維新の会の“虎の尾”を踏んだ奈良県「思想信条」調査

維新の会の“虎の尾”を踏んだ奈良県「思想信条」調査

奈良県庁(Wikimedia Commonsより)

 今時、マスコミや民間シンクタンクが行う調査でもここまで意図的な質問はあるだろうか。今秋、奈良県庁が県内の有権者2千人に実施した「2019年奈良県内における政治意識調査」が、“思想信条調査ではないか”と波紋を呼んでいる。

 調査はアンケート形式で質問は性別や年齢、職業に始まり、今年4月に実施された統一地方選での投票先など36項目。一見、どこでも聞きそうな項目ばかりにも思えるが、途中から様相が一変する。

 例えば、〈政治に影響力のある人・政党・政策についておたずねします〉と、問う13番目の質問では、温度に例えて好きならその強さに応じて51〜100度で、嫌いなら0〜49度と数値で回答するというシュールな形式だった。

 質問の対象は五つ。安倍晋三総理を筆頭に奈良県の荒井正吾知事(74)、居住地の市町村長、その後に「大阪維新の会」、「大阪都構想」と続く。他の質問にも都構想が含まれているが、奈良県庁がそんなことを問うのはなぜか。

 奈良県庁市町村振興課にまず経緯を聞くと、

「今回初めて調査を行いました。今年4月に地方自治の活性化を目的に市町村サミットを開催し、その後に有識者7人からなる地方政治研究会が発足しました。その研究会が投票率向上などを目的とした調査実施を発案し、アンケート項目を作成したのです」

 質問の中に維新の会や都構想を入れた意図は、

「奈良府民という言葉があるほど生駒市など県北西部は、大阪府の影響が強い。日本でなく、大阪維新の会としたのは最も影響力のある地域政党だからです」

 だが、これにみなが納得するわけではない。

「質問項目が適切なのかしかるべきチェックをしていないのは問題です」

 こう批判を口にするのは、日本維新の会の佐藤光紀奈良県議だ。

「大阪維新の会と大阪都構想を取り上げた説明は不十分。12月の県議会で真意を問い質したいと思います」

 地元記者の解説では、

「今年4月の県知事選で荒井知事は4選を果たしたが、維新の会は県組織でも推薦しなかった。両者の関係は冷え切っています。今回の調査で都構想に不利なデータが出れば、荒井知事が公表するのではないかと疑われています」

 妙な意趣返しだが、

「大阪市長時代に橋下徹さんが職員への“思想信条調査”を行って問題になった過去があり、維新の会はこれも同じ問題だろうと攻勢をかけている。荒井知事は彼らの虎の尾を踏んだわけですから、12月の県議会は荒れるでしょう」(同)

 調査費用は約700万円。奈良県民もこんな無駄遣いに税金を払っているわけではあるまい。

「週刊新潮」2019年11月28日号 掲載

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