辻元清美議員の「意味のない質問」(安倍総理)を検証してみた

辻元清美議員の「意味のない質問」(安倍総理)を検証してみた

辻元清美

 12日の衆院予算委員会で安倍総理が辻元清美代議士の質問が終わったあとに発した「意味のない質問だよ」という野次もしくは独り言が、物議を醸している。結局、事態収拾のために、当初は辻元氏の質問を「罵詈雑言」の類だと言っていた総理も、17日に不承不承「不規則な発言」をおわびすることになった。

 このニュース、新聞やテレビではおおむね、次のように伝えられている。

 辻元氏が質問の際に「タイは頭から腐る」と言って政権を批判したところ、総理は「意味のない質問だよ」と言った。国会軽視と言われても仕方がない発言は問題ではないか――こんなところだろう。「報道ステーション」では憲法学者の木村草太氏が登場して、総理の不規則発言を批判していた。総理のこの手の発言は今に始まったことではない。

 しかし、実際の辻元氏の質問にはどのくらいの「意味」があったのだろうか。この点はほとんど検証されていない。実は「タイの頭」のくだりは結構長い。

「タイの頭発言」の数分前からの発言をできるだけ忠実に文字に起こしてみよう(意味を取りにくいといころは( )で補足)。

 質問時間の終盤、辻元氏は憲法改正についての自民党、総理の姿勢をこう批判し始めた。

「今ですね、まあ憲法改正がしたいということはわかったんですれけども、自民党はまず96条からやっていく、と。

 結局ね、なんでもいいんですよ。結局、できそうなところからやっていく、と。できそうなところを探しているんじゃないですか、みなさん。

 で、96条がいけそうだな、となると『他の党も言ってるからこれ言ってみよう』。

 憲法9条、これ、今、衛藤大臣(を指しながら)、いろいろブツブツ言っているけれども、日本会議がですね、言い出したでしょ。衛藤大臣、公明党とかに走り回ったんじゃないですか。伊藤さんという政策委員が言い出した。そうでしょ?

 ですからね、私が申し上げたいのは、『なんでもいいから』『党是だから』から始まって、ある時は96条、ある時は緊急事態、ある時は憲法9条。

 また稲田(自民党)幹事長代行が、こう言っています。『14条改正して、クオーター制を取り入れるべき』と考えると、唐突に数日前、おっしゃりだした。こんなことを言わなくても、自民党が男女同数の候補者を出す、そういう努力をなさったらどうですか。

 この間の参議院選挙、自民党はですね、女性の候補者14.9%。立憲民主党は45%ですから。もう(男女同数を)やってんですよ!

 自分たちがですね、足元の努力もせずに、憲法改正の道具を探して使っている。

 笑止千万です。でもね、これってね、安倍総理のですね、真骨頂だと思うんですよ。

 他の政策もそうでしょ? 三本の矢がダメなら女性活躍、女性活躍がダメだったら一億総活躍、あるいは人づくり改革。次から次にですね、これがいけそうかな、あれがいけそうかな……。

 外交もそうじゃないですか。ロシア。北朝鮮。フラフラ、フラフラ、あっちかな、こっちかなって。

 憲法もフラフラ……私が申し上げているのは、日本が心配だから言ってるんです。

 今ですね、国民の声は憲法よりも暮らしや老後の不安、災害の対策、いっぱいあります。

 地球も悲鳴をあげていますよ。温暖化対策。

 政治的なエネルギーというのは限られています。何を優先順位(上位)にするのか。

 自衛隊をイチかバチかの勝負(9条改正のこと)にかけるんですか。そんな余裕は日本にはないし、自衛隊に失礼だと思います。だから申し上げているんですよ。

 次、政治姿勢いきます。和泉(洋人総理)補佐官、残念ながら(国会に)来ていただけませんでした。

 まあ桜を見る会では、総理大臣の公私混同とか税金の私物化とか言われています。さっきね、総理は『まだこの話してる』って言うけれども、総理が領収書をドンと出して、明細書をバンと出せば、終わるじゃないですか。

 その自覚ないんですか? ね?

