「日本共産党」が党名変更しない理由 志位委員長が引き合いに出した“オウム”の名

「日本共産党」が党名変更しない理由 志位委員長が引き合いに出した“オウム”の名

志位和夫委員長

 夏の参院選に向けて「野党共闘」の動きが注目されているが、野党が一枚岩になる上でネックになるのが異質の日本共産党の存在である。他の野党からはアレルギーを和らげるために党名変更に期待する声まで出始めているが、やはり共産党には共産党なりの事情があるようで……。

 来る参院選の前哨戦とされた4月21日投開票の衆院2補欠選挙は、野党共闘をめぐって明暗がくっきり分かれた。

 与野党一騎打ちの構図となった沖縄3区は、無所属の野党統一候補である屋良朝博氏が自公候補を約1万7000票引き離して圧勝した。

 しかし大阪12区は、野党間の選挙協力は空中分解した。共産党の現職衆院議員だった宮本岳志氏が辞職して無所属で出馬したものの、同選挙区における共産党の過去の最低得票数を下回るほどの惨敗に終わった。共産党関係者が恨み節を漏らす。

「我が党が現職国会議員を辞職させて補選に擁立させたのは初めて。野党共闘を促すために自由党の小沢一郎代表(当時)が、渋る志位和夫委員長の背中を強く押した。共産党の看板を下げることで他の野党が支援しやすい環境を作る“ステレス作戦”だった。しかし推薦した自由党を除き、立憲民主党も国民民主党も自主投票にとどめ、実質動かずじまい。崩せない“壁”があることを如実に示す選挙だった」

 宮本氏が無所属で立候補しようが離党したわけではない。身分は党中央委員のままで、いかに取り繕っても「共産党候補」だったのである。イデオロギーや基本政策では相容れない他の野党が忌避するのも無理はなかった。

「共産党を除くという“壁”は崩壊した」。志位委員長がこう高らかに宣言したのは、2017年1月に静岡県熱海市で開かれた第27回党大会のことだ。同大会には当時の民進、自由、社民3党の幹部が出席した。共産党が他党幹部を党大会に迎えたのは初めてだった。志位氏は、国政選挙での野党共闘を着実に進め、安倍政権打倒と将来の野党連合政権樹立を訴えた。

 あれから2年余り。その間に希望の党結成に伴う民進党瓦解や立憲民主党誕生など野党の構図も様変わりしたが、選挙協力をめぐって「共産党を除く」という状況は足踏みのままである。

 こうしたなか改元を目前に国民民主党と自由党が合併を合意した。野党共闘に後ろ向きだった立憲民主党の枝野幸男代表も、衆参同日選も視野に参院選1人区と衆院選挙区での野党間の候補者調整に本腰を入れる方針を示した。改元を挟んで野党共闘のムードがにわかに高まってきたが、その枠組みに共産党を迎えるかどうかは別次元の話だ。


■共産党の党名変更!?


 共産党は夏の参院選の32にある1人区を皮切りに「相互推薦・支援」体制を確立するよう訴えているが、立憲民主党幹部は「共産党がスタート台から共闘の行方を阻んでいる」と指摘し、こう続ける。

「自党候補を立てる選挙区で共産党の支援は欲しいが、別の選挙区で共産党候補をやみくもに支援することは避けたいのが本音。そもそも共産党を野党統一候補とすること自体、無理がある」

 つまり、衆院大阪12区補選で浮き彫りになった共産党の“片思い”は、今後も解消される余地がないというのである。

共産党に一筋の光明が差したのは、小沢氏率いる自由党が野党第二党の国民民主党と合併したことだ。共産党関係者が声を潜める。

「志位氏が、ここ数年ずっと精神安定剤としてきたのは、腕力で野党共闘の道を切り拓こうとしている小沢氏だ。政策やイデオロギーを度外視して共産党の票と数を取り込みたい小沢氏が国民民主党に入ったことで、局面が変わると党指導部も大いに期待している」

 共産党はまさに「小沢頼み」のようだが、頼られる小沢氏が他の野党に根差す共産党アレルギー払拭のための「ウルトラC」として思い描いているのが、共産党の党名変更だという。

「『(党の)名前も変えろ。そうすれば野党第一党になる』と一生懸命おだてているが、まだ踏み出せない」

 小沢氏は2月11日、東京都内で開かれた自身が主宰する政治塾の講義で、共産党に関してしびれを切らすように述べた。

 共産党関係者によれば、小沢氏はその後も機会があるごとに志位氏に党名変更を進言しているというから本気である。

 共産党はここ十数年、「暴力革命」政党のイメージを払拭するために「柔軟路線」のアピールに余念がない。2016年以降は天皇陛下ご臨席の通常国会開会式にも出席している。

