参院選で「れいわ」を応援、脳科学者・茂木健一郎氏が語る“山本太郎という男”

 参議院議員選挙もいよいよ終盤に入った。テレビでは放送されないものの、ネット上で注目されているのが、山本太郎(44)率いる「れいわ新選組」だ。

 4月に結党し、ネットで寄付金募集を呼びかけるや、3カ月余りで3億円超を集めたという。各地で開催される街頭演説には連日、多くの聴衆が詰めかけている。いまや与野党も無視できないほど勢い付いているのだ。

 そこで7月12日に開催された「れいわ祭」の応援弁士としてステージに上がった脳科学者の茂木健一郎氏(56)に、彼らを推す理由を聞いてみた。

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 彼らの街頭演説「れいわ祭」は品川駅港南口のロータリーで開催された。山本氏はじめとする10名の候補者はもちろん、司会は女優の木内みどりが務め、ミュージシャンのSUGIZO氏、作家の島田雅彦氏、そして茂木氏が応援の弁士として駆けつけた。ロータリーは、周辺の階段や橋の上まで、一説には数千人が集まったとされる。その様子はYouTubeでも見られるが、確かに鈴なりの人だかりで、盛り上がっていた。

 中でも一風変わった応援をしたのが茂木氏だった。まず、聴衆に呼びかける。

〈皆さん、ちょっとここで質問です。日本ってね、他人のことをこんなに揶揄したり、引きずり下ろそうとしたりする人ばっかりの国だったっけ?〉

「違ーう!」と、答える聴衆の声はかなり若い。

〈違うよね。日本ってこんなにお隣の国のことの悪口言ったりとか、いろいろ意地悪するような国だったっけ? もっと優しい国じゃないですか? 我々、十人十色。なんで今、優しくなれないんですか? 何でですか? ひとりひとりが大事にされてないからじゃないですか? ひとりひとりが大事にされてないから、他人に優しくできないんじゃないんですか?〉

「そうだー!」

〈幸福ってのはさ、脳科学的に言うと、「幸せ」っていうのは自分がたっぷり受け止めて初めて人に与えられるんですよ。(中略)僕ね、難しいことはわかりません。山本太郎さんが今回ね、出してるメッセージは「日本人を元気にするために、そして日本人をもっと、本来の日本の、優しくて他人に思いやりがあって多様性を大事にする国にするために、まずはひとりひとりを大事にしましょう」と、このメッセージだと思うんですよ。〉

「そうだー!」と、会場を盛り上げた茂木氏、何を考えたか山本氏をステージ上に呼び、対談を始めたのである。あれ、これって応援演説なの? 茂木先生に聞いた。


■選挙は失敗する?


――ステージから見て、会場はどんな感じでしたか?

茂木:僕はこれまでいろんな選挙の現場を見てきていますが、れいわの会場は“動員感”がなかったですね。自発的に来ている方が多いように感じました。音楽のフェスに似ているような、SUGIZOさんが来ているということもあるのかもしれないけど、独特の雰囲気がありました。意外に年齢層もバラバラでした。品川で夕方ということもあるのかもしれないけど、ビジネスパーソンで帰宅途中の方もいましたし、若い方もお年寄りも万遍なくいたように思います。着ている服もバラバラで、とにかく共通点が見当たらない。

――呼びかけに答える声は、若い人が目立つように感じたが?

茂木:そこはライブ会場と一緒で、お年寄りはそういうノリに慣れていないということじゃないですか。SEALDs(自由と民主主義のための学生緊急行動)の国会デモの時のような、学生中心という感じではなかった。もちろんリベラルの人もいるんだけど、背景の見えない人が、結構、多い感じがしました。山本さんは、「政策を実現するためなら自民党とだって組みますよ」と言うくらいの人だから、来ている人も保守でも革新でもない感じですね。日本の政治運動史上、れいわ新選組というのは、ちょっと異質な存在だという気がします。組織がなくて、小っちゃい本部にボランティアがいて、というだけのね。

――前回(13年)の参院選では東京都選挙区だった山本氏は、今回は比例代表に回った。しかも、今回から導入された「特定候補者」に別の2名を入れたため、彼の当選は3番目となる。だから茂木氏は応援演説で「今回、正直、(山本氏は)比例の3位。この作戦、失敗したと思ってます?」「350万(票)取らないとダメなんでしょ?」と、山本氏に質している。

