安倍総理「秘書ご子息」の「ゲーセンのケンカ」に捜査1課投入した次期警察庁長官

安倍総理「秘書ご子息」の「ゲーセンのケンカ」に捜査1課投入した次期警察庁長官

安倍総理

■安倍総理「秘書ご子息」のケンカに捜査1課を投入した次期「警察庁長官」(1/2)


 安倍総理の秘書ご子息の単なるケンカに警視庁捜査1課を投入したのは、「官邸の番犬」だった。総理ベッタリ記者のレイプ逮捕状を握り潰す一方、権力者側と軋轢を起こす者は逮捕する前代未聞の忖度捜査。そしてこの「警察国家の雄」は次期警察庁長官間違いナシなのだ。

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〈ミステリは、民主主義国家で警察が正常に機能していないと生まれない。警察による不当逮捕や拷問がまかりとおっている国では「謎解き」は成立しない〉

 評論家の川本三郎氏は、ある香港人作家がものした警察小説を評する際に、こう書いたことがある。かねて香港警察が機能不全に陥ってきたという認識がある川本氏にとって、この小説は望外の傑作だと続けている。

 では、日本はどうだろうか。もちろんミステリではなく、警察の話である。

〈警察として恥ずべきことをやらされた。とんでもないことをやらされました〉

 警視庁刑事部捜査1課刑事のそんな声が本誌(「週刊新潮」)に伝わってきたのは、2016年半ばのことだった。その響きは、絶望的な空気に支配されている。

 取材を進めていくと、ある警視庁の幹部に行き当たった。彼は吐き捨てるようにこう話した。

「捜査1課のある刑事が同僚と一杯飲(や)っていたら、グチられたと。“大変だったんですよ”って。その男は三鷹署でヘンタイ教師の捜査をしていたらしい。その捜査が大詰めを迎える中で、釣(つり)(宏志・捜査1課長=当時)に突然、本部に呼び出されたって言うんだ」

 ヘンタイ教師の捜査とは、東京・三鷹の小学校に通う男子児童を裸にしてカメラで撮影したとして、捜査1課が強制わいせつと児童買春・ポルノ禁止法違反(製造)の疑いで男性教諭を逮捕した事案を指す。逮捕は15年11月半ばで、捜査1課長からの呼び出しはその少し前だという。

 全ての捜査を指揮する釣1課長は、この捜査員を警視庁本部6階の20畳ほどの自室に招いてこう告げた。

〈三鷹をちょっと止めて別の件をやって欲しいんだ。世田谷署管内のゲームセンターで子供が殴られた。すぐやってくれ。(加害者を)3日で逮捕しろ。これは中村刑事部長のご下命だ〉

 その話し方には、何よりも優先して早くという“圧”が感じられた。

 中村刑事部長とは、中村格(いたる)氏(56)のことだ。本誌が再々、報じてきたように、彼は刑事部長時代の15年6月、“総理ベッタリ記者”こと山口敬之・元TBSワシントン支局長に出されていた準強姦(当時)逮捕状を握り潰したことで知られる。そのあと栄達を重ね、今や警察庁ナンバー3の官房長を務めている。

 本稿は彼による前代未聞の忖度捜査を巡るものだ。まずは話を警視庁本部6階に戻すと、当の捜査員の顔には当惑、不満、消沈……様々な感情が刻まれていた。それもそのはず、捜査1課とは殺人、強盗、暴行、傷害、誘拐に放火、性犯罪など凶悪犯罪の捜査を担う。首都を守る警視庁「花の捜1」には全国最強、歴戦の強者が集うのは論を俟たない。

〈何で俺が? ゲーセンのケンカで? 捜査1課が?〉

 もっとも、厳格な階級組織を渡って来た男の口がその場で異論を挟むはずはない。

〈わかりました。誰(=どの捜査員)を連れて行けばいいですか?〉

 捜査員は不満を飲み込み、世田谷署に出向いた。

「ゲーセンのケンカなんか、“今度は気をつけろよ”と厳重注意で済む話。そんなもの犬も食わないっていうのは冗談にせよ、(地元の)署も食わないし、まして捜査1課が出て行くなんてあり得ないよ」

 と、さる警視庁OB。同様に別のOBも、

「現場は“寝る間もないほど大変だったんですよ”と話していた。店内と周辺の防犯カメラから加害者を割り出し、暴行容疑で逮捕状を請求して逮捕したわけだけど、“むしろ加害者の方が可哀想になっちゃいました”とも。それに、“傷害でやれないから暴行(容疑)で身柄を取ったんです”という状況だったようだね」

 と明かし、警察による不当逮捕さえ窺わせる口ぶりだった。凶悪な暴行事件や解決困難なケースでもないのに、わざわざ捜1の精鋭が出張ることになった理由は何だったのか。それは、

