「令和おじさん」がポスト安倍に急浮上  菅官房長官のアキレス腱とは

菅義偉官房長官がポスト安倍に浮上 岸田文雄氏、石破茂氏、野田聖子氏ら生彩を欠く?

記事まとめ

  • 菅義偉官房長官は新元号「令和」発表の舞台に立ち一躍「ポスト安倍」の有力候補に浮上
  • 菅氏は今月訪米し、トランプ米政権は厚遇し今後、菅氏の存在を重視してくるとの見方も
  • 岸田文雄氏、石破茂氏、野田聖子氏らポスト安倍候補が生彩を欠き菅氏が注目されたとも

「令和おじさん」がポスト安倍に急浮上 菅官房長官のアキレス腱とは

「令和おじさん」がポスト安倍に急浮上  菅官房長官のアキレス腱とは

ポスト安倍に急浮上

 4月1日、新元号「令和」発表という「歴史的な瞬間」の舞台に立ち、一躍「ポスト安倍」の有力候補に浮上した菅義偉官房長官。その地味な政権の「黒子役」が5月9〜12日の訪米で華々しい外交デビューも果たした。このまま後継首相レースのトップランナーとしてゴールを切れるのか――。しかし「政界一寸先は闇」。先はまだまだ長いのである。

「裏を返せば官房長官を歴代最長の6年以上もやっているのに、驚くほど国民にはなじみがなかったということだ。新元号発表までは歴代で最も“無名”の官房長官だったかもしれない」

 自民党のベテラン秘書は、ライジングスターたる菅氏をそう評する。

 このところ永田町、霞ヶ関での菅氏の“株”はうなぎ登りだ。「令和おじさん」の愛称も女子高生たちの間で一気に広がるなど、菅氏が知名度を上げるうえでも令和効果は予想以上に大きかった。出所不明の「菅内閣」の閣僚名簿も永田町に流れた。

 そして、その余韻に浸っての訪米だった。菅氏の海外出張は4年前の10月、在沖縄米海兵隊の移転先となる米領グアムを訪問して以来のことだ。拉致問題担当相として北朝鮮による拉致問題解決に向けて日米の連携を確認する――というものだったが、それはあくまで表向きの理由にすぎなかった。

「米国側も菅氏を日本の『政権ナンバー2』、いや『政権ナンバー1.5』とみなして厚遇してくれた。トランプ米政権は今後、菅氏の存在を重視してくるだろう」

 外務省関係者は、先の菅氏の訪米をそう総括する。

 菅氏は10日、目玉だったトランプ政権ナンバー2のペンス副大統領との会談や国連本部での講演をこなし、訪米日程を終えた。

 ペンス氏とは北朝鮮の短距離弾道ミサイル発射や日本人拉致問題、在日米軍再編など幅広い分野で連携することで一致した。安倍政権の要として存在感を増す菅氏には米側も9日、シャナハン国防長官代行、ポンペオ国務長官ら政権幹部が相次いで会談に応じ、強固な日米関係を演出した。

 本来、日本の政権ナンバー2は副総理を兼務する麻生太郎財務相だが、危機管理担当で外交の表舞台に立つことは稀な菅氏を、米側は「青田買い」よろしく破格のもてなしで迎え入れたようである。

 折しも7月上旬に、安倍晋三首相が「無条件」で金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長との日朝首脳会談を行う方向で調整中とされる。むろんその実現には、米側からお墨付きを得るのは不可欠である。それだけに官邸も、外務省から鈴木量博北米局長、金杉憲治アジア大洋州局長、山上信吾経済局長の3局長を揃って菅氏に同行させる「首相級の異例の陣立て」(官邸筋)を敷いた。

 かくして菅氏は、ご満悦そのもので、ニューヨークでの“締め”の記者会見で「(米側と)拉致問題の早期解決や米軍再編の着実な推進に向けて連携を確認することができた。大変有意義だった」と成果を強調してみせた。

