戦争発言、差別発言だけじゃない 「維新の会」の議員はなぜ失言・暴言を繰り返すのか

■“身を切る”暴言!?


 朝日新聞は5月24日、「日本維新の会 政党の見識が問われる」の社説を掲載。その冒頭は「また日本維新の会から、問題発言が飛び出した」で始まる。

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 確かに維新の議員は問題発言を繰り返してきたイメージが強い。だが、実際のところはどうなのか、検証してみよう。まずは記憶に新しい2つの失言を確認しておく。

 元フジテレビアナウンサーの長谷川豊氏(43)は、今夏の参院選における比例候補として維新の公認を受けていた。ところが5月21日、部落解放同盟中央本部が「被差別部落をめぐって差別発言をした」と維新に抗議文を提出したことでマスコミが動く。

 今年2月、都内で長谷川氏は講演を行った。ネット上には動画が公開されている。問題視された発言は以下の通りだ。

《日本には江戸時代にあまり良くない歴史がありました。士農工商の下に穢多、非人。人間以下の存在がいると。でも人間以下と設定された人たちも性欲などがあります。当然、乱暴などもはたらきます。一族、夜盗郎党となって十何人で取り囲んで暴行しようとした時に、侍は大切な妻と子供を守るだけのためにどうしたのか》

 聴衆に問いかけて長谷川氏は「侍は刀を抜いて、立ちむかった」と説明した。これが荒唐無稽であることは、毎日新聞が5月22日(電子版)に掲載した「元フジアナの長谷川豊氏が差別発言 参院選擁立予定の維新は処分検討」の識者コメントを読めば明白だ。「江戸時代の部落史に詳しい寺木伸明・桃山学院大名誉教授の話」として、以下のような解説が掲載されている。

《長谷川氏の話を裏付ける資料は全く見たことがない。犯罪は身分とは関係なく起こっていた。江戸時代に被差別の身分の人々が携わった主な役目の一つは、警察的な仕事だった》

 部落解放同盟のサイト「東京の被差別部落」は「穢多」という言葉より「長吏」が使われていたとし、仕事の内容を「斃牛馬の処理、皮などの加工、革製品の製造販売、町や村の警備や警察」などと解説している。

 5月13日、共同通信は「『戦争で島を取り返す、賛成か』 北方領土訪問で維新議員が質問」の記事を配信した。

《日本維新の会の丸山穂高衆院議員(35)=大阪19区=が、北方領土へのビザなし交流訪問団に同行していた11日夜、国後島の宿舎で酒に酔い、元島民の団長に「戦争でこの島を取り返すのは賛成ですか、反対ですか」と質問したり、大声で騒いだりしたことが13日分かった》

 テレビなどで動画をご覧になった方も多いだろうが、これだけでは終わらなかった。「週刊新潮」5月30日号は「日ロ交渉史に刻まれる『丸山穂高』暴言秘録」を掲載した。

 宿舎で泥酔した丸山議員が、「外に出たい」、「近くの店に行かせろ! そこに女がいるだろう」、「俺は女を買いたい」などと絶叫、「俺は国会議員だから逮捕されない」と豪語もしていたという。

 産経新聞も5月23日、「丸山議員『女性の店で飲ませろ』 北方領土訪問中 禁止の外出試みる」と報道した。

 大阪版の朝刊では《宿舎の玄関で丸山氏が酒に酔った様子で「キャバクラに行こうよ」と発言して外出しようとし、同行の職員らに制止された。ある政府関係者は「女のいる店で飲ませろとの発言や、『おっぱい』という言葉は聞いた」》と伝えている。

 問題発言の回数で言えば、足立康史・衆議院議員(53)が圧倒的に多い。「維新のトランプ」と呼ばれることもあるといい、他党から過去に6回の懲罰動議を出されたことでも知られている。

 数が多いため駆け足で振り返ろう。今年2月15日の衆院本会議で足立議員は厚生労働省の不正統計問題で安倍首相を擁護した上で、次のように発言した。

「むしろ今の国会の中で誰がウソつきかと言えば、悪夢の民主党政権の重荷を背負いながら政権運営に力を尽くしてきた政府・与党ではなく、共産党と連携しながら『まっとうな政治』とうそぶく、あの面々ではないか」

