“捜査に支障が…”の言い訳、何なの?(中川淳一郎)

“捜査に支障が…”の言い訳、何なの?(中川淳一郎)

イラスト・まんきつ

 公職選挙法違反疑惑の渦中にある河井案里参議院議員と、夫の河井克行前法相が国会を1カ月以上サボりました。大相撲でも2横綱が途中休場となりましたが、白鵬は横綱になって以来の12年半75場所中12場所休場で、うち5場所は全休です。鶴竜は30場所中14場所休場、4場所全休です。

 小中学生とか会社員は学校や会社をサボったら怒られたりクビになったりするのに、国会議員とか横綱という権力者や高給取りがこんなにサボるのはなんで許されるんですか?

 国民のために仕事しないんだったらさっさと議員辞めて補選しろよ。立て! 地元・広島県民よ!

 そして大関以下の力士は、「オレらは休場したら番付落ちるから必死なのに、なんで横綱だけ休み放題なんだよ! そんな横綱に『品格』なんてあるかっつーの!」と正論をブチかませ。

 不思議なのは、日本相撲協会が、横綱がいなかったら場が盛り上がらないと本気で心配していることです。幸い、大相撲は相対評価のため、全力士中もっとも強い力士が横綱になれるんですよ。不人気の2人が引退すれば、他の力士の間で横綱を目指す争いとなるわけで、大関の貴景勝が2連覇でもすりゃあ横綱になるわけでしょ? 関脇・朝乃山だって「3場所で33勝」とか「3場所で1回優勝」くらいで大関になれるわけです。毎場所「次はあいつが横綱だ!」「大関昇進、あるか!」みたいな話で盛り上がる方が、休んでばかりの横綱2人がいるよりも面白い。幕尻・徳勝龍の歴史的快挙は愉快でしたが。

 とにかく、下々からすれば、国会議員と横綱だけ休み放題ってのは腹が立つんですよ。というか、親分の首相がピンチなのに、河井夫妻は何をやってるんだ。

 それにしても、河井夫妻を筆頭とした疑惑の渦中の人物が説明を避ける言い訳に使う「捜査に支障を来すことについては発言を控える」って何なの? 捜査が始まっているのなら、捜査員に伝えたことを言えばいいし、まだなら、これから捜査員に対して言う「真実」を話せばいいだけ。昔、コソ泥を捕まえたことがありますが、仮に取調べ前に記者が私のところに来たら、「9階で見つけ4階まで追いかけて捕まえました」などと真実をキチンと話しますけどね。これを記者に言ったからといって捜査には何も支障はない。

 あたかも、私は捜査関係者様に迷惑をかけたくないですし、真摯に協力しようと思ってます、本当は真実を話したいんですけど話せないんです〜といった態度ですが、まったく違います。悪いことしてるのを分かってるから話さないだけ。むしろ捜査員との癒着を疑いたくなるじゃねーかよ。

 ずっと雲隠れしていたのに、先日家宅捜索を受けたらやっと会見をしたのは、この伝家の宝刀「捜査に支障が出るので話せない」をようやく使えるようになったからです。他にも「裁判を起こされたことについてどう思うか?」と聞かれても、「訴状が届いていないので何も言えない」。「誰が関与したのか?」には、「個人情報なのでお伝えできない」。いや、前者は「感想」を言えばいいし、後者は個人情報保護法とは関係ありません。こうした「逃げ方便」だけは増えていくんだな、これが。

中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)
1973(昭和48)年東京都生まれ。ネットニュース編集者。博報堂で企業のPR業務に携わり、2001年に退社。雑誌のライター、「TVブロス」編集者等を経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『ウェブでメシを食うということ』等。

まんきつ
1975(昭和50)年埼玉県生まれ。日本大学藝術学部卒。ブログ「まんしゅうきつこのオリモノわんだーらんど」で注目を浴び、漫画家、イラストレーターとして活躍。著書に『アル中ワンダーランド』(扶桑社)『ハルモヤさん』(新潮社)など。

「週刊新潮」2020年2月6日号 掲載

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