コロナ感染者一桁の県「徳島県知事」の強すぎたメッセージ “翔んで埼玉化”は笑えない

コロナ感染者一桁の県「徳島県知事」の強すぎたメッセージ “翔んで埼玉化”は笑えない

徳島県ホームページより

 今回のコロナ禍をキッカケに、全国自治体の首長に毎日大きくフォーカスが当たっている。各県知事が出す施策が今回ほど身近でわかり易かったことは、今までなかったと思う。

 もちろんその評価は人によってまちまちだろうが、一般の人がテレビやwebから得る情報で各知事の施策や能力を日々判断するようになった。

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 全国規模で見れば新型コロナの感染拡大にまだ歯止めはかかっていないが、それでも感染者数を今のところかなり抑えている県がある。

 例えば、4月27日午後6時現在、まだ感染者数が1桁(ないし0)の三つの県だ。

*岩手県…感染者0名
*鳥取県…感染者3名
*徳島県…感染者5名

 他県からの流入に警戒感をかなり強めていると想像されるこの三県は、ゴールデンウイーク中、どんな施策を取るのだろうか。そのことを知るため、まずは上記三県のGW中の施策と知事自身が何を発信しているのかを確認したのだが、その知事のメッセージに結構驚かされた。

 まず、感染者数が今のところゼロである岩手県・達増知事は、4月17日こんなメッセージを発信していた。

『新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止のためには、本日から5月6日まで、大型連休期間を含めて、不要不急の帰省や旅行など、都道府県をまたいで人が移動することは極力避けなければなりません。

 このことは政府からの要請であるとともに全国知事会が一致団結して取り組むことにしており、岩手県からも、県民の皆さま及び県外の皆さまにお願いします』

 現在唯一の「感染者0」を誇る岩手県だが、そのメッセージ内容は他の都道府県とさほど変わらない「自粛のお願い」を趣旨としている。「他県からの移動」に関して言及しているのは“都道府県をまたいで人が移動することは極力避けなければなりません”の一文だけであり、比較的に冷静なものと言える。

 それに比べて、鳥取県・平井知事や徳島県・飯泉知事のメッセージはかなり強烈だ。

「新型コロナウイルスに関する皆様へのお願い事項」という鳥取県知事メッセージでは、

『特定警戒都道府県から鳥取県にお越しの皆様
 来県後14日間は、やむを得ない場合を除き、居宅・居所から外出を控えていただきますようお願いします』

 鳥取県公式webにはそう記載されている。

 これは字句通り取れば、“東京、北海道、大阪など「特定警戒都道府県」から鳥取県に入った人はその後14日間、外出しないでくれ”ということになる。

 これじゃまるで「検疫所長の指定する場所(自宅など)で入国の次の日から起算して14 日間待機し、空港等からの移動も含め公共交通機関を使用しないこと」とした厚生労働省の入国時の水際対策のようだ。外国人を相手にした検疫措置と似ている。

 徳島県・飯泉知事のメッセージはさらに強いもので驚いた。

 徳島県は4月22日インターチェンジや商業・観光施設など約140カ所で県外ナンバー車の流入調査を実施した。その調査を踏まえ、4月24日徳島県知事から県公式サイトに出された「県民のみなさまへのメッセージ」はこうだ。

『県外車両の流入調査の結果をみると、大阪、兵庫、京都など「特定警戒都道府県」の車両の県内施設への立ち寄りは、全体の1.8%程度となっておりますが、高速道路ICの交通量では、18.4%を占めており、未だ、多くの方が県をまたいで、本県に来られている状況です。そこで、大型連休を控え、5月6日までの間、生活必需品の販売業者を除く事業者の方々におかれましては、お客様が来られた際に、「県外客」でないことを確認し、「県外の方」は入場を「お断り」するなどの対応を行っていただくようお願い申し上げます』

 普通に読めば、これは県内の事業者に「お客が県外客かどうかを確かめさせた上で、県外の場合は帰ってもらう」と言っていることになる。

 もっとわかり易く言えば「法的規制はできないが、よその県から来るんじゃねえ」となる。

 県知事という立場の人間がこんなにもハッキリとした、しかも“感情的”とも取れるメッセージを出していいのか。

 一時的に、防疫上、水際対策のようなことを“結果的に実現しなきゃいけない”ということは理解できる。しかし、このメッセージはあまりに愚直でストレートで品がないように感じる。

 こうしたメッセージが“しっかりと”伝わってしまったせいなのかどうかはわからないが、徳島県外ナンバーの車に「暴言やあおり運転、投石、傷つける」といった差別的行為が発生している。そうした差別行為から自己防衛するため、「徳島県内在住者です」と明記した車用のステッカーの販売までされているのだ。

 24日の定例記者会見で、知事は「そうした行為をしないように」と呼び掛け、(自分が発したメッセージは)「強いメッセージになり過ぎたかもしれない」と釈明した。

 今こんな状態で、本格的なGWが始まる今週末からはどうなるのだろう。

 徳島県の話で言えば、陸路ではなく空路もあるだろう。GW期間中、徳島空港では東京線が1日2〜4往復、福岡線が1往復は運航する。24日時点の徳島到着便の予約客は前年同期の7%程度に落ち込んでいるとは言え、計約1200人いる。今からキャンセルも出るだろうが、それでも1000人前後は徳島県に来ることになる。そして、中にはきっと多数の「県外客」も含まれるだろう。

 そのとき、知事のメッセージを真に受けた「来るんじゃねえ」という発想の人は、いったいどんな行動をするのだろう。

『翔んで埼玉』という作品がある。千葉と東京との間に関所が出来たりするやつだ。結構笑えた。もちろん、フィクションだったからである。

 新型コロナウイルスは私たちに「人と人の間に具体的距離を取ること」(social distancing)を強要した。しかし、「人と人との分断」(social dividing)なるものまで強要などしてはいない。

 現実世界で全国の“翔んで埼玉化”など、まったく笑えない。

尾崎尚之(@YuuyakeBangohan)/編集者

週刊新潮WEB取材班編集

2020年5月1日 掲載

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