 演説を続けながら壇上から立憲民主党の幹部議員の方を指さしたため、議場は罵声が飛び交う事態となった。

 足立議員は2012年に初当選。最初に発言が大きく報道されたのは15年3月の衆院厚生労働委員会だった。

 元私設秘書から未払いの残業代700万円を請求されたと自ら告白し、「私は24時間365日仕事をする。そういう中、秘書だけ法に沿って残業代を支払うことはできない」と持論を展開、元秘書を「ふざけるなと思う」と罵倒した。後に謝罪したが、「労働基準法は現実に合っていない」との主張は変えなかった。

 16年2月には衆院予算委員会の中央公聴会に元検察官の郷原信郎弁護士(64)が出席。甘利明・選挙対策委員長(69)が経済財政担当相だった時、都市再生機構(UR)への“口利き疑惑”を「週刊文春」が報道したことを「絵に描いたようなあっせん利得であり、検察が捜査をちゅうちょする理由はない」などと指摘した。

 これに足立議員は委員として「普通の人は、ああ、郷原さんというのは民主党の応援団なんだな、こう思って、今後、郷原さんには仕事を頼まないということになる、私はそう思いますよ」と非難した。

 また郷原弁護士が橋下徹氏(49)をブログで批判し、府知事選の出馬を要請されたことにも触れ、次のように発言した。

「結局、郷原さんは専門家じゃないんです。政治家なんです。政治屋なんですね。私は、こういう形で、この予算委員会のこの場で、そうした売名行為をされたことについて批判を申し上げて、質問を終わりたいと思います」

 16年4月7日には衆院の総務委員会で民進党(当時)の安全保障関連法の対応を巡って「民進党はアホじゃないか。アホです、アホ」と「アホ」を連発。委員長を務めていた公明党の遠山清彦議員(49)が注意しても改めず、「こんな政党は国会の恥だ。アホ、バカ、どうしようもない」と罵倒を続けた。

 同月21日の同委員会でも民進党の男性議員が行った質問に対し、「アホだと思う。本当、アホ」と非難。維新側は謝罪し、足立議員の質問を制限する考えを示したが、民進党への謝罪は拒否した。それもあってか27日に足立議員は衆院外務委員会で民進党を「無責任野党」と批判した。

 17年5月に加計学園問題が浮上。足立議員は11月12日には自身のツイッターに「朝日新聞、死ね」と投稿した。そして15日の衆院文部科学委員会で以下のように述べた。

《安倍総理あるいは政権与党に対して追及をしている人たちがですね、立憲民主党の福山哲郎幹事長、これ献金をもらっているんですよ、獣医師会から。それから希望の党の玉木雄一郎代表、これ献金をもらっているんですよ。献金をもらって、仮に請託を受けてあっせんをし、あるいは、そういうことで国会質問をしていれば、普通に考えれば、お金をもらってあっせんをすれば、あっせん利得罪、あるいはあっせん収賄罪、あるいは、何らかの権限がある、例えば石破さん(石破茂・元自民党幹事長)、まあ、あんまり深いことはやめますが、受託収賄、さまざまな疑惑が取り沙汰をされています。すなわち、犯罪者である、犯罪者とは言いませんよ、私は犯罪者だと思っていますけれども、個人的には。李下で冠を正した安倍総理に対して、犯罪者たちが周りを取り囲んで非難しているというのが私は今の国会だと思いますよ》

 発言を足立議員は陳謝するが、18年2月の衆院予算委員会では自民党の石破茂・元幹事長(62)と立憲民主党の辻元清美・国会対策委員長(59)を非難する。

 前者は「加計学園問題の本丸は石破茂・元地方創生相。なぜ野党は追及しない。石破氏は野党とグルかもしれない」、後者には「国交副大臣の時に(自治体に)補助金を配って(国有地購入費を実質)ゼロ円にした」などと発言した。

 維新側は足立議員の役職を解き、国会質問は当面禁止するとしたが、19年の本会議で立憲民主党を「ウソつき」呼ばわりしたのは冒頭で紹介した通りだ。政治担当デスクが解説する。

