「桜を見る会」疑惑はやっぱり晴れない? 安倍首相が釈明で掘った「二つの墓穴」

「桜を見る会」疑惑はやっぱり晴れない? 安倍首相が釈明で掘った「二つの墓穴」

安倍首相

 季節外れの「桜」を巡る問題は、バカ騒ぎと捉えられても仕方がない。だが、予断を許さない状況が続いているのは、桜を見る会の「前夜祭」についてだ。

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 そのためか、返り血覚悟で攻勢を強める野党側に対し、安倍首相は今月15日、突然、記者団を前に21分間の釈明を行った。官邸での囲み取材に21分間もの長時間を割くのは極めて異例のことである。

「森友や加計における“忖度”とは違って、今回は首相を直撃する疑惑。取材に応じたのは危機感の表れでしょう。しかも、官邸側は“途中で記者の質問を遮るな”と周囲に指示していた。要は、この会見で問題を幕引きにしたい、と。ただ、予告なしで喫緊の課題をぶつけてくるのはさすがに大人げないと思いました」(政治部デスク)

 今年の桜を見る会の前日、都内のホテルニューオータニでは「前夜祭」が開催され、安倍首相の地元・山口県下関市などから後援会関係者ら約800人が参加した。会費は1人につき5千円である。

 最大の問題は、ニューオータニのパーティープランが最低価格でも1万1千円のところ、なぜ半額以下の会費で前夜祭が開けたのか、という点だ。

 ちなみに、甘党で知られる菅官房長官の好物はこのホテルに入るレストラン「SATSUKI」のパンケーキで、お値段は3千円以上。それと比べると、やはり5千円は“破格”の値段に思える。

 この点、ニューオータニの広報担当者は、

「1万1千円はあくまでも基本的なお勧めプランのなかで最も安い価格設定ということです。人数や料理などに応じてそれを下回るお見積もりを出すことも有り得ます」

 と弁明するが、

「会費だけでは赤字で、安倍首相側が差額分を補填していたとすれば、公職選挙法第199条の2に規定された“公職の候補者等の寄附の禁止”に違反することになります。ホテル側から見積書が出てこない限り、安倍首相が疑惑を払拭することは難しいのではないか」

 とは、政治資金問題に詳しい日本大学法学部の岩井奉信教授である。

 確かに、一般的な感覚からすると一流ホテルがここまで大幅な値引きに応じるとは考えづらい。

 だが、「永田町の常識」は少々異なるようだ。自民党関係者が明かす。

「政治資金パーティーで用意する料理は、参加人数の6〜7掛けに抑えるのが一般的。小洒落たオードブルの代わりにサンドイッチや唐揚げといった軽食を増やせば割安になるのも事実です。とはいえ、ニューオータニで5千円の会費はさすがに“格安”だと思います」

 やはり、これだけで疑惑が晴れたとは言い難い。


■補填なら公選法違反


 先述した首相の会見も9割方は前夜祭に関する釈明に費やされたが、

「その会見で安倍首相は、自ら“二つの墓穴”を掘ってしまったと言えます」

 そう断じるのは、神戸学院大学法学部の上脇博之教授である。まず1点目に挙げるのは、この発言だ。

〈夕食会場の入口の受付にて、安倍事務所職員が1人5千円を集金し、ホテル名義の領収書をその場で手交し、受付終了後に、集金した全ての現金をその場でホテル側に渡すという形で、参加者からホテル側への支払いがなされた〉

 上脇教授が続けるには、

「もちろん、招待客が直接ホテルに会費を支払っていれば問題はありません。ただ、この発言は政治団体がホテルと招待客の間に介在していたと認めたようなもの。しかも、会場を予約したのは事務所か後援会以外に考えられないため、政治団体とホテルとの商取引と捉えるべきでしょう。仮にそうでなくとも、事務所が一旦、現金を受けとったのなら政治資金収支報告書に記載がないとおかしい。政治資金規正法の不記載罪に該当すれば、5年以下の禁錮または100万円以下の罰金となります」

 桜を見る会の「前夜祭」は第2次安倍政権が発足した直後から毎年行われてきた。かつて前夜祭に出席した下関市の商工会関係者は、

「参加者がまだ500〜600人程度の頃から会費は5千円だった。当時も会場の入口で安倍事務所の人に会費を払いました」

 と振り返る。しかし、現在公開されている安倍首相関連の政治団体の収支報告書には、前夜祭に関する記載は見当たらないのだ。

「不記載罪の公訴時効は5年で、過去に遡って告発ができます。長年に亘って不記載が続いていたとなれば、形式上のミスではなく、常習的で悪質と判断されてもおかしくありません」

 そう語る上脇教授が第2の「墓穴」と指摘するのは、

〈夕食会の価格設定が安過ぎるのではないかという指摘がございます。そういう報道もありますが、参加者1人5千円という会費については、これは正に大多数が当該ホテルの宿泊者であるという事情等を踏まえ、ホテル側が設定した価格である、との報告を受けております〉

 との発言である。

「ホテル側が事情を踏まえて料金を値引いたとなれば、首相側は価格分以上のサービスを提供されたに等しい。この差額分は“寄附”に当たる可能性があります」(同)

 総務省作成の資料では、物品やサービスの無償提供は、〈金額に換算して「寄附」として(収支報告書の)収入に計上〉すべしと記されている。そうしなければ、〈政治資金規正法の収支の公開や授受の規制といった基本理念を没却しかねない〉からだ。

「安倍首相の政治団体がホテルと結託して有権者に寄附を行っていたら、公職選挙法が禁じる寄附行為に当たり、両者は共犯となる。また、ホテルが政治団体に寄附したと考えると、収支報告書への不記載が問題になります。同時に、これは政治資金規正法が禁じる“企業献金”に該当する危険性も出てくる」(同)

 物証が乏しいなか、こうした疑惑の数々が間違いなく罪に問えるとは言い切れない。しかし、野党側は「追及本部」まで立ち上げて、安倍首相を追い込もうと息巻いている。そうしたなか、チラつき始めたのは「解散」の2文字だ。

 先の自民党関係者が続ける。

「首相は会見で明らかに感情的になっていた。“国会から求められれば、説明責任を果たすのは当然のこと”などと発言したのはどう考えても勇み足。官邸としては、予算委での集中審議には一切応じない構えです。今月20日に桂太郎元首相を抜いて、安倍首相の在任期間が歴代最長になるものの、この快挙にも水を差された格好。台風の被害を受けて一度は下火になった年明け解散説も、再び燻りはじめている。最大の波乱要因は、批判の集中砲火を浴びる首相の苛立ちにあります」

 長期政権の緩みを指摘され、〈より緊張感を持って進んでいきたい〉と答えた安倍首相は、しかし、同じ会見で墓穴を掘った。

 念願の「桂超え」を果たしたのであれば、蟻の穴から堤も崩れる、ことを改めて認識すべきだろう。

「週刊新潮」2019年11月28日号 掲載

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