています。


■茂木幹事長への不安


 しかし、一方の茂木幹事長の立場も盤石ではありません。「白紙」となった5000円の給付金について茂木氏は岸田首相、麻生副総裁とは擦り合わせていたものの、自分より下にはほとんど根回ししていませんでした。そのため自民党内からは不満が噴出。形勢が悪くなるにつれて茂木氏は苛立ちを強め、自民党職員や記者にも厳しく当たる様子が目撃されるようになります。党職員は語ります。

「茂木さんはかねてから人柄の問題を指摘されてだいぶ抑えてきたけれど、ここに来て爆発している」

 また、公明党や参議院との関係の悪さも幹事長としての不安要素として指摘されます。7月に迫った参院選で自民党執行部は、国民民主党の現職議員がいる山形では公認候補の擁立を見送る方針ですが、参院からの反発は想定以上に強く、無理に押し切ると禍根を残す可能性も出てきています。茂木氏は岸田首相に頼られる存在であることは間違いありませんが、自民党内には茂木幹事長を不安視する声も根強くあります。


■混沌とする次のリーダー選び


 政党は常に次のリーダーを育て、ベンチに座らせておく義務があります。自民党の総裁候補として名前が挙がる麻生派の河野太郎広報本部長、岸田派の林芳正外務大臣は二人とも「宏池会系」。岸田首相の対抗馬と考えると、茂木幹事長や高市政調会長はいいポジションにいるのです。しかし、2人の関係が決定的に悪化している現状はリーダーとしての資質に疑問符を投げかけています。執行部の中で浮いてしまった高市氏はもとより、茂木氏についても「今回、下をうまく使えないことが露呈してしまった。果たして宰相の器なのか」という声が、茂木派内部からも聞こえます。

 既存の価値観が変化していく激動の時代、次の日本を誰が背負うのか。野党の体たらくの下での自民党執行部の内紛は、喜劇ではなく悲劇なのでしょう。

青山和弘(あおやま・かずひろ)
政治ジャーナリスト 星槎大学非常勤講師 1968年、千葉県生まれ。元日本テレビ政治部次長兼解説委員。92年に日本テレビに入社し、野党キャップ、自民党キャップを歴任した後、ワシントン支局長や国会官邸キャップを務める。与野党を問わない幅広い人脈と、わかりやすい解説には定評がある。昨年9月に独立し、メディア出演や講演など精力的に活動している。

デイリー新潮編集部

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