反安倍で先鋭化「前川喜平氏」、安倍さんは元号も私物化したので私は令和を使わない!

 6月28日より、新宿ピカデリーほか全国公開される映画「新聞記者」。原案は、菅義偉官房長官の天敵、東京新聞の望月衣塑子記者(44)の著書「新聞記者」(角川新書)で、謳い文句は“官邸とメディアの裏側を描く、孤高のサスペンス・エンタテインメント!”とか。

 その公開記念としてシンポジウムが東京で開催されたのだが、そこには望月記者と共に、あの前川喜平・元文部科学省事務次官(65)が登壇。

「5月から私は元号は使わないことにしている。安倍さんは元号まで私物化した」
「内閣情報調査室は安倍さんの私兵と化している」
「読売新聞は安倍さんのプロパガンダ紙」

 と言いたい放題。講演慣れしているためか、口跡も滑らかな前川氏、反安倍のプロパガンダを行っていた――。

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 デイリー新潮が「講演会は大盛況!前川喜平・前文科省事務次官曰く『日本会議は害虫の巣』だって」と、前川氏の講演の模様をお届けしたのは昨年(18年)4月のこと。17年1月、文科省OBの再就職等規制違反の責任を取る形で辞任して1年余り。この時、彼はこう語っていた。

「えー、皆様にお願いがございます。あと1年経ちましたら、私の顔と名前を忘れていただきたい、と。もう名前と顔が売れて困っております。私は芸能人でも政治家でもございませんので、あまり売れたくないんでございます」

 あれから1年以上が過ぎたわけだが、その間に著書「面従腹背」や対談本などを出版した前川氏はますます意気軒昂である。この日の「映画『新聞記者』公開記念 『官邸権力と報道メディアの現在』を語るシンポジウム」のチケットは完売で、およそ700名の観客を前に、望月記者と“反安倍トーク”に花を咲かせたのだった。その刺激的なところを抜粋してみよう。

司会:映画「新聞記者」原案となりました「新聞記者」の著者であり、東京新聞社会部記者の、官房長官会見でご存知の方も多いと思います、望月衣塑子さんです。続いて、元文部科学省事務次官、現在は現代教育行政研究会代表として教育問題に取り組んでいらっしゃいます、最近はTwitterも始められました前川喜平さんです。

前川:あのね、始めたっていうのは正確じゃないんです。私、Twitterを始めたのは2012年の12月なんです。これは第2次安倍政権ができる直前です。総選挙の結果がわかって、「あー、これはもう安倍政権ができる」と思った時に、「どうしよう、何か本音がしゃべれるところが欲しい」と思ってTwitterに呟き始めたんです。その時は、前川喜平という名前はもちろん出してはおりません。「右傾化を深く憂慮する一市民」と言う名前でですね、やっておりました。一時は非公開にしたこともありましたが、ちょっと思うところございまして、6日ほど前に心変わりしまして、いまはもうボロクソに言っているわけです。

望月:「思うところ」って何があったんですか?

前川:いや、ふと思っただけです。こういうのって、もういいやって感じでね。とにかく「この政権マズいよ」という気持ちになっちゃった。

司会:選挙に出るなんて声もありますが?

前川:全然、それはないです。私はとにかく、永田町から離れられたということがものすごく嬉しくて、いまはもう第二の人生を謳歌しているわけですから、またあんなところに戻るなんて、あの政治家の群れの中に入るなんて、考えただけでゾッとするわけです。

――第二の人生を謳歌しているそうで、なによりである。話題は「老後は年金以外に2000万円が必要」と金融庁が作った報告書に及ぶ。


■あいつが嫌いなんだーっ!


