後ろ盾を失った高市早苗氏は終わった? 「同様の支持を得るのは難しい」

高市早苗氏

 誰もが予期していなかった実力者の死によって、政界地図が大きく塗り替えられるのは、当然の帰結である。最大派閥は混迷、保守派はリーダーを失い、泣く人、そして笑う人は――。

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 安倍氏の死去からわずか3日後。今後の清和会(安倍派)の行末を暗示する出来事があったという。

「この日の昼、都内で派の一部の幹部による会合が開かれました」

 と打ち明けるのは、さる清和会の関係者である。

 呼びかけたのは西村康稔・前コロナ担当大臣。彼が根回しし、下村博文・前政調会長、世耕弘成・元経産相らが集まった。

「が、呼ばれたうちの一人が“これでは西村が後継選びの主導権を握ることになってしまう”と疑った。西村さんはスタンドプレーで有名な人ですからね。で、会合の存在をさるベテラン幹部に教えたんです。幹部は勝手なことをするなと乗り込み、西村さんに“ここで決めようとするな”と釘を刺した。結局、会は『結束』を確認しただけで、早々に解散となりました」

次はオレ!!

■総裁の座を狙う野心家たち


 言うまでもなく、清和会は最大派閥。ここには、先の3名以外にも総裁の座を狙う野心家がいる。

「萩生田(光一・経産相)さんと稲田(朋美・元防衛相)さんですね。彼らにとっては最大派閥の長となることが将来への大きなステップ。だからお互いに後継を譲る気はない。安倍さんは生前、自分の影響力を残す狙いもあって、次の会長候補を明確に絞ってこなかった。そのツケが回っているような気がします」

 加えて、清和会には、また別の流れもある。

「先の“安倍系”メンバーに加え、福田赳夫元総理の流れを汲む“福田系”も存在します。現幹部では、松野博一・官房長官や、若手のホープといわれる福田達夫・総務会長がそうですね」

 これら個性の強い面々がまとまっていたのも、憲政史上最長政権を率いた安倍元総理という“重し”があったから。その存在が失われた今、派閥は分裂含みで混迷は必至だという。


■フリーハンドが増える


 ではこれは岸田総理にどのような影響を与えるのか。

「メリットとデメリットの両面が生まれると思います」

 と述べるのは、政治解説者の篠原文也氏だ。

「デメリットとしては、これまで安倍さんが得ていたコアな保守層の一部が、今後、維新の会に流れる可能性があること。また、清和研や保守派の議員たちは安倍さんの下にありましたから、総理は安倍さんと話をつければそこはまとめることができた。今後はその動きが流動化します」

 他方、メリットとは?

「岸田さんにとって安倍さんが重圧的存在だったのも事実。党内に圧倒的な影響力を持つゆえに、常にお伺いを立てなければいけない存在でしたし、防衛費の増額論議や、防衛省次官人事に象徴されるように、実際に注文を付けられることも少なくなかった。しかし、これからはその重しが取れて、政権運営にフリーハンドの部分が増えるでしょう」

 折しも、参院選で自民党は大勝し、総理の求心力はアップ。より安定した基盤が構築されたというのだ。

 その中で、最も割を食う人として衆目一致するのは、高市早苗・政調会長である。

「彼女は派閥に所属していません。それでも先の総裁選に出て、あれだけの票を集めたのは、ひとえに後ろ盾になった安倍さんがいたがゆえです。その人が亡き今、自前で同様の支持を得るのは非常に厳しい」

 今後の清和会の後継について、同派の最高顧問を務める衛藤征士郎・元衆院副議長に聞くと、

「8月に予定されている内閣改造、党役員人事の前までに、会長もしくは会長代行を決めなければならないと思っています。派閥の求心力を高められる人、リーダー足る人を選ぶ。それに尽きますね」

 歪んだ憎悪から生まれた一発の凶弾は、日本の政治と社会を大きく揺るがし、余波は収まりそうにない。

「週刊新潮」2022年7月21日号 掲載

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