日本維新の会除名の丸山穂高衆院議員の暴言で、日本はロシアとの交渉で弱い立場の恐れ

記事まとめ

  • 日本維新の会に所属していた丸山穂高衆院議員が北方領土へのビザなし交流訪問で暴言
  • 丸山氏は日本維新の会から除名処分を受け、野党6党派が議員辞職勧告決議案を共同提出
  • 日本側は"借り"を作った形にもなりかねずロシアとの交渉で弱い立場に立たされる恐れも

丸山穂高が酔って暴言「女を買いたい」「俺は国会議員だ」日ロ交渉に恥の歴史

 今度ばかりは、酒の上の不始末では済まされまい。日本維新の会に所属していた丸山穂高衆院議員(35)が、北方領土へのビザなし交流訪問のさなか、元島民に戦争をけしかけていた“事件”。実は、彼が現地で繰り広げていた乱暴狼藉は、これだけではなかったのである。

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 長年かけて築いた信用を崩すには一瞬で足りる――。そんな古来の金言を、身を以て体現したのが東大卒、経産省出身で当選3回の酒乱男であった。

 ことは5月11日の夜、国後島の「日本人とロシア人の友好の家」(通称・ムネオハウス)で起きていた。

「衆院沖縄北方問題特別委員会に所属する丸山議員が、記者のインタビューを受けていた訪問団の団長に『戦争で島を取り戻すのは賛成か』『戦争しないとどうしようもなくないですか』などと詰め寄ったのです。14日には所属する日本維新の会から除名処分を受け、その後、17日には野党6党派が議員辞職勧告決議案を共同提出しました」(同)

 つづく21日には与党からけん責決議案が出されたものの、これらを受けても、本人は居直ったのである。何しろ、東京に戻った13日の夜には発言を撤回するとしたものの、15日にはツイッターに、

〈憲政史上例を見ない、言論府が自らの首を絞める辞職勧告決議案かと。提出され審議されるなら、こちらも相応の反論や弁明を行います〉

〈可決されようがされまいが任期を全うする〉

 などと投稿。また、駐日ロシア大使館へ釈明に出向いた維新の対応についても、

〈ロシアへの「おわび」は完全に意味不明な対応(中略)おかしなことにはおかしいと申し述べる〉(19日)

 そう言い切っていたのだ。

 挙句、体調不良を理由に衆院聴取を欠席した。

 内閣府のHPでは「北方四島交流(「ビザなし交流」)」として、以下のような説明がなされている。

〈日本国民と北方四島在住ロシア人が相互に訪問し、ホームビジット、文化交流会、意見交換会等を通じて、相互の理解と友好を深め、ロシア人住民の北方領土問題に対する理解を促すとともに、日本に対する信頼感の醸成が図られています〉

 1992年に始まり、これまで両国で2万人余りの人が行き来してきた実績があるのだが、丸山議員にそうした理解が微塵もなかったことは、火を見るより明らかである。


■「俺は国会議員だ」


 実は今回、丸山議員が発した暴言は「戦争」云々だけではなかった。訪問団のある関係者が打ち明ける。

「今回の一行は全部で60人余り。内訳は元島民をはじめ、事務局や通訳、報道関係者らです。問題の発言のあった5月11日、訪問団の一行は夕方からロシア人島民の家に招かれ、夕食会を兼ねた交流行事に参加していました。それが終わり、19時ごろに各家庭から宿泊先である『友好の家』に戻ってきたのです」

 ところが、

「丸山議員は訪問先で強い酒を飲んでいたようで、したたかに酔って戻ってきた。で、あろうことかしきりに『外に出たい』と騒ぎ出したのです」(同)

 ビザなし交流という性質上、一行は国後島では「友好の家」にしか泊まることができず、無用な外出は制限されている。というのも、外出先でトラブルがあり、ロシアの警察に拘束された場合、現地の法律が日本人に適用されてしまうことで事実上、北方四島がロシアの領土だと認めることに繋がりかねないからである。にもかかわらず、

「友好の家の近くには商店があるのですが、何を勘違いしたのか丸山議員は『近くの店に行かせろ! そこに女がいるだろう』などとわめき始めた。友好の家は、各部屋には簡易ベッドがあるくらいで、皆さん必然的に共有スペースであるホール(食堂)に集まることになるのですが、そこでも本人は引き続き酒を飲み続けていたのです」(同)

 さらには、

「そのうち『俺は国会議員だ。あんたたちはどういう立場で参加しているんだ』『こんな悠長なことをしていないで、あんたたちも議員になればいい。選挙に出ればいいんだ』などと周囲に毒づき、挙げ句に同行者の股間を触ったり、たしなめようとした人の胸ぐらをつかむような場面もありました」(同)

