萩生田光一大臣のカジノ疑惑 “マカオ特別待遇”の証拠動画

萩生田光一大臣のカジノ疑惑 “マカオ特別待遇”の証拠動画

事業者の歓待を受けた萩生田大臣

 本誌(「週刊新潮」)3月12日号の発売日、3月5日の参議院予算委員会。質問に立った立憲民主党の杉尾秀哉参議院議員は萩生田光一文科相にこう聞いた。

「大臣の行動の一部始終が写真に撮られている。カジノの世界、深い闇があるんじゃないでしょうか。この週刊誌のカメラマンが撮った写真ではないそうです。写真を撮られていたこと、ずっとこういうふうに行動を確認されていたこと、お気づきでしたか?」

 萩生田大臣は、

「全く存じ上げません」

 と述べるのみだったが、杉尾議員の質問はまさに今回の問題の核心を突いていた。いくら「プライベートな旅行で金も自分で払ったから何の問題もない」と言い張ろうと、画像が残されていること自体が大臣の「カジノ汚染」、カジノの世界の深い闇を象徴する出来事なのだ。ただし、本誌記事への反応や国会での答弁を見るかぎり、大臣はその闇の深刻さにお気づきではないらしい。ならば、さらに深い闇を物語る証拠を公開するしかあるまい。

 手元に複数の動画がある。いずれもマカオを訪れた際の萩生田大臣らを捉えたもので、その動画からキャプチャーした画像を3月12日号ではご紹介した。動画を時系列通りに並べて編集したものはデイリー新潮にアップしたのでご覧いただきたい。

 最初の動画は2018年8月9日午前11時半頃に撮影されたものである。場所はマカオのフェリーターミナルで、雑踏の中を2人の男が歩いている。一人は萩生田大臣。もう一人は香港に本社がある大手カジノ事業者「ギャラクシー・エンターテインメント・グループ」日本法人の総支配人を務める岡部智氏だ。車寄せに到着すると、岡部氏に促された萩生田大臣はゆったりした足取りで車に乗り込んだ【1】。

 その後に萩生田大臣の妻や、彼の有力後援者である不動産会社「エイト」の白柳雅文会長夫妻が続く。全員が乗り込んだ後の車の横にはなぜか着物姿の女性とスーツの男性が。動き出した車に向かって「いってらっしゃい」といった感じで手を振った、この着物姿の女性もギャラクシー社が手配したスタッフなのだろうか。


■ビッグマネー


 いずれにせよ、この動画は「偶然」撮影されたものではない。当時、自民党の幹事長代行であり、超党派のいわゆる「カジノ議連」の事務局長だった萩生田大臣に狙いを絞り、周到に準備した上で撮られたものだ。しかも、これを撮影した“誰か”は一人ではなく、チームである可能性が高い。すなわち、その道の「プロ」ということだ。彼らは萩生田大臣の旅程を事前に把握していたのではないか。

 問題の動画に戻ろう。

 着物姿の女性とスーツの男性に見送られて走り出した車を、正面から捉えた映像。それをよく見ると、助手席に座った岡部氏が後ろを振り返り、身振りを交えながら萩生田氏らに何やら話しかけている様子が写っていることが分かる【2】。3月12日号でお伝えした通り、彼らが乗っている黒塗りのワゴン車はギャラクシー社が用意したものだ。

 3月12日号の記事が公になると、萩生田大臣は自らのブログに〈令和2年3月5日発売の週刊新潮の記事について〉と題する文章をアップした。その中の〈有識者のコメント〉にはこうある。

〈IR業界の「超VIP待遇」の送迎であれば、顧客をフェリーなどには乗せず、居住地の最寄りまでプライベートジェットなどで迎えに行きます。その上、送迎車はロールスロイスなどの高級車を使用します〉

〈個人手配の宿泊者をフェリー乗り場からホテルへ送迎するのはマカオでは日常的に行われているサービスなので、特別なことではありません〉

〈送迎車両についても「黒塗りワゴン」と文中にありますが、写真を見る限り国産ワンボックスのホテルが何台も所有している送迎車両ですので「超VIP待遇」とは言えません〉

 この匿名の〈有識者〉のコメントがいかにいい加減なものかは後述するが、そもそも、萩生田大臣がマカオを訪れたのは日本でカジノ実施法が成立した直後、というタイミングである。法案成立により、ギャラクシー社は単なるカジノ事業者ではなく、日本に参入するかもしれない事業者となった。しかもギャラクシー社は18年の純売上高が552億香港ドル(約7772億円)にもなる巨大企業で、参入にも乗り気。そうした事業者には近づかない、近づかせないのが為政者としての「正しい」あり方ではなかろうか。「プライベートの旅行」というなら、他のリゾート地を訪ねれば良かったではないか。萩生田大臣には「李下に冠を正さず」という言葉を贈りたい。