〈被害者は安倍(晋三)総理の秘書の息子さんなんだ。すぐに逮捕してほしい〉

 と、中村刑事部長の指示により釣1課長が精鋭を集め、命じたからに他ならない。


■捜査員の一人は遂に…


 世田谷署の捜査関係者が明かす。

「被害者の父親が署で職業を聞かれ、“安倍総理の秘書をしていました”と話した。その報告書が本部に上げられたのです」

 実際、

「釣はダイエーからの転職組で、1課長になるまで捜1勤務がゼロ。現場の刑事だったこともない。それに普段から上の顔色ばっかり窺ってるから“ヒラメ”って言われていて、中村刑事部長の言いなりだった。世田谷署からの報告で、(秘)という印のついた政治家案件であることを把握した中村部長が大騒ぎし、一刻の猶予もまかりならんと1課を投入したのでしょう。そして事件解決の“成果”を何らかの形で安倍さんに報告したはずです」

 と前出・別のOBは推察する。送り込まれた精鋭たちは、

「“3日でやれって言うから3日でやり(逮捕し)ましたよ”と振り返っていました」(同)

 図らずも捜1の能力の高さを証明することになったわけだが、現場の捜査員たちには虚しさばかりが残った。だからこそ、その思いを聞かされた同僚らが先輩やOBに打ち明けたくなったのだろう――。

 本誌の捜査班へのアプローチは難渋を極めた。そんな中、“副産物”のようなエピソードが、さる警視庁幹部から得られたのだった。

「どこで聞きつけてきたの? 安倍さんの秘書、正確には過去に政策秘書を務めていた人物なんだけどね。その秘書の息子が被害者である事件に、1課が投入されたのは事実だよ。その中には『官邸ドローン事件』を捜査した者も含まれていた。この事件は、基本的に公安部が担当していたんだけど、その捜査員がたまたまラジコンが趣味で、ドローンの送受信機の仕組みに詳しかった。被疑者特定に一役買ったわけです」

「官邸ドローン事件」とは、15年4月、官邸の屋上にドローンが落下しているのが見つかり、その2日後、容疑者の男が福井県警に出頭した事件を指す。

「捜査員の彼のおかげでドローンが解明できたし、それまでの実績も確かなので上も彼のことはかなり評価していた。その彼も含め、当時の釣課長が信頼していた精鋭たちが現場に投入されたんです。ただ、事件そのものは言っちゃ悪いけど、たんなる暴行事件だからね。なんで彼らが出張らなきゃいけなかったのか。お察しの通り、中村刑事部長の強い意向が働いていた。当然彼らも不満を募らせ、周囲にそれを漏らしていましたよ。“別の事件も抱えているのに、なんで俺たちがやらされるのか”ってね」(同)

 そしてようやく本誌は、この“異例”の捜査に駆り出された捜査員のうちの一人に接触することができた。

「なんで、捜査1課がやったのかって? ふふ……。あの当時、我々は三鷹で起きた性犯罪(前出)とか、飛行機が落っこちた件(15年7月、調布市の民家に小型機が墜落。機長ら3名が死亡した)も捜査していたしね」

 色んな現場を行きつ戻りつする“渡り鳥”生活をひとしきり懐かしんだ後、

「釣さんから、“ちょっと、頼むよ。1日、2日でまとめてくれねえか”って。(安倍総理か中村刑事部長か)どちらかの名前を出したか、あるいは、“こういう案件があったから……”みたいな言い方だった。被害者側がけしかけたようなところがあるケンカだよね。被疑者は成人の男性会社員だったけど、いきなり子供を殴るワケはないでしょう。ただ、こちらも1課の看板を背負っているし、上から言われたんだから、仕方なくやりました。逮捕状を取るためにはこれとあれが必要で……とね。最終的には、3日くらいはかかったけど、暴行で逮捕状を取ったんだよ。被疑者は犯行を認めてすぐに送検。まさか逮捕までとは……って茫然自失だったんじゃないかな」

“3日”と“1日、2日”は誤差として、捜1OBらの話と一致する当事者証言である。世田谷区内にあるゲームセンターの職員にも当時を振り返ってもらうと、

「グランツーリスモ(車の運転シミュレーターゲーム)をやっていた子供が、30代くらいの大柄な男に殴られたことが確かにあった。ただ、子供からちょっかいを出したワケではなく、ゲームに負けた大人がその腹いせに子供に覆いかぶさるようにして殴りかかったのではないか。記憶では1発だけだった。男の名前はわからない」

 本誌は加害者に接触することは出来なかった。しかし、忖度捜査の痕はしっかり残されていたのである。

(2)へつづく

「週刊新潮」2019年11月28日号 掲載

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