「吉村洋文」府知事の通信簿 「橋下徹」「安倍首相」になくて彼にあるもの

「吉村洋文」府知事の通信簿 「橋下徹」「安倍首相」になくて彼にあるもの

吉村洋文大阪府知事

 時の人となって、連日連夜に亘ってメディアが追いかける吉村洋文大阪府知事(44)。彼が政界に出るきっかけを作った橋下徹元大阪府知事、期待外れの烙印を押され続ける安倍晋三首相にはなくて、吉村府知事にあるものとは……。

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■「国」という言葉を使う不気味さ


 ある民放キー局の幹部によると、

「ウチだけじゃなくて調査という意味では大阪地検特捜部とかも普通にやっていると思いますけれど、吉村さんに何かスキャンダルはないかって大阪方面に聞いたんですが、まったく聞こえてこないと。もう少し調べてみますが、酒はほぼ飲まないし、オンナ問題もCAの奥さんがちゃんとしてるからなさそうだし、利権に目がくらむようなタイプでもないしということで、吉村さんをホメる方へどこも向かっているんじゃないですかね」

 吉村府知事は5月12日、1人あたり10〜20万円相当のクオカードを医療従事者に送ると表明。新型コロナウイルス助け合い基金を通じて、そこには府知事直筆メッセージ付きだという。

「“なんで使えないクオカードなの? あんたらの給料もクオカードにしたらいいのでは?”などといった意見がSNSでは出ていますが、テレビは持ち上げまくりでしたね。例えば14日の『バイキング』(フジテレビ系)では、医療従事者への差別を取り上げた後に、この件を紹介して、礼賛状態(笑)。MCの坂上忍が、“スピード感あるよねぇ”と言っちゃってますから、異論を差しはさみにくい感じもありました」

「安倍さんが仮にクオカードみたいな政策をぶち上げたら、それこそ、“メッセージは不要不急”とか根拠なしに“モリカケ利権の再来”とか散々だったでしょうね。そもそも安倍さんは一律10万円給付に急旋回したこと、星野源とのコラボ動画、そしていまだ届かない人が圧倒的なアベノマスクで国民の信頼を裏切り続けているので、しばらくは何をやってもうまくいかない。もっとも、野党がここでやる気を見せても良い政策は政府にパクられるだけだし、福山哲郎参院議員のように、とあらぬ方向へスベって政権与党を利するだけになってしまう」

 吉村知事がその株を大きくあげたのは、新型コロナウイルス対策を担当する西村康稔大臣とのバトルがきっかけだった。吉村知事が「新コロ特措法に基づく緊急事態措置の解除基準を国が示さないといけない、ここは大阪モデルを提案したい」などとぶち上げたことに、西村大臣が「仕組みを勘違いしている。解除は知事の権限」と不快感を表明。すると、「休業要請の解除基準を国に示してほしいという思いも意図もありません。延長するなら出口戦略も示して頂きたかったという思いです。今後は発信に気をつけます。ご迷惑をおかけしました」と引き取った。

 永田町関係者はこう分析する。

「計算なのか天然なのかわかりませんが、吉村さんは『国』という言葉を使っているんですね。安倍さんとも西村さんとも言っていないし、政府とも官邸とも言わない。ある意味で官邸を立てていて、不気味だっていう人もいますね。例えば公明党を批判する際にも創価学会がどうのこうの! とは言わないわけです。生々しいので。どうしても学会の名前を出さなければいけない時でも、池田大作先生が! とは言わない。そこまで言われたら全力で対抗せざるを得ないですからね」


■メディア出演は公務か?


「そして、国という権力に対して弱々しくてカネのない一地方という図式をうまく作り出せています。実際、東京都以外は国からの助成金ナシにはやっていけません。しかも陳謝する形で矛を収めた。これが橋下さんだったらムキになって、安倍さんガーとか総務省ガーとか言っていたかもしれません。コロナ禍で人気コメンテーターになった今でも、特措法を“クソ法律”と斬り捨てたりしていますよね。その後に、“昼の番組だから『お』をつけて、おクソ法律と言います”と続けたのはなかなかでしたが……」

 そんな橋下氏には苦い経験がある。大阪市長時代、在沖縄米軍兵士への風俗活用をめぐる発言がそのひとつだろう。当時、普天間飛行場の司令官と面会した際に、「もっと日本の風俗業を活用してほしい」「風俗業を活用してもらわないと、海兵隊の猛者の性的なエネルギーをコントロールできない」と伝えたところ、司令官は「米軍では禁止の通達を出している」と会話を打ち切ったのだった。

 橋下氏はその後、「国際感覚が足りなかった」と釈明したが、地元紙からは、《彼に何より足りなかったのは人権感覚だ。人間認識の根本的な誤りに気付いていないのが問題なのだ》と批判を受けている。

 ともあれ、吉村知事の活躍が功を奏したのか、共同通信による直近の政党支持率では、日本維新の会が8・7%となり、立憲民主党の6・9%を抜いて野党トップに躍り出た。

「もともと維新は『自民の別動隊』と言われてきました。憲法改正に反対していませんからね。そもそも、自民党が下野した後、安倍さんが再び総裁選に出るか出ないかが話題になっていた2012年、橋下さんと松井さん(一郎・現大阪市長)は、自民党を割って維新のトップにならないかと打診しているほど。関係はその後も良好で、これだけ支持率をあげてきたので、『自公』という現在の枠組みに加えて『自公維』というものも持ち上がってきていますね。吉村さんの“活躍”で『別動隊』の注目度があがる分には、安倍さんとしては悪い話ではないでしょう」

 もっとも、好事魔多し。政治は一寸先は闇とも言う。連日のメディア出演について問われた吉村知事は、「公務」と説明した。その礼賛具合から、テレビ局のことを市役所の一部だと見ることは可能だが……。

週刊新潮WEB取材班

2020年5月15日 掲載

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