「桜を見る会」問題をスクープしたのは「赤旗」 官邸も警戒する情報収集力の秘密とは

 安倍晋三首相は11月13日、野党やメディアから追及され、来年の「桜を見る会」中止を決めた。意外と知られていないが、「桜を見る会」の問題は、ちょうど1カ月前に「しんぶん赤旗」日曜版のスクープから始まった。知られざる「赤旗」の実力を検証してみた。

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 赤旗日曜版は、各界の功労者などを招待する安倍晋三首相主催の「桜を見る会」が、本来の目的に反し、首相の地元後援会関係者が数百人規模で大量に招待されていたことを報じた。参加窓口となったのは、首相の地元事務所。後援会旅行の“目玉”に位置付けられていたという。「桜を見る会」に参加した女性から話を聞き、後援会旅行を細かく再現。5000円の会費で現在問題となっている前夜祭についてもふれ、政治資金パーティなのに、収支報告書に記載がないのは政治資金規正法違反の疑いがあると指摘している。

 どうやら、甚大な被害を出した台風19号の影響で、当時はあまり注目されなかったようだ。

 1928年2月1日創刊の「しんぶん赤旗」は、言うまでもなく、日本共産党が発行する政党機関紙。全国紙にも引けを取らない取材力には定評があり、これまで幾度となくスクープ記事を報じている。官邸も常に警戒する存在だという。過去のスクープを列挙してみると、

「田中角栄氏の秘書グループらが 奇怪な河川敷買い占め」(1966年10月23日付日曜版)

 当時自民党幹事長だった田中角栄が、関連企業を使って信濃川河川敷99万平方メートルを買い占めている事実を報じた。田中角栄を退陣に追い込む引き金となった立花隆氏の『田中角栄研究』より8年も早かった。

「公明党 言論・出版に悪質な圧力 田中(自民)幹事長を仲介に」(1969年12月17日付)

 創価学会批判本の出版中止を求める公明党・創価学会による言論、出版妨害事件を被害者の証言によってスクープした。創価学会問題がタブー視されている中で、他紙とは一線を画した。

「官房機密費の詳細な使途 明るみに 志位委員長が内部文書公表 高級背広代、パーティ、せん別…「国家機密」に値するものなし 宮沢内閣・加藤官房時代」(2002年4月13日付)

 志位和夫委員長が、官房機密費の詳細な使途を明らかにした内部文書を独自に入手、全資料を公表。機密費問題という政治の闇にメスを入れることは、日本の政治腐敗を一掃する上で避けて通れないとした。

「九電が“やらせ”メール 玄海原発再稼働求める投稿 関係会社に依頼 国主催の説明会」(2011年7月2日付)

 玄海原発の運転再開に向け、経産省が主催した佐賀県民への「説明番組」で、九電が関係会社の社員に運転再開を指示するメールを番組に投稿するよう依頼していたことをスクープした。

「稲田防衛相 3年間で約520万円疑惑領収書 『白紙』で受領 認める」(2016年8月14日付日曜版)

 稲田朋美防衛相の政治資金管理団体が、パーティ券購入時に白紙の領収書を受け取り、稲田事務所側が書き入れていた慣習を報じた。全国紙が後追い取材し、国会で赤旗の記事が追及材料に使われた。

「『沖縄に核』日本容認 09年、米の貯蔵庫建設提案に 大使館関係者『説得力がある』」(2018年3月5日)

 米諮問機関「米国の戦略態勢に関する議会委員会」が2009年2月25日、在米日本大使館の秋葉剛男公使(現・外務事務次官)に対し、「沖縄かグアムへの核貯蔵庫建設についての日本の考えはどうか」と質問したところ、秋葉氏は、「そうした提案は説得力があるように思える」と表明したことを報じた。この記事は、18年度の日本ジャーナリスト会議のJCJ賞に選ばれている。

■スクープは政党支持に結びつかない


「昔の赤旗は、田中角栄の金脈を暴いたり、政商といわれた小佐野賢治を追及したり、今より大きなスクープを連発していましたね」

 と解説するのは、元共産党政策委員長の筆坂秀世氏。

「スクープを出せたのは、大企業とのしがらみがないからです。全国紙は、企業の広告が大きな収入なので、何かと制約がある。ところが赤旗には、広告を出すのは身内だけ。企業との利害関係がないので、なんでも書けるのです。タブーがないから、タレコミも多かった。本当の話なら、赤旗に持ち込めば必ず記事にしてくれるし、情報源も絶対守ってくれると言われたものです」

 赤旗の記者は約300人で、うち日曜版が40人。東京本局の他に、札幌、仙台、東京、長野、名古屋、大阪、広島、福岡、沖縄に総局・支局があり、海外では、北京、ハノイ、カイロ、ベルリン、ワシントンDCに特派員を置いている。

 赤旗は記者クラブに加盟していない。それでも、なぜ情報収集に長けているのか。

「赤旗の記者は、20代が7%しかいません。つまり、ベテラン記者が多いのです。しかも、編集局内での異動がほとんどないので、みな専門記者になっています。都政担当は30年続けていますよ。ベテランだから人脈もあり、スクープを取ることもできるのでしょう」(同)

 さらに、赤旗の強みは地方議員にあるという。

「共産党の地方議員は3000人ほどいます。これは自民党と同じくらいですね。彼らが大きな情報源になっているのです。地方だと、自民党や共産党といっても、政党間の垣根が低いので、自民党の情報も筒抜けになることがあります。今回の桜を見る会のスクープも、安倍さんの地元・下関の議員からの情報提供だったのかもしれませんね」(同)

 とはいえ、赤旗は、かつて350万以上あった部数が、今年の8月に100万部を割っている。

「日刊紙が20万部弱、日曜版は80万部弱ですね。日刊紙は20年前からずっと赤字です。残念なことに、いくらスクープを放っても、それが共産党支持に結びつかないのです。記者も高齢化していますから、もはや、ジリ貧状態ですね」(同)

 このままでは、いずれスクープもなくなる?

週刊新潮WEB取材班

2019年11月20日 掲載

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