「安倍元首相」暗殺 警備の大失態が「宗教団体トップより元首相の方が断然狙いやすい」ことを白日のもとに晒してしまった

「安倍元首相」暗殺 警備の大失態が「宗教団体トップより元首相の方が断然狙いやすい」ことを白日のもとに晒してしまった

歴代最長政権を率いた

■自己破産と就職氷河期


 7月8日、参院選最終盤の演説中に、凶弾によって死亡した安倍晋三元首相(享年67)。警察に対しては、警備の大失態を非難する意見が圧倒的で、擁護や同情の声は皆無と言っていいだろう。加えて、「今回の一件は図らずもさらに大きな問題点を明らかにしてしまった」との指摘もある。

 殺人容疑で送検された山上徹也容疑者(41)は、早くに父親を亡くした。母親が宗教団体「統一教会(現・宗教法人世界平和統一家庭連合)」に入信し、お布施などが重なって家族が金銭的苦境に陥ったことで、この宗教団体への恨みを募らせていったと取り調べで話しているとされる。

「実際、母親は2002年に自己破産しています。その年に山上容疑者は任期制自衛官として採用され、05年にて3年の任期を満了しました。自衛隊に入隊したのは、それまで以上に金銭的な余裕がなくなって、当時通っていた同志社大学工学部の中退を余儀なくされたということでしょう」

 と、社会部デスク。

「真面目な性格もあってか、宅地建物取引主任者やファイナンシャルプランナーといった資格を取得し、それを生かせる職業を探していたフシが感じられます。しかし彼の20代以降というのは、ほとんど日本経済の失われた20年とか30年とかに重なる。就職氷河期は大学中退者にとりわけ厳しい時期でした。そうこうしているうちに年齢的なハードルが立ちはだかって、より良い就職は困難になっていった。金銭的な面で恵まれることはなかったようです」(同)


■元首相の方が断然狙いやすい


 山上容疑者は銃を手製する前に爆弾を製造していたことも供述している。

「その時期がいつなのか判然としませんが、自分なりに努力してサバイブしていこうとやってきたものの、人生がままならないと強く思うようになり、そのような不遇な人生の原点に立ち返ることがあったのでしょう。そこで、すべての責任は母親がお布施を重ねていた教団側にあると断じ、恨みを募らせ、教団の幹部やトップを狙うべく爆弾や銃の製造に手を染めて行ったものと見られています」(同)

 しかし、教団トップの動向を掴むのは至難の業だ。

「そこで、教団と密接な関係がある者を自分なりに調べたところ、安倍元首相の存在が浮き彫りになったということです。普段と違って選挙期間中であれば、政治家の行動はSNSなどで細かく発表されるため誰でも把握できる。勝手な思い込みと逆恨みの極みがSNS社会と繋がって発生した悲劇だと言えるかもしれません」(同)

 他方、今回の一件について、警察庁の関係者はこんな指摘をする。

「警備警護対象者が銃撃されて死亡するというのは大失態なのは間違いないのですが、“宗教団体の幹部より元首相の方が断然狙いやすい”ということが白日のもとに晒されてしまったことが極めて問題。奈良県警本部長の会見だと、“いつもあの場所で演説をやっていた”ということですが、もっと狙いやすい場所は日本全国いくらでもあるでしょう」


■3Dプリンターなど使わずとも


 事実、安倍元首相に凶弾が向けられた後、選挙演説に飛び回る首相経験者の警備担当者には衝撃が走ったという。

「逆恨みは本当に怖い。今回のようなローンウルフ(一匹狼)型の犯罪は、本人の思い込みでいかようにも恨みをぶつけることはできてしまうわけです。首相経験者で言えば、例えば麻生太郎氏はリーマンショック時に首相をやっていましたから、“そのせいで仕事を失った”などと考える者がいるかもしれない」(同)

 その後の民主党政権時代でも、

「菅直人氏は『3・11』当時、首相でしたから原発事故の収拾に関して不平不満を募らせている人たちも少なからずいるでしょう。その次の野田佳彦氏は消費税アップを決め、解散総選挙を断行しました。しかし、例えばれいわ新選組の山本太郎代表のような経済政策を訴える人たちはさかんに”消費税をゼロに!”と言って、消費税がいかに低所得者層にとって重い負担となっているかをアピールしています。こうした主張に基づけば、野田氏を恨むこともできてしまう。何かのきっかけで、この種の負のエネルギーが増幅された輩が単独で動くと、事前に察知するのも難しい」(同)


■弛緩した警察内の空気


 この関係者は、さらに、「3Dプリンターなど使わずとも、人力で殺傷能力のある銃を作製できることを知らしめてしまったことも根深い問題だ」と付け加える。

 その一方で、ある県の公安関係の部署に在籍する幹部はさらなる根本的な問題を指摘する。

「普段から警備の訓練はもちろんあるのですが、基本的にトラブルは起こらないという前提で訓練に取り組んでいる人がほとんどですね。要するに弛緩しているわけです。日本では銃規制が厳しく、銃器犯罪は組織犯罪、特に暴力団絡みがほとんどですから、その点も抜け落ちていたはず。と言うか、今回の現場にいた多くは銃への対応など頭の片隅にもなかったのではないでしょうか」

 それぞれの指摘、コメントから煎じ詰めると、極めて不幸な事件であるとはいえ、いつどこで起こってもおかしくなかった一件だと言うことになるだろうか。

デイリー新潮編集部

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