桜を見る会の騒動、本当にマヌケなのは…(中川淳一郎)

桜を見る会の騒動、本当にマヌケなのは…(中川淳一郎)

イラスト・まんきつ

 桜を見る会、ホント、どーしようもない話ですね。あのイベント、毎年芸能人が出てきて中央の総理夫妻がももいろクローバーZと一緒に「ゼーット!」みたいなポーズを取ったり、参加した芸能人は嬉々としてブログやインスタグラムにその日の様子を公開したりする。

 芸能人はさておき、間抜けなのが安倍首相の地元・山口からやってきた800人のミーハー軍団ですわ。「功績」のある方が多い地域であるのでしょうけど(棒読み)、地元のツアー会社が「浅草観光」とか「東京スカイツリー観光」とか様々なオプションをつけて6万7千円〜7万3500円まで5つのコースがあった。「明治神宮周辺」って地元民の散歩コースか! 「NHKスタジオパーク」ってなんだよコレ。「どーもくん」がそんなに見たいのかっつーの!

 以前、小渕優子氏の後援会が地元・群馬の支援者を引き連れて明治座で観劇し、その時の金額が政治資金規正法違反に問われ、結局小渕氏は閣僚を辞任し、元秘書が書類送検された事件を思い出しました。この時小渕氏のスタッフはハードディスクをドリルで破壊して証拠隠滅を図り、ネット上で「ドリル優子」や「トリンドリル優子」といったあだ名がつけられました。

 いや、私なぞ、政治家の後援会に入ったこともないし友人が出馬した時を除き政治家の応援などしたことがありません。だからこそ「後援会」に入る気持ちがまったく分からない。その組織力を期待されて何らかの優遇をされてるんじゃねぇ〜の? なんてゲスの勘繰りをしてしまいます。

 さて、私がこの手の件で好きなのが、「いい年した大人が集団行動をしている」滑稽さにあります。ツアーコンダクターが「こっちですよ〜!」と旗を振ってそこにぞろぞろとついていく。例のニューオータニの「前夜祭」にしても大勢が寿司コーナーに殺到した結果、アッという間に空っぽになり、唐揚げを山盛りにする人々がそこらで「ちょっと料理が足りないね」なんて言ってる姿が想像できます。しかも3人1部屋ですよ!

 安倍氏の地元民も小渕氏の地元民も完全に「俺ら東京さ行ぐだ 2010年代版」的で、自分にはまったくない発想をする人々ってのが世の中にはいるなぁ〜、日本は広いな〜、としみじみと思うのであります。

 海外のツアー旅行でも、ベネチアやプラハのような石畳のお洒落な街で高齢者を中心とした日本人観光客が集団行動をしていますが、自分には絶対にこんなことはできない。旅の間ぐらい、自由に行動させてくれ〜。好きなもんを食わせてくれ〜と思うのです。あと、集団行動は恥ずかしい。

 しかしながら世の中にはタピオカ屋に大行列を作る人もいれば、11月9日、17時10分から18時40分まで行われた天皇陛下の即位を祝う「国民祭典」では、当日の朝3時から並ぶ人もいるし、始発電車で到着した人は走って皇居まで向かう。両陛下のパレードを見るために11万9千人が沿道を埋め尽くし、カメラのベストポジションを狙うべく早朝から場所取りをする。テレビの生中継の方がよっぽど鮮明に見えるんじゃねーの? なんて思う私はえぇ、東京五輪のチケット、1枚も当たりませんでした。

中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)
1973(昭和48)年東京都生まれ。ネットニュース編集者。博報堂で企業のPR業務に携わり、2001年に退社。雑誌のライター、「TVブロス」編集者等を経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『ウェブでメシを食うということ』等。

まんきつ
1975(昭和50)年埼玉県生まれ。日本大学藝術学部卒。ブログ「まんしゅうきつこのオリモノわんだーらんど」で注目を浴び、漫画家、イラストレーターとして活躍。著書に『アル中ワンダーランド』(扶桑社)『ハルモヤさん』(新潮社)など。

「週刊新潮」2019年12月5日号 掲載

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