 しかし現在も、警察や公安の監視対象になっていることは紛れもない事実だ。地下鉄サリン事件を起こしたオウム真理教や、朝鮮総連(在日本朝鮮人総連合会)などとともに破壊活動防止法(破防法)の調査対象団体になっている。

 2016年3月には安倍内閣が、共産党について無所属(現自民党)の鈴木貴子衆院議員の質問主意書に対し「警察庁としては『いわゆる敵の出方論』に立った『暴力革命の方針』に変更はないものと認識している」との答弁を閣議決定した。

 公安調査庁が今年1月に発表した2019年度版「内外情勢の回顧と展望」でも、国内情勢の部門で共産党は「オウム真理教」「過激派」「右翼団体など」と並べて動向が追われている。

 ゆえに時代錯誤の「共産主義社会実現」に国民の拒否反応が根強いのは言うまでもない。今後「穏やかな革命」路線を希求し続けるにしても、「共産党」を名乗り続ければマイナスイメージは拭えないだろう。

 現に冷戦崩壊後の欧州では共産党が党名を改め、現実路線に転じて国民政党に脱皮した例が多々ある。イタリアでは91年に共産党から装いを新たにした「左翼民主党」が後に政権奪取に成功した。


■秘かに「党名委員会」が発足も…


 実は日本共産党内にも党名変更論はくすぶり続けている。

 党綱領を43年ぶりに全面改定した2004年1月の第23回党大会開催中の夜のことだ。当時党大会を取材していた全国紙記者は、熱海市内の居酒屋で遭遇した「衝撃的な光景」が頭から離れないという。

 大会に参加している党中央委員たち数人のグループが隣席で酒を酌み交わしていたが、そのうち1人が「共産党という名前を変えなきゃ、だめだよ」と大声で切り出した。他のメンバーも「そうだな」などと概ね同調していたという。

 2016年には「党名委員会」なる組織が党内に密かに発足し、「日本大衆党」なる党名が候補になっているとも報道された。

 小池晃書記局長も2017年10月にインターネット番組で、党名変更について「もし、いい名前があって提案していただければ全く考えないわけではない」と述べた。一方で「共産党という名前には、僕らの理想が込められている。資本主義のまま人類の歴史が終わっていいのか。名前を変えろということはロマン、目標を捨てろということになる」と語り、基本的には今の党名を変える考えのない考えを強調した。

「実は小池氏は、その数年前に雑誌編集者らとのオフレコ懇談会で、党名変更に関して前向きな立場を示し、それを後日知った党首脳に呼び出されて大目玉を食らったことがある」

 共産党関係者はそう打ち明ける。「次期委員長」の呼び声が高い小池氏は、本音では党名変更に柔軟ということだろう。

 しかし志位氏にとっては、頼りにする小沢氏が迫る党名変更には首を縦に振れない事情があるようである。


■“アレフ”と同じで…


 共産党担当の全国紙記者が、小泉政権下の2005年「郵政選挙」のさなかのことを振り返る。志位委員長が大阪遊説に同行した記者たちとホテルのレストランでオフレコ懇談会を開いた席上でのことだった。

 記者から「将来、共産党の名を変える可能性はあるか」と聞かれた志位氏は「ない」と即答し、こう真顔で説明したという。

「君たち、オウム(真理教)を引き継いだ『アレフ』を記事にするとき、必ず丸カッコで『旧オウム真理教』と入れているだろう。それと同じで、共産党が名前を変えたとしたら、君たちは丸カッコで『旧共産党』と付け加えて表記するに違いない。だから党名を変えることは意味がないんだよ」

 好むと好まざるとかかわらず、公安調査庁や警察庁よろしく共産党をオウム真理教と「同列」に並べてみせた志位氏。14年前に示した共産党という名にこだわる「決意」は、今も揺るぎないようだ。

「共産党が党名を変えるための環境が整うのは、天皇制や自衛隊、日米安保を容認し、共産主義社会を目指す革命を放棄したときしかない。むろん、そんなコペルニクス的転回に踏み切ことは望むらくもない」(公安関係者)

 とまれ、たとえ共産党が「本質」を覆い隠して党名を変更しても、有権者にはお見通しということである。

週刊新潮WEB取材班

2019年5月7日 掲載

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