吉村大阪知事の後に続け… コロナ禍で知名度がアップした知事「6人」の横顔

吉村大阪知事の後に続け… コロナ禍で知名度がアップした知事「6人」の横顔

鈴木直道知事(Arakan/Wikimedia Commons)

 普段は住民以外には縁遠い都道府県知事が俄然、注目されている。理由は説明するまでもない。新型コロナウイルス対策の多くは知事に委ねられているからだ。「新型インフルエンザ等対策特別措置法」によると、外出自粛や休業要請などを行う権限の大半は知事が持つ。話題の知事の横顔を探った。


■鈴木直道・北海道知事(39)。2019年に初当選。1期目。報酬年間1628万円


 首都圏には楽観ムードすら漂っていた2月28日、法的根拠のない緊急事態宣言を独断で発出し、週末の外出自粛などを道民に要請。「結果責任は私が負います」と宣言する。

 批判もあったものの、感染者の増加ペースを鈍化させた。泥を全て被る覚悟を決めた上での決断は道内外で評価された。

 埼玉県三郷市育ち。同県立三郷高在学中に両親が離婚したため、経済的理由から大学進学を断念。高校卒業後の1999年、東京都庁に入庁した。翌2000年、自費で法政大第二部法学部(夜間過程)に入学。4年間の在学中は体育会ボクシング部の主将を務めた。

 都では東京都福祉保健局など衛生畑を歩む。この経験が新型コロナ対策に生かされていると言われている。

 中央官庁と違い、学歴より人物を重視する都庁では早くから認められ、2008年には財政再建のため、北海道夕張市に派遣される。成果を上げた後の2011年、同市長選に初当選。2期目で知事に転じた。選挙では自民、公明の両党が推薦した。

 全国知事で最年少。自民党内には「将来は国政に転じ、リーダー候補に」という声がある。48万人の法政大OBも「法大から初の首相を」と期待を寄せる。やはり苦学して法大を出た菅義偉官房長官(71)とのパイプが太い。

 夫人と2人暮らし。好きな言葉、座右の銘は次の通り。
「お金を失うことは小さく失うことだ。名誉を失うことは大きく失うことだ。しかし、勇気を失うことはすべてを失うことだ」


■湯崎英彦・広島県知事(54)。2009年初当選 3期目。報酬年間2203万円


 県職員にも一律給付される10万円を「活用する」とし、休業要請に応じた中小企業を支援する財源とする考えを示したが、県議会や住民から「公務員にも生活がある」との抗議を受け、撤回した。

 その上で「私は率先してやらなければいけない」(湯崎知事)と語り、まずは自分の報酬をカットする意向を示した。

 広島市出身。県内屈指の名門校・広島大附属高から東大法学部へ。卒業後の1990年、当時の通産省に入省。中小企業庁計画部計画課総括係長、通商政策局米州課課長補佐などを歴任した。在職中に国費でスタンフォード大学経営大学院(MBA)修了。

 2000年に退職。電気通信事業者「アッカ・ネットワークス」(2009年、イー・アクセスと合併。やがてワイモバイルに)を設立。代表取締役副社長に就く。

 2009年、県議会の自民党最大会派や民主党会派の支援を受けて知事選に初当選。2017年の前回選挙では自民党、公明党、民進党の推薦を受けた。

 家族は夫人と2男1女。2010年、第3子誕生時には1か月間の育児休業を取得した。都道府県知事が育休をとるのは初めてだった。亡父は、原爆の爆心地周辺の復元地図を作成した社会学者で元広島大教授の湯崎稔氏。
 座右の銘は「志と覚悟」。


■仁坂吉伸・和歌山県知事(69)。4期目。報酬年間1801万円


 和歌山県有田郡湯浅町にある地域医療の拠点「済生会有田病院」で2月13日以降、医師、入院患者ら11人が相次いで感染した。だが、3週間弱で通常業務を再開。県主導の素早い対応が功を奏した。

 陣頭指揮を執ったのが仁坂知事。「37・5度以上の発熱が4日以上続く人はPCR検査を」という国の基準を無視し、あえて検査対象を広げたことなどが良かったとされる。また、有田病院の病院名も公表するまでには苦悩もあったが、感染拡大の防止を第一に考えた。