茂木:そうです。私の知り合いに選挙のプロがいるんですが、その人は、「山本さんは東京都選挙区にいたままで、比例には別の人を立てたほうが、議席は増やせたのに」と言っていました。でも、面白かったのは候補者選定でした。まだ蓮池透さんしか決まっていない頃でしたが、どういう人がいいのかという話し合いをしていたんだけど、彼は「現場の方」って仰っていたんですよね。そこからセブン-イレブンの店長の方とか、障害者の方に決まっていった。組織とか、当選しやすいビッグネーム、元議員であるとか、既存の政党がこれまでやってきた候補者選びを、すべて否定するところから始めたのではないか。もちろん、報じられているように、それが実際に通用するのかわかりませんが。

――東京選挙区では、本来なら公明党から出馬すべき創価学会員を、れいわ新選組から立候補させ、公明党代表の山口那津男氏にぶつけるという、なんだかプロレスのようなこともやっている。

茂木:ああいうことをするって、今までなかったからなあ。

――れいわ新選組は、消費税廃止、奨学金チャラ、最低賃金1500円(政府が補償)……など、実現性の低い公約を掲げている。これをどう思うか?

茂木:正直言って、難しいでしょう。特に消費税ゼロとか……。でも、政治は「可能性の芸術」と言ったのはビスマルクですが、それでいいと思うんですよ。僕は「公約は契約ではない」と思っていて、それは有権者もわかっているんじゃないかと思います。自民党も含めて、「選挙ってそういうもんじゃない?」なんて、みんな思っているんじゃないですか。

――いいのか?それで。

茂木:でも、今日もある経営者と話していて、「やっぱりお金持っている人は甘やかされている」という話をされていました。そういう政治状況を一番わかりやすく伝える政策が、“消費税ゼロ”といった公約なんでしょう。コミュニケーションとしては有効なんじゃないでしょうか。山本さんの街頭演説は、即興でやっているそうなんですよ。国会での質問は、尺が短いから演技だそうです。どちらも上手い。僕はいろんな人の応援に行くから、よくわかるんだけど、彼は上手い。そのタレント性は、すごいものがあります。


■れいわ推しではなかった


茂木:これまで、結構いろいろな選挙応援に行っているんですよ。先日も立憲民主党から出馬した徳川家広さんの応援に浜松まで行きましたしね。以前からの友人なので。かつては嘉田由紀子さんの日本未来の党の応援にも行きましたし……僕は、知り合いに頼まれたら行っちゃうんですね

――茂木氏は、ガチガチのれいわ新選組支持というわけではなさそうだ。今回の応援は自主的に?

茂木:今回は山本太郎さんの周りから頼まれて、スケジュールがたまたま空いていたので駆けつけました。僕は言ってみれば、政権交代支持者なんですよ。日本の政治を見ると、諸外国と比べて政権交代が少なめだなと思っています。だから、特定の政党というより、常に新しいチャレンジャーを応援したがる、判官贔屓なところがあります。

――これまで山本氏との付き合いはあったのですか?

茂木:前からTwitterでは時々やりとりはしていたんですけど、れいわ新選組の立ち上げの頃に、何人かで会ったことがあります。その時に初めて、生で彼の話を聞いて、それまでは極端な、変わったことをやる人と思っていたんですけど、実は気遣いができて、バランス感覚もある人だと分かりました。それで、なんかいいなと思って。

――応援演説でも、そこには触れていた。「世間の人は『太郎さん、極端な人だ。変なことする人だ』って思われてるですけど、その辺りどうですか?」と。

茂木:天皇陛下に手紙渡そうとしたり、国会で数珠を手に焼香の真似ごとしてみたり、ああいうの見ていましたからね、僕の周りにもそう思っている人、多いんですよ。それを代弁したつもりです。

――今週末(19日)にも「れいわ祭2」が開催される予定だが、そこにも参加するのだろうか?

茂木:いや、まだ聞いてないです。スケジュール空いてないと思うし……。今の日本の政治は、かなり硬直化しちゃってます。自民党もそうだし、野党も立憲民主党と国民民主党がいがみ合って、連合はどうなるんだとか、そんな話ばかりです。まあ、今のところ、シガラミのない山本さんが、日本の政治をかき回すことで、新しい風が吹いたらいいなと思っているんです。

週刊新潮WEB取材班

2019年7月18日 掲載

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