 議員以前に、人としてあるまじき言動のオンパレードだったというのだ。


■「女を買いたい」


 参加者の一人が続けて言う。

「丸山さんは『外に出せ!』と騒ぎながら『俺は女を買いたい』という趣旨のことを叫んでいました。外に出たら大変なことになりますから、周囲は彼を止めようと必死で、外務省の職員や事務局の人が入口を塞ぐような態勢をとったのですが、本人は『何で出られないんだ。俺は国会議員だから逮捕されないんだ』などとしつこく絡んでいました。実際には関係なく逮捕されてしまうのですが、そうやって乱れながら、ホールで行なわれていた団長へのインタビューに割り込み、一連の“戦争発言”を繰り返したのです」

 降って湧いた格好の狼藉者を、周囲は懸命に、かつ丁重に自室へ連れ戻そうとしたのだが、

「そのたびホールに戻ってきて、またわめき始める。かと思えば、自室を抜け出して、休んでいる他の団員の部屋をドンドン叩いたり、トイレと間違えてシャワールームに入り込んだりと、散々でした」(同)

 大騒ぎしたのち、深夜になって議員はようやく眠りについたという。

「訪問団は当然、議員の振る舞いを腹に据えかねていました。で、一夜明けて朝食の際、前夜の様子を本人に説明したのです。本人も何となく覚えている様子でしたが“このままでは収拾がつかない”と周りが説得し、彼はひとまず座ったまま謝った。ですが、それでは皆の気持ちが収まりませんでした。それで昼食時にもう一度、今度は立って謝罪することになったのです」(政府関係者)


■ロシアに“借り”


 元時事通信モスクワ支局長で拓殖大学海外事情研究所の名越健郎教授は、

「現在のところ、返還交渉は暗礁に乗り上げた感があります。6月のG20でプーチンが来日しても交渉は進みそうにない。それでも、外交は心理戦が重要。見えない部分での影響は少なからずあり、丸山発言をことさら問題視しないというロシアの態度は、日本側からすれば“借り”を作った形にもなりかねない。負い目を感じることで、交渉において弱い立場に立たされるおそれもあるのです」

 まさしく百害あって一利なし。長年、北方領土問題の解決に取り組んだ元外務省主任分析官で作家の佐藤優氏も、あらためて指摘する。

「そもそも、ビザなし訪問というのは『ガラス細工』のようなものです。日本政府は国民に対し、パスポートを持ちビザを取得しての渡航はしないように、と自粛要請をしています。その代わり『我々の領土に行けないのはおかしい』からと、特別の枠組みである“ビザなし”を作っているのです」

 こうした訪問では、国内の手続きとして外務大臣が発行する「身分証明書」と「挿入紙」の二つが必要だといい、

「ロシア側はこの二つをそれぞれパスポートとビザと見なし、正式な入国手続きとしている。そこでは、お互いの立場については詰めないことになっています」(同)


■恥の歴史となって


 かりに今回、丸山議員が宿舎から外出して大騒ぎし“戦争で領土奪還を”などと口走った場合は、

「逮捕・起訴される可能性があります。なぜなら、ロシアの法律では戦争扇動発言は刑事犯罪にあたるからです。付言すれば買春も禁止されているので、こちらも逮捕されるおそれがあったのです」(同)

 と言うのだ。

「もし逮捕されれば、日本政府は彼の釈放を求めざるを得なくなる。といっても彼を守るためというより、日本人が北方四島でロシアの法的管轄に服することはあってはならないという原則があるからです。それでも政府が釈放を求めれば“戦争で領土を取り返せと発言する議員を守っている”と見なされる。そうなれば、92年からガラス細工で作り上げてきたビザなし交流のメカニズムは完全に崩れ、領土交渉もストップしてしまうでしょう」(同)

 こうした事の重大さを、丸山議員が痛感しているフシはうかがえず、

「こんな人間が国会議員であることは国益の毀損に繋がりかねず、言論の自由という次元の話では決してない。本人は『辞めない』と主張していますが、いっそのこと簡単に辞めさせるのではなく、偽証罪の縛りをかけて国会に喚問し、何をしでかしたのかを洗いざらい説明させるべきではないでしょうか」(同)

 代議士の地位にしがみつくこんな男を、いつまで税金で面倒見なくてはいけないのか。日ロ交渉史に、恥ずべき一ページが刻み込まれてしまったのは間違いない。

「週刊新潮」2019年5月30日号 掲載

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