 そこでですね、このいろんな体質が官僚にまで蔓延してきているんじゃないかという懸念なんですよ。

 あの加計学園で登場した和泉補佐官ですね、内閣官房の女性官僚、大坪寛子健康医療戦略次長と、税金で行った公務で、コネクティングルーム、中でつながった部屋で宿泊していたということが、先週、この委員会で問題になりました。

 そして、えー、2年前に4回、公務で出張されています。全部示しあわせたように、ミャンマー、インド、中国、フィリピン、コネクティングルームに泊まっていると。

 総理、これ、適切な海外出張だと思われますか。

 国民にさまざまな誤解を招くんじゃないですか。

 いかがでしょうか。総理」

 憲法改正の話がいつの間にか、「安倍政権は何でもフラフラしている」という批判につながり、さらに「地球は悲鳴をあげている」という謎のアピールが挿入され、最終的に話は不倫疑惑が報じられている和泉補佐官が出張の際に女性官僚とコネクティングルームを利用していたことは誤解を招くと思うがどうか、という問いかけに。

 これに対して、菅官房長官はいつものように「適切に対応している」云々という簡単な答弁。しかし、辻元氏はコネクティングルームにこだわる。

「あのー私は誰と誰が恋愛しようがつきあおうがそんなことはどうでもいいと思っています。しかし普通の会社ではですね、これ、えー労働問題のコンサルタントの人も言っています。これもしも和泉補佐官がコネクティングルームに女性官僚を無理やり入れたら、これはパワハラ、セクハラになるんですよ。

 合意だったら職権乱用ですよ。

 総理、だからここははっきりけじめをつけたらどうですかと申し上げているんです。

 これはやっぱり誤解を招くし、おかしかった、と。総理の口から仰って、スッキリしましょうよ」

 総理は、「私はコネクティングルームうんぬんというのは承知していないので、確かめてみたい」とこれまた簡単な答弁。

 辻元氏は納得しない。

「一方の大坪次長は総理にコロナウイルス対策の説明をしている人じゃないですか。そうでしょう?

 このコロナウイルス対策で国民に不安が広がっているんですよ。そしてこのコロナウイルス対策の広報官のようにテレビに出てペラペラしゃべってるんですよ。

 一方この公費出張の問題が出たんです。

 私はね、総理、いまコロナウイルスの危機に直面しているからこそ、こんな公費出張は公私混同じゃないかと。おかしい。これからもこの大坪次長に、広報官のように、『何もありませんでした』『何もございませんでした』というようにテレビでペラペラしゃべらせるんですか。

 そして、和泉補佐官。けじめをつけさせていただきたいと思いますが、総理、いかがですか。

 総理ですよ。補佐官でしょ。総理大臣補佐官でしょう」

 これに対してまた菅官房長官が木で鼻をくくったような答弁をしていると、その間、辻元氏は「だめだ〜それ」と野次めいた発言をして立ち上がり、こう続ける。

「あのね、コロナウイルスでこれ、船の人も含めてみんな心配しててですね、その中で税金使って、なんか知らんけど、ねえ? ラブラブ旅行じゃないけどね、してたんじゃないかというような疑いをかけられている。

 それでね、これ見てくださいよ。この2人が旅行に行ってた、たとえば7月ですね、その旅行に行く前日の記事はこれですよ。

『西日本豪雨1週間』――西日本豪雨が発生した翌日に行ってるんですよ。出張に。『家屋被害、3万棟超す』。

 そしてですね、なんとですね、死者がですね、ものすごい数出てる。その翌日に行ってるんです。死者203人。行方不明37人。家屋被害3万棟。

 ボランティア何万人も行ってるのが、この記事が7月15日。まさしく2人がコネクティングルームに泊まる、出張に行った日の記事ですよ。

 和泉補佐官は国土強靭化担当でしょ。何やってんですか。だから言ってるんです。

 私は単にこれはスキャンダルじゃないです。内閣としての総理、けじめをですね、つけたほうがいい。いまコロナウイルスの危機が迫っている中でですね、いろいろ広がってる、不安も広がってる中で、ここはハッキリ、公私混同を疑われるようなことは、させない、と。けじめをつけて、2人を処分するなり、きちんと対応していただきたいと思いますが、いかがでしょうか」

 問題の2人が旅行(出張)に出かけたのは、コロナウイルス問題が発生するよりもはるかに前のことなので、それとこれを結び付けるのは無理筋にも見えるが、とにかく辻元氏は「けじめ」にこだわって続ける。

「あのねこの人、加計学園の疑惑の渦中にあった人ですよね。なんか弱みでもあるんですか。総理。加計学園の実際にどういうことが真実だったかというようなことを知っているからですね、厳しく処分できないんじゃないですか。