 加えて言えば、IR(カジノを含む統合型リゾート施設)は文字通りの巨大利権である。ゴールドマン・サックス証券によると、東京、大阪、北海道の各都市圏でIRが出来た場合、カジノによる粗収益(賭金総額から顧客への払戻金を差し引いた額)は年間1兆7500億円にもなる可能性があるという。IR事業者は粗収益の15%を国に、15%を地方自治体に納付する義務がある。すなわち、国と自治体に合わせて年間5250億円が入る計算だ。

 ビッグマネーが動くからこそ、参入を目指すカジノ事業者も血まなこになる。萩生田大臣は、そんな事業者から「特別待遇」を受けていたのだから何をかいわんや、である。

 フェリーターミナルを出発し、ギャラクシー社が運営する「ギャラクシーマカオ」内にある五つ星ホテル「バンヤンツリーマカオ」の入り口前に到着した黒塗りワゴンを後ろから捉えた映像。萩生田氏が車から降りるのを待ち構えていたかのように一人の男がホテルから出てくる。ギャラクシー社の日本法人の最高執行責任者(COO)を務めているテッド・チャン氏。カジノ業界では知らぬ者のない大物である。動画にはテッド・チャン氏に萩生田大臣が名刺を渡す場面も収められており、その後、テッド・チャン氏と岡部氏が「二人羽織」のように手を広げ、萩生田大臣ご一行をホテル内へといざなうのである【3】。

 萩生田大臣のブログの〈有識者のコメント〉には、

〈国会議員や企業役員等がホテルを利用する際は、経営陣や支配人などが出迎えや案内をすることは各国のホテルで行われていることなので、こちらも特別なことではありません〉

 とあるが、

「例えば、アメリカの国会議員がプライベートで日本に来て帝国ホテルに泊まったとしましょう。その時、帝国ホテルの社長が玄関まで出迎えに来ますか? 来ないでしょう。テッド・チャン氏がわざわざ出迎えるのはそれくらい異例のことで、まさしく特別待遇です」(カジノ事業関係者)

 手元にある動画には、ギャラクシー社が運営する「ブロードウェイ・マカオ」の飲食店街を萩生田大臣ご一行が歩いている様子を捉えたものもある【4】。それを見ると、案内役の女性スタッフだけではなく、テッド・チャン、岡部両氏も同行していることが分かる。これも萩生田大臣が特別扱いを受けていたことを示す証拠といえよう。


■お忍びの場合は…


 そもそも、ギャラクシー社側は萩生田大臣の来訪をどのように知ったのか。

 マカオのカジノを取材したこともあるジャーナリストの出井康博氏が言う。

「『完全なプライベート』のはずなのにギャラクシー社の幹部連中に旅行の話が伝わっているのはおかしな話です。自分から言っていないのであれば、政治家としての情報管理が甘いということになるのではないでしょうか」

 ギャラクシー社側は事前に萩生田大臣の来訪を知っていたからこそ、車を用意し、大物がわざわざ出迎えた。その車についての萩生田大臣サイドの主張は、“ロールスロイスなどの高級車ではなく、普通の送迎車だから超VIP待遇ではない”というものである。しかし、

「ロールスロイスや車体の長いリムジンを喜ぶのは成金の中国人富裕層くらい。国会議員などがお忍びでIR施設に行く場合は目立つリムジンを嫌がるのです。岡部さんはそうしたことを重々承知した上で黒塗りワゴンを用意したのでしょう。そもそも、その車に岡部さんが同乗していること自体、特別待遇と言えます」(先のカジノ事業関係者)

 都知事時代、カジノ誘致に慎重な姿勢を示していた舛添要一氏は、

「萩生田さんがギャラクシー社から受けた行為は特別待遇以外の何物でもなく、大問題です」

 と、批判する。

「萩生田さんは自民党幹事長代行の前は官房副長官を務めていた安倍総理の側近。当然、IR事業者もその経歴を調べた上で『こいつは使える』と議員たちを品定めし、狙いをつけて近づいてくる。だから、プライベートであっても、そうした事業者が運営するカジノやホテルを利用すべきではないのです」

 IR有力候補地の横浜が地盤でカジノ反対の立場をとる無所属の江田憲司代議士もこう話す。

「今回の萩生田さんの問題は“わきが甘い”どころの話ではないですよ。限度を超えています。推進派の政治家が今回のようなことをすれば、国民から『利権政治家が暗躍している』と思われても仕方ない」

 巨大利権をめぐる仁義なき戦い。動画の存在そのものが、戦いの凄まじさを物語っているのだ。

「週刊新潮」2020年3月19日号 掲載

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