「(新型コロナ対策を)徹底的にやった」(仁坂知事)。

 その後も感染の恐れのある人は半ば片っ端から検査。感染者数を抑え続けている。

 仁坂知事は和歌山市生まれ。県下屈指の進学校である県立桐蔭高校を経て1974年に東大経済学部を卒業。当時の通産省に入省した。生活産業局総務課長、大臣官房審議官(通商政策局担当)、製造産業局次長、ブルネイ国大使を歴任した生粋のエリート。2006年に自民、公明両党の推薦を受けて知事選に出馬し、初当選した。

 2017年、東京・上野動物園でパンダの赤ちゃん・シャンシャンが生まれ、マスコミ報道が過熱すると、同県白浜市のアドベンチャーワールドにもパンダがいることから、苦言を呈した。

「上野のシャンシャンしか世の中にいないのか、というくらいの浮かれようだ。最後に『和歌山にもいる』と一言くらい入れてくれたらいいのに」(仁坂知事)。

 家族は夫人と1女。2015年度には「ベスト・プラウド・ファーザー賞 in 関西」に選ばれた。座右の銘は「誠心誠意」


■大井川和彦・茨城県知事(56)1期目。年間報酬1978万円


 春休み明けの4月8日、つくば市など独自に定めた感染拡大要注意市町村を除けば、県立校の学校再開は問題ないとし、授業を開始したところ、夫人の母校でもある名門校・県立日立一高の有志がストライキに突入。

 同高の有志たちが県教育委員会などに送った通告書には「学校現場に関わる人すべてを守ることは明らかに緊急性を要している」と書かれており、県内外に波紋が広がった。

 大井川知事は「教育崩壊を防ぐ」などと唱えていたが、同13日には一転して「14日から5月6日まで休校にする」と発表。その後、休校は5月末までに延長された。

 教育は大井川県政の目玉の一つ。2020年度からの3年間で、県立高10校が中高一貫校に。茨城県には既に3校の県立中高一貫校があり、合計で13校となる。その数は都立の10校を上回る。

 また、5校に医学部進学を目指す医学コースを新設。「茨城の進学実績が向上する」と歓迎する声がある一方で、急ピッチの改革と大学進学最優先に映るスタンスを危ぶむ意見もある。

 2017年の知事選で初当選。6期目だった元自治官僚で現職の橋本昌氏(74)との事実上の一騎打ちに勝つ。橋本氏は元々、自民党推薦で知事になったが、後進に道を譲らず、多選を続けたことから、両者は袂を分かった。一方の大井川氏は自民、公明の両党から推薦を受けた。

 大井川氏は県内屈指の名門校である水戸一高を経て東大法学部を1988年に卒業。当時の通産省に入り、同省の初代シンガポール事務所長、商務流通政策グループ政策調整官補佐を歴任。在職中に国費でワシントン大学ロースクールを修了した。

 2003年に退職し、マイクロソフトアジアに執行役員として迎えられた。2010年にはシスコシステムズ合同会社に転じ、専務執行役員パブリックセクター事業担当に。2016年にはニコニコ動画を運営するドワンゴの取締役に就いた。

 家族は弁護士の夫人と1女。座右の銘は「Where there's a will, there's a way.(意志あるところに道は開ける)」


■長崎幸太郎・山梨県知事(51)。1期目。年間報酬2090万円(推定)


 県の財政面の問題もあって、休業要請に協力した事業者への金銭的支援を行っていない。その分、医療体制を充実させるという。また、本来は約125万円である自らの5月分給与を1円にする。

 給与を全額返すと、政治家の寄付行為を禁じた公職選挙法に違反する恐れがある。このため、最低金額である1円になった。新型コロナ対策に取り組む「覚悟の表れ」としている。

 給与返上は賞賛する声が県内外から上がっているものの、一方で「寄附にまわすべき」などと冷ややかに見る意見もある。なお、愛媛県の中村時広知事(60)も136万円の給与1か月分を減額すると表明した。