 その外交成果の具体的な中身は不明だが、ポスト安倍をめぐる菅氏の存在を世に知らしめるだけの大きな効果はあったといえる。


■「ポスト安倍」最右翼の死角


「次(の総理)は菅さんかな」。昨年9月の自民党総裁選後、安倍首相が周囲にそう漏らしたとされる。

 当の菅氏は訪米直前、記者にポスト安倍に向けての意欲を問われ「全くありません」と改めて否定したが、政界でそれを額面通りに受け取る空気はない。

 菅氏に近い官邸筋いわく「菅氏には、自らを支える若手グループは自民党内にあるが、派閥という強固な支持母体がない。本人もポスト安倍を狙う上で“数”はどうしても必要だと十分承知している。いずれ大勝負に出る。早ければ夏の参院選後に動くのではないか」。

 やはり「総理のイス」に対して菅氏は野心満々ということらしい。

「目の前に極上の女性(最高権力)が現れたら、その気にならない男(政治家)はいない」。自民党の閣僚経験者は、いささか下品な表現ながら、菅氏の立場をそう解説する。

 しかし「総理を目指さない政治家」「裏方がはまり役」と評されてきた菅氏が、かくもスポットライトを浴び始めたのも、岸田文雄政調会長や石破茂元幹事長、野田聖子元総務会長らポスト安倍候補の誰もが生彩を欠き、ドングリの背比べ状態だからにほかならない。

 菅氏は秋田県のイチゴ農家の長男に生まれたが、家業を継ぎたくないとの一心で高校卒業後に上京した。2年間の工場勤務後、法政大学に進み、卒業後はサラリーマンや国会議員秘書、横浜市議を経て国政に転身した。二世・三世議員が跋扈する自民党にあっては数少ない「たたき上げ」の一人である。

 その地味すぎる政治家が、官房長官の最長在任記録を更新し続け、今や霞ヶ関を掌握した。安倍政権の屋台骨を支えてきた実績と安定感からも、ポスト安倍の最右翼に挙げる向きも強まっているが、死角はないわけではない。解説するのは自民党の閣僚経験者だ。

「ポスト安倍として浮上したのが時期尚早だった。早いアドバルーンは落ちていくのが運命だ。安倍首相の自民党総裁任期(2021年9月)まで2年余り。それまでに官邸を巻き込んだ失政やスキャンダルで安倍退陣となれば、菅氏も連帯責任で退場を余儀なくされる」

 こう解説する自民党閣僚経験者が続ける。

「菅氏が首相の座を射止めるのは、せいぜい安倍氏が第一次政権と同様に体調不良で辞めるときに限られる。ただ、安倍氏の意中の後継者は、兄弟のように仲が良い加藤勝信総務会長だ。乳母日傘(おんばひがさ)の安倍氏は、育ちや匂いが違う菅氏にはバトンをつなぎたくないだろう」

 自民党の中堅議員も手厳しい。

「菅氏は人望がなく陰険で、そもそも首相の器ではない。あの相変わらずの身なりでオーラがなく、まさに明るい農村ならぬ『暗い農村』といった感じ。選挙の候補者調整で強引に我を通すなどの手法も党内で反発を買っており、菅氏がポスト安倍レースに最後まで残ることはない」

 そんな菅氏にとって最も怖いのは、自身や周辺の「政治とカネ」などをめぐるスキャンダルだろう。

「たたけばホコリが出る身だろうが、今まで鉄壁の防御で尻尾をつかませなかった。警察庁出身の杉田和博官房副長官を通じて警察組織をがっちり押さえ込んでいるようだ。しかし、首相候補となればメディアの目もより厳しくなる。多くの週刊誌も手ぐすねを引いている。実は菅に関する疑惑のネタは尽きないから……」。警察関係者はそう声を潜める。

“わけあり”の「成り上がり者」が土壇場で奈落の底に落ちる――。作家・松本清張が代表作「砂の器」などで描いた主人公はそんな末路をたどる。

 はたして「菅政権」は日の目を見るのだろうか。

週刊新潮WEB取材班

2019年5月18日 掲載

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