山本太郎が政権をとったら「ヒトラーのようになりかねない」と識者が憂慮する理由

■「山本太郎」を台風に育てる慄然「衆愚の選択」(2/2)


「れいわ新選組」と「NHKから国民を守る党」。このたびの参院選で躍進を見せたこの2党は、あなどれない可能性を秘めているという。しかしそこに、懸念がないわけでもないようで……。

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 れいわは大衆に迎合するポピュリズム政党と目されているが、帝塚山学院大学の薬師院仁志教授は、

「大阪都構想が大問題であるかのように煽って、対立軸を作った大阪維新の会の煽動的ポピュリズムとは異なります。れいわが取り上げる問題は、民衆が抱えているリアルな悩み」

 と話す。そうかもしれないが、山本太郎代表が演説で訴えた“生きててよかったと思える国”をめざすにしては、山本代表は原発事故の風評被害に苦しむ福島の住民を、絶望に追いやったことはなかったか。たとえば、2013年5月8日付のブログで彼は、

〈君が学校でほぼ毎日食べる給食、安全かな? 残念ながら、かなり食べ物に対して気を使わなければあなたの身体は被曝し続ける〉

〈どうやって自分の身体を守るのか。(中略)東日本の食材を僕は食べない〉

〈風評被害などではなく、完全な「実害」なんだ。食品のほんの一部をサンプリング検査して「安全だ」なんて完全にナメられてる〉

 等々煽り立てていた。要は、政府は面倒だから、食品は汚染されていないことにしているが、そんなのは嘘八百で、福島どころか東日本の食品を食べているかぎり命が保たれない、と訴えていたのだ。

「私たちの野菜や果物からは、国の厳しい検査基準の数十分の一の汚染物質しか検出されなかったのに、山本さんは反原発運動を盛り上げるために、福島の野菜が毒物であるかのように喧伝しました。絶対忘れないし、絶対許しません」

 と、福島県で農業を営む40代の女性は、いまなお怒りを隠さない。


■罵声と乱入で妨害


 山本代表の反原発運動を回想するのは、東工大先導原子力研究所特任教授の奈良林直氏である。

「特に印象に残っているのは、原子炉施設の安全総合評価の意見聴取会を妨害されたことです。毎回のように傍聴席に山本さんがいて、だんだんと“許さない”“反省しろ”などと怒鳴り散らすようになりました。原発反対派の委員が喋ると拍手をして、賛成派が喋ると罵倒する。議論に支障をきたすようになって、7回目からは傍聴席がなくなり、経産相だった枝野幸男さんが、傍聴席からの妨害を許したことを深々と謝る事態にまでなりました。ところが、傍聴席がなくなったことに抗議して、山本さんを先頭に反対派が乱入してきたんです。安全性についての議論を妨害するなどマトモではないと思いました」

 民主主義的な手続きを、罵声と乱入で妨害した山本代表。奈良林氏が続ける。

「今回の選挙戦では、消費税廃止など共感を得られる主張をして、うまいと思いました。喋っている内容はまともなんです。でも、だからこそ気を付けなければいけません。非常に過激なところがあるのが、山本という人物の実態。仮に政権をとったら、ヒトラーやムッソリーニのようになりかねません」

 13年に、園遊会で天皇陛下に直接手紙を渡したことから察するに、選挙や議論のような手間や面倒は、なるべく省略したいのかもしれない。同じ年、本誌(「週刊新潮」)が女性への乱暴と隠し子の誕生を報じる際は、記者を見るなり逃げ出した。“攻、走”は得意でも、意外と“守”は苦手らしい。


■わかりやすいのが心配


 N国についても触れておかなければなるまい。政治部記者は、

「立花代表は、一般に政党とみなされる党所属議員5人を満たすために、12人の国会議員に白羽の矢を立て、まず、北方領土をめぐる戦争発言で日本維新の会を除名された、丸山穂高代議士を入党させました。また、安倍総理と近い渡辺喜美参院議員と統一会派を組むことになって、実はN国が改憲勢力だということが明確になりました」

 NHKは、担当記者がユーチューバーである立花代表から逆取材を受けるに違いなく、だれを担当にするか喧々囂々だそうだが、別の角度からこんな危惧も。

「ワンイシューで選挙に勝ったN国ですが、この傾向が強まると、反朝日新聞を標榜する政党とか、犬の殺処分廃止だけを訴える政党とか、様々なワンイシューを唱える政党が乱立することにもなりかねません。そうなると、様々な問題について国会で合意形成するのも困難になります」(同)

 そうなれば、ひいては政党政治の否定にさえつながりかねない。今回の参院選で生まれた新しい芽は、所詮は衆愚の選択のたまものであるということか。

 評論家の大宅映子さんがいう。

「今回は政権を選ぶ選挙ではなく、責任を伴わないので、消費税をやめましょう、でも、社会保障は十分やります、という連立方程式としては成り立たないこともなんでも言えました。いまの若い人たちは単純だから、“そうだ、その通りだ”ってなるのでしょうが、そんなに世の中、単純じゃないと老婆心として思いますよ。私は、わかりやすすぎるのが逆に心配です。政治ってそんなに簡単な話ではありません。複雑な人間社会を理解したうえで、こちらを立てればあちらが立たないなかで考えた挙句、これは捨てなきゃいけないという苦渋の決断をし、これを選んでいこうというものをみなさんに提供する。それが政治でしょう」

 聞こえのいい言葉になびいているうちに、小さな芽は台風の目に育っていたらしい。それが、終いに本物の台風になってしまったら、もはや衆愚などと笑ってはいられない……。

「週刊新潮」2019年8月8日号 掲載

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