前川:安倍政権はこれまで何度となく、あったことをなかったことにしてきているんですね。モリカケもそう、統計不正もそうですし、いろんなことで、あったことをなかったことにしてしまって、そのまま「なかったのね」と国民が忘れてくれることを待っている。これを繰り返して、しかも上手くいっているんですね。一時的に支持率が下がっても、また上がってくるという成功体験を積み重ねている。そのために、今度も(麻生大臣が)受け取らないことで、なかったことになると思っている。だけど、金融庁の報告書は全国民が読んじゃったんですよ。それを「受け取らないから議論する必要はない」というのは、全く理屈になってない。あの報告書はむしろ、きちんと専門家が集まって議論した結果だし、結論として「年金をもっと払えるようにしましょう」ではなくて、「年金は払えないんだから自前でなんとかしなさい」という結論の部分については異論があると思いますけど、分析については極めて正確に行われていると思いますよ。それをなかったことにするというのは、いくらなんでもできないと思います。

――この問題について官邸はどうだったのか、望月記者に質問が及ぶと、いつものように“いかに質問がブチ切られるか”という話に。面白かったのはこの部分である。

望月:(質問妨害が)騒がれ始めているので、さすがに菅さんの秘書さんであるとか番記者の方々等々も、「さすがにこれだけ注目されている中で、望月さんだけ質問を遮るのは、いい年をした菅さんが年下の女性をいじめているようにしか見えません。これは菅さんのイメージにも良くないからやめたほうがいいですよ」と、いろんな方がいろんな形で助言してくれたそうなんです。すると菅さんは、「いや、俺は、俺は、あいつが、あいつが、キラいなんだーっ!」……。

――ホントか? そこまで嫌っているから、長い質問も遮りたくなるのかも。そして話題は記者クラブと政権との関係に。

前川:(佐藤栄作の辞任会見で新聞記者が全て出ていった例を挙げ)、ああいうことっていまはもう起こらないだろうなと思います。そもそも総理が辞任しないんだけど。少なくとも、読売新聞は絶対できませんよ。映画にもあったでしょ、ある文部官僚の無理やり作ったスキャンダルが、どの版にも同じ場所に出て来る。あれは2017年5月22日の読売新聞ですよ。自分のことですから、私は忘れません。読売新聞はもう安倍さんのプロパガンダ紙になっちゃってる。私はあれから読売新聞は新聞だと思ってないし、メディアとも思ってません。最近はNHKも、そんなところがある。(ここで会場から大きな拍手)

――評判悪いぞ、NHK。ここで司会が、このところ総理の会見が減っていること、今年最初の会見が令和の発表(4月1日)だったことに触れる。

前川:私は今年の5月から元号は使わないことにしているんです。(大拍手)。私の率直な感想は、安倍さんはついに元号まで私物化した。これは朝日新聞なんかが詳細に記事にしていますけれども、最初の案が全部気に入らない、「国書を典拠にしろ」ということで令和になったと。とにかく安倍首相のお気に入りの元号に決まったということだと思います。この令和というのは、外務省が各国に通知した公定訳ではBeautiful Harmonyとなっています。でも中西晋さんが「文藝春秋」に書いているのを読むと、和という文字は平和という意味とヤマトという意味がある。戦艦大和のヤマトだし、そもそも“日本”という意味なんです。私の解釈は、令和というのはBeautiful Japan、安倍さんが常日頃言っている“美しい国ニッポン”を表している。“美しい国”という言葉は、戦前の国体思想をベースにしている。悠久の歴史の中で、天照大神を先祖とする天皇の下で、この国は統合体として何千年も続いてきたという国体思想です。国体思想を信奉している人は、よく“国柄”という言葉を使います。櫻井よしこさんとか。国体護持を謳っているんだなと解釈しました。安倍さんの支持基盤の日本会議というのは、戦前の道徳、教育勅語を復活させようと、ホントに思っていますからね。このまま放っておくと、学校教育に入ってくるわけですから。ですから令和は使わない。私は来年になったら平成32年、ウソです、西暦で一本化していきます。

司会:テレビなどで、令和一色の報道がずっと続いていた時どうされていたんですか。

前川:見なかったですよ、不愉快ですよ。令和万歳みたいな、何か新しい時代になったみたいにね。新しい時代になんてなってない、4月30日から5月1日になっただけなんですから。安倍さんが変わったら新しい時代になるかもしれないけど、安倍さんがいる限りは同じ安倍政権なんですから。(拍手)