 総理、そう思われるんですよ。

 ここはハッキリと、こんな公私混同をする、それを疑われてもダメでしょう。総理はよく『李下に冠を正さず』って仰いますよね。加計学園の時だけで11回も言ってるんです。

 11回も。全然正さずじゃないと思いますけどね。正しまくってるんじゃないかと思いますよ。

 はっきりと、いまこういうコロナのこともあるからこそ、けじめをつけると、総理言ってください。

 総理の口ではっきり言ってください。じゃないと加計学園のなんか、弱みあんの?と思っちゃいますよ〜」

 突如飛び出した「総理は官僚に弱みを握られている」という説に対して、総理は「イメージ操作はやめていただきたい」「まったく関係ない」と答えるが、辻元氏はさらにこの持論を展開していき、森友でも加計でも真実を知る立場にあった人がみんな出世している、と個人名を出しながら熱弁。

 そのあとに「タイの頭発言」が飛び出すのだが、これも結構長い質問(というか発言)の一部だ。

「結局はですね、口封じだと思われますよ。(総理は官僚に対してものを)言えないんですよ。弱み握られているから。そう思われても仕方ないんじゃないですか。

 だから私は総理のためにもですね、そんなことはないと仰るんだったら、はっきりとけじめをつけろと言ってるんです。

 総理最後に申し上げます。タイは頭から腐るという言葉、ご存じですか。

 これはですね。英語とかロシア語でもあるんですよ。死んだ魚の鮮度は魚の頭の状態から判断できる。従って、社会、国、企業などの上層部が腐敗していると、残りもすぐに腐っていく。

 総理が、桜とか、加計とか、森友とか疑惑まみれって言われてるから、それに引きずられるように、官僚の示しがつかない。

 私ね、官僚の皆さんかわいそうです。心を痛めてる官僚の方たくさんいると思いますよ。

 今回も見るに見かねて内部からじゃないかなというくらい心配しています。子供の教育にも悪いです。まあ長期政権だからじゃないですよ。最初からやってる。桜を見る会だって森友だって総理大臣になる前から講演に行こうとしていた。

 まあですね、ここまで来たら、原因はタイの頭。

 頭を変えるしかないんじゃないですか。私は今日総理がしっかりけじめをつけると仰ったら、ここまで言うつもりはなかったです。

 まあ私の手で憲法改正を成し遂げたいと。

 総理の手で成し遂げることは、そろそろ総理自身の幕引きだ、ということを申し上げて(質問を)終わります」

 和泉補佐官はじめ官僚たちは総理の痛いところを握っている。だからけじめをつけることができない。なぜ官僚たちがそうなのか。それは総理が腐っているからだ。官僚も気の毒だ――結局どちらが悪いかよくわからない論理を展開して、辻元氏の「質問」は終了した。最後は特に何かを聞くわけではなく、意見を言って終わっている。

「意味のない質問だよ」と首相が発したのはこの直後のこと。総理を厳しく批判する辻元氏の質問(または演説)に意味がないかどうかの判断は人それぞれだろう。「よく言ってくれた」という辻元氏の支持者もいるに違いない。

 ただ一方で、どうせ政府を追及するならば、後手に回っているコロナウイルス対策のことなどを取り上げるべきだ、と感じる国民も多いだろう。

 ネット上では「ウイルスの脅威が現実になっているのに、いつまで野党は桜(を見る会の追及)をやっているんだ」という意見が数多く見られる。

 こうした批判は今に始まったことではない。野党が不祥事やスキャンダルばかり取り上げる(ように見える)ことは好意的に受け止められているとは言い難い。それでもなお、この路線が続くのはなぜか。

 経済産業省の元キャリア官僚、宇佐美典也氏は著書『逃げられない世代』の中で背景をこう解説している。

「まともな政策議論をしようとしても、政権側が事前に与党と法律案・予算案の内容をガチガチに固めてしまっており、予算額の1円、法律案の一言一句の修正にすら応じる意向がないことがほとんどですから、有ること無いこと騒ぎ立てて世間の政権への不信を煽って政権批判票を掘り起こす方が次の選挙に向けては有効な時間の使い方ということになります。もちろんそういう中でも政府に対して健気に建設的な政策提案をしてくるような良心的な野党議員もいますが、残念ながらそのような議員が野党の主流になることはありません。むしろ虚実問わず政府を批判一辺倒で追いつめるようなタイプの議員の方が出世することになります」

 国会が「意味のある質疑」で満たされる日は遠い……。

デイリー新潮編集部

2020年2月18日 掲載

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