「滅茶苦茶な発言であることは言うまでもありません。しかし実際に会うと、非常に腰の低い人物です。報道で人物像を連想している人は、その違いに驚くと思います。新聞記者への対応も悪くありません。問題発言の数々に眉をひそめる有権者も少なくないでしょうが、何とか存在感を発揮しようと焦った末にこうなった、と見る人もいます」


■問われる維新の教育


 維新の問題発言と言えば、やはり大阪市長だった橋下徹氏の「慰安婦発言」が原点だろう。13年5月、記者団に対して「慰安婦制度が必要(だった)のは誰だって分かる」と指摘。国内だけでなく海外メディアも大きく報道する事態になった。

 最初の発言は午前中に行われ、夕方には「慰安婦制度は今は認められないが、風俗業は必要だと思う。沖縄に行った時、米軍司令官に会い『もっと風俗業を活用してほしい』と言った」と釈明し、これも賛否両論を呼んだ。

 更に当時は維新の衆議院議員だった西村眞悟氏(70)が「韓国人の売春婦はまだ日本にうようよいる」と発言して撤回。当時は維新に所属していた中山成彬・衆議院議員(75)が慰安婦の強制連行問題で「自分の子や近所の娘が連行されるのを黙って見ていたのか。そんなに朝鮮人は弱虫だったのか」と述べ、これも批判を浴びた。

 同年7月には共同代表を務めていた石原慎太郎氏(86)が街頭演説で、拉致被害者の横田めぐみさんについて「非常に日本的な美人だから、強引に結婚させられて子どもまで産まされた。誰か偉い人のお妾(めかけ)になっているに違いない」と発言した。

 地方議員については割愛する。だが1例だけ挙げておけば、14年に当時の維新府議が、女子中学生とLINEで交流していたところ、グループから外されたことに立腹。「ただでは済まさない」「校長に電話する」などとメッセージを送ったことが大きく報道されたことは記憶に新しい。

 あまりに失言・暴言が多く、振り返るのも大変だが、なぜこんなことが続いているのか、政治アナリストの伊藤惇夫氏は「維新政治塾によって候補者を集めるというシステムが1つの原因でしょう」と指摘する。

「政治家になる順序を考えれば、実現したいビジョンや政策が先にあり、それを実現する手段として立候補するのが基本でしょう。ところが維新政治塾は、受講料を払って参加します。こうなると、『何が何でも政治家になりたい』、『とにかく議員バッジをつけたい』と、政策より議員になることが最優先という方々が増えてしまいます。そして、これだけ問題発言が繰り返されてきたとなると、塾の教育に疑問を抱かざるを得ません。国政の立候補者に相応しい人材を育成できていないのではないでしょうか」

 原因の1つに、政界の人材不足がある。とにかく立候補してくれる人がいない。それは自民党でも変わらないという。

「魔の3回生の問題は、自民党でさえ寄せ集め、かき集めの立候補者で選挙を戦ってきたことを物語っています。そして小選挙区制ですから、どうしても有権者は候補者より政党の名前で投票してしまいます。維新なら足立康史議員や丸山穂高議員という個人に投票したというより、橋下徹さんや松井一郎・大阪市長(55)を応援しようと思って1票を投じるわけです」

 更に問題発言の主が高学歴という点にも驚かされる。表にまとめてみた。

「立候補者の不足で、自民党も公募を行っています。実は旧民主党が始めたのですが、内情は替わりません。党の担当者が応募者の履歴書を見て、高い学歴やエリートとしての職歴があれば候補に残し、有権者に好感を持たれる立ち居振る舞いなら合格です。すると結局、優等生ばかりが立候補者になってしまう。しかし、優等生でも政治家の資質に欠けている人は存在しますが、公募の選考システムでは見抜くことができません」(同・伊藤氏)

 最後に伊藤氏は「世論の批判はブーメランとなって有権者1人1人に返ってきます」と警鐘を鳴らす。

「繰り返しになりますが、小選挙区制は政党が全面に出る選挙制度です。候補者は“駒”となる傾向があります。とはいえ、候補者が自分の経歴を公開して選挙に挑むのも事実です。やはり、できるだけ候補者個人を見て投票しなければ、第2、第3の丸山議員を当選させてしまうと肝に銘じるべきでしょう」

週刊新潮WEB取材班

「週刊新潮」2019年5月29日 掲載

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