――昨年より、かなり過激になっているようだ。ここで望月記者から、菅官房長官が“令和”の額を上げた時のエピソードが披露される。

望月:実はボタンをポチッと押して令和と出すなんて案もあったんだけど、菅さんは「やっぱり、めくり挙げるのがいいんだよ。だけどその時に見えちゃうとマズいから、前夜に一生懸命、練習したんだよ」。すると番記者が「でもちょっとだけ見えてましたよ」。「え? 見えてた?」なんてやりとりが、「週刊文春」に載っちゃったんですよ。これを見て菅さんが大激怒。「お前らが週刊誌に流したんだろう。二度とお前らにはオフレコ懇はやらない!」と言い出したものだから、菅さんの番記者さんたちは「二度と情報を流したりしません。ICレコーダーと携帯を紙袋に入れますから」と録音していないことを示した上で、お話を聞かせてもらっているわけです。


■つけてみたら歌舞伎町


――ここから安倍政権による締め付けに話が移り、話題は内閣調査室へ。前川氏に「内調からマークされた理由に思い当たるものがあるか」という質問が飛ぶ。

前川:話せば長いことになりますが……読売新聞の記事が出たのは2017年5月22日です。私が(加計学園問題の)記者会見をする3日前に出ています。これは記者会見をする本人の信用を落とす目的だったと思います。新宿のバーに行っていたのは事実ですよ。そこにたむろしている女性たちからいろんな話を聞いて、ある意味、社会勉強していました。「違うところに感心があったんだろう」とも言われますけど、なかったとは言いませんけどね。これは極めて個人的なことで、別にやましいことをしているとは思っていませんでした。これが内調なのか、公安警察(の調査)なのか知りませんけど、少なくとも総理官邸の官房副長官が私のその行動を知っていたのは事実なんです。それは読売新聞に出る半年以上前のことであって、2016年の秋の頃に官邸に呼ばれて、「君はこういう店に出入りしているようだけれど、立場上、控えたほうがいいよ」と言われて、「わかりました」と言って帰ってきたことがありました。私は鈍感だったのかもしれませんが、善意ある忠告だと思っていました。しかし、どうやらそうではなく、WARNING(警告)でした。気がついたのは、加計学園問題でいろいろなメディアの方と接触するようになってから、ある時、複数のメディアから同時にアプローチが来た。「共通の情報を取られたな、それは官邸しかない」と思いました。

前川:では、何で私が官邸から行動確認をされたのかなと思うと、思い当たることは2、3ある。私は民主党政権下で、高校無償化の制度設計をしていましたが、最初から最後まで朝鮮高校を入れるべきだと考えて仕事していました。朝鮮高校に対してシンパシーを持っている危険人物だと思われたこと。もうひとつは、次官になる前でしたが、2015年9月18日でしたが、文部科学審議官だった時に、安保法制反対のデモに行ったんです。1回だけですよ。安保法政が参議院の本会議で可決されるという夜、この法案に反対だという声を一度は上げておきたいと思って、文部科学省から国会正門前まで歩いて行って、SEALDs(シールズ)の若者たちが抗議デモしている後ろのほうに行って、一緒に声を出したんです。「♪安倍は辞めろ」「♪集団的自衛権はいらない」とかやってたんです。これは、その時点では見つかってないはずです。ただ私は、その翌日から、部下とか後輩の前で、「昨日、行ってきたんだ。自分の政治的見解を、一個人、一国民として述べることは、表現の自由として我々にだって保障されているんだ。基本的人権なんだ」と言ってたんです。ひょっとすると、それが伝わったのかもしれない。特に官邸が「こいつは危ない」と思う理由があるとすれば、この2つかな。私が次官になったのは2016年6月ですけど、それまでは問題になっていなかったと思います。問題だったら次官になっていませんから。ただ、「なんだ、そういう奴だったのか」とわかって、つけてみたら歌舞伎町に行ってた、と。

司会:今日は内調の方もいらっしゃっていると思います。内調は政権に対して要注意人物をマークしていくということですが、前川さんから見ると、どういう権力でしょうか?

前川:私自身が内調の内情を知っているわけではないんです。自分の身に降りかかったことはよくわかっています。そこから考えてみると、権力の維持、拡大化のために、私兵化しているのではないか。本当の意味で、国ための仕事というよりも、いま権力を握っている人のために仕事をしている。そこが解明されるべき、権力の闇の部分ではないかと思います。

――反安倍を鮮明に打ち出した前川氏、映画「新聞記者」には劇中劇で出演もしているという。お好きなだけどうぞ。

2019年6月19日 掲載

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