 山梨県は2月28日には感染者や濃厚接触者となって仕事を休まなければならなくなった人に生活費として1日4000円助成すると発表。感染者への助成は全国で初めてだった。

 長崎知事は東京の開成高を経て東大法学部を1991年に卒業。当時の大蔵省に入り、主計局総務課企画係長や山梨県企画部 総合政策室政策参事、主計局地方財政係主計官補佐などを歴任した。在職中に国費でコーネル大学ロースクールを修了。

 2005年の衆院選で山梨2区より南関東比例代表にて初当選。自民党公認だった。2009年衆院選は無所属で山梨2区から出馬し落選(次点)。2012年衆院選はやはり無所属で当選。2014年も無所属で当選したものの、2017年は無所属で落選(次点)。

 無所属を強いられたのは郵政造反組として離党していた同じ選挙区の故・堀内光雄元通産相が復党したため。2019年の知事選では自民公明両党の推薦を受けており、立憲民主と国民民主の両党の推薦を受けた現職を破った。

 家族は夫人と1男1女。座右の銘は「不惜身命」「かくすればかくなるものと知りながらやむにやまれぬ大和魂」


■大野元裕・埼玉県知事(55)。1期目。年間報酬2383万円(推定)


 自宅待機していた県内の患者2人が相次いで死亡。入院できず、軽症者用のホテルにも入れなかった。そもそもホテルの確保が遅れた。

 1人目は4月17日、2人目は同21日にそれぞれ亡くなった。1人目の死の情報は共有化されていなかった。もし、共有化されていたら、2人目は亡くならずに済んだ可能性がある。大野知事は「このような事態に至った我々の責任は重いと考えている」と語り、事実上謝罪した。

 県内の感染者は3月31日までに90人に達していたが、大野知事は同日の記者会見の中で、当時は発出前だった緊急事態宣言について、「私権の制限などを伴うものは最小限で慎重であるべきで、国民や県民に対してしっかり説明ができるような緊急事態宣言の発出でなければならない」と持論を展開した。

 政府により緊急事態宣言が発出された4月7日も「不要不急の外出自粛要請」などを出したものの、事業者への自粛要請はしなかった。もっとも、感染者数が増加一途だったこともあり、同10日には方針を一転させる。東京都などと同じく、5月6日まで劇場やキャバレー、学習塾などに、施設の利用やイベントの停止を要請することになった。

 埼玉県川口市生まれ。慶應義塾高、慶應義塾大法学部を経て、新潟県にある国際大修士課程を修了。1989年に外務省に入省した。

 在イラク日本大使館専門調査員、在カタール日本大使館専門調査員、ヨルダン日本大使館書記官などを歴任。中東問題のエキスパートとして名を馳せる。2001年、川口市の総合ビルメンテナンス業・ゼネラルサービスの専務取締役に。2005年より5年間、防衛省防衛戦略委員会委員を務める。

 2010年の参院選に埼玉県選挙区から出馬し、初当選(民主党公認)。2016年に再選(民進党公認)。2019年、参院議員を辞職し、知事選に出馬。立憲民主党県連、国民民主党県連、社民党県連合が支持し、共産党の県委員会が自主支援した。

 自民、公明の両党が推薦した元ヤクルトスワローズ内野手でスポーツライターの青島健太氏(62)との事実上の一騎打ちになり、初当選。選挙戦では「日本一暮らしやすい埼玉を実現する」と訴えた。

 家族は夫人と1男2女。祖父は元川口市長の故・大野元美氏。座右の銘は「立国は公にあらず私なり」

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 元大阪府知事の橋下徹氏(50)は4月25日、大阪ローカルの情報番組で、「知事がポンコツとポンコツじゃないのがはっきりした」と語った。もっとも、今評価を下すのは早計ではないか。新型コロナ対策はまだ続く。

高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)
ライター、エディター。1990年、スポーツニッポン新聞社入社。芸能面などを取材・執筆(放送担当)。2010年退社。週刊誌契約記者を経て、2016年、毎日新聞出版社入社。「サンデー毎日」記者、編集次長を歴任し、2019年4月に退社し独立。

週刊新潮WEB取材班編集

2020年5月11日 掲載

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