「菅首相誕生」ならNHKの受信料は必ず下がる 総務相時代のバトルを忘れていない

菅義偉首相誕生ならNHKの受信料が下がるとの推測も 総務相時代にはNHKと攻防

記事まとめ

  • 菅義偉氏の第1次安倍内閣当時の辣腕ぶりは今でも永田町で語り草になっているという
  • ふるさと納税の導入や皇居・迎賓館の一般公開など、既得権益の改革などに力を発揮した
  • NHKとの攻防も繰り広げており、菅首相誕生ならNHKの受信料が下がるとの推測も出ている

「菅首相誕生」ならNHKの受信料は必ず下がる 総務相時代のバトルを忘れていない

「菅首相誕生」ならNHKの受信料は必ず下がる 総務相時代のバトルを忘れていない

菅義偉官房長官

 にわかに浮上した菅義偉官房長官の総裁選出馬。岸田文雄政調会長も石破茂元幹事長も、この事態を望んでいなかったことは言うまでもない。だが、それ以上に、もし菅氏が首相になったらどうしようと、心配で仕方がないのはNHKだという。

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 菅官房長官と言えば、“令和おじさん”としての柔和な表情と、史上最長の官房長官として安倍晋三首相に仕えた実直な男だと思っている人は少なくないはずだ。

 ところが、彼が第1次安倍内閣で総務大臣(郵政民営化担当大臣を兼務)として初入閣した時の辣腕ぶりは、今でも永田町で語り草になっているという。政治部記者は言う。

「菅さんは47歳で衆議院議員に初当選という遅咲きの政治家ですが、当選4回で初入閣しています。それが06年9月に発足した第1次安倍内閣でした。結局、第1安倍政権は1年で退陣してしまったのですが、菅さんが主導し、今も評価されている業績はたくさんあります」


■格安スマホも功績


 具体的には、

●ふるさと納税の導入

●栄典制度の見直し(民間人や国内で活躍した外国人への授与を増やす)

●皇居・迎賓館の一般公開

●古民家活用の推進

●ジビエの利用拡大

「年功序列が基本の官僚人事に手を入れることもあった。菅さんは規制緩和と既得権益の改革に実力を発揮しました。携帯電話のSIMロックを解除させ、格安スマホが出てきたのも菅さんのおかげと言っていいでしょう。官房長官になってからも、スマホ料金は4割下げられるといった発言もありました」(同)

 庶民派といわれるだけのことはある。

「中でも激しかったのが、受信料引き下げを巡るNHKとの攻防です。現役の総務大臣として、NHKとあれほど正面切って喧嘩した政治家は珍しい」(同)


■受信料を2割下げろ


 先手を打ったのは菅総務相だった。07年1月10日の夜、インドネシアを訪問中の菅氏が同行記者との懇談会で、受信料の2割引き下げをぶち上げたのだ。

「当時、地上波カラー契約で月額1345円だった受信料(口座振替)を、1000〜1100円程度に引き下げるというものでした。ただし、値下げを条件に、放送法を改正して支払いを義務化するというものでした」(同)

 現行法では、テレビを設置した者は、NHKと契約する義務はあるが、支払いの義務はない。

「とはいえ、NHKはこの前年、民事手続きによる支払いの督促を開始したことで、未払い者は急減。17年12月には最高裁が、支払い義務があるとのお墨付きを与えてしまったため、今では事実上、義務化されたようなものです。まだ当時は、NHKにとっては、支払いの義務化は悲願だったのですが」(同)

 だったら、値下げをすれば済むこと。

「NHKは義務化は悲願でも、値下げには一貫して反対でした。菅さんの2割値下げ宣言に対し、橋下元一NHK会長(当時)は、即座に『値下げの余力はない』と反対を表明しました。ただ、菅さんの強固な姿勢を恐れたのか、徐々に軟化していきます。1月31日には『9月を目途に受信料の全体の体系の見直し案をまとめる』と言ったものの、菅さんも引かない。2月1日の会見で、『そんなに時間をかける必要はない。もっと早く結論を出してほしい』と発言。すると、NHKは『値下げの可能性を前向きに検討する』と折れたのです」(同)

 菅総務相はそれでも強気だった。国会では次のように発言している。

菅:NHKの受信料額を決めるのは、今委員の御指摘にありましたように、放送法第三十七条の四項、この規定によって、国会がNHKの収支予算を承認することによって定める、こうなっていますから、これはやはり、NHKが定めるものではなくて、国会が承認するものだと私は思います」(2月22日 衆議院総務委員会)

 NHKの受信料は俺が決める、といったところか。また同日の総務委員会ではこうも発言している。

菅:放送事業者というのは、NHKだとか民放、そういうものを問わず、公共性がまず強く求められている。特にNHKには、放送法第七条に基づいて、公共の福祉のために、あまねく全国に放送する、さらに視聴率にとらわれない、豊かでよい放送番組の提供といった高度な公共性というものを期待されているというふうに思っております。

 視聴率を気にするNHKには耳の痛い話だろう。


■受信料徴収に759億円


「さらに菅さんは2月末、放送業界としがらみがあるとして、NHK担当だった総務省の放送政策課長を更迭しました。これには党内からも批判の声がありましたが、NHKは震え上がったでしょう。とはいえ、NHKも水面下では必死のロビー活動を続けていました」(同)

 結局、議論は平行線のまま、支払い義務を盛り込んだ放送法改正案は先送りに。

「そこで総務省は、6月にNHK受信料のあり方をテーマにした『公平負担のための受信料体系の現状と課題に関する研究会』を立ち上げました。菅さんとしてはあくまで、受信料の義務化と2割引き下げをセットで行うつもりでした。もちろん、NHKはこの研究会への参加を拒否しました」(同)

 値下げだけは認めたくなかったのだ。

「7月になると参議院議員選挙が行われ、自民党は惨敗。その頃になって、NHKは3つの値下げ案を出してきました」

【1】一律50円値下げで、口座振替利用者とクレジット利用者はさらに50円引き

【2】口座振替利用者とクレジット利用者のみ100円引き

【3】一律100円値下げ

「NHKの経営委員会委員長は首相の任命ですから、こんな値下げでは認められない。しかし、選挙後の改造内閣で菅さんは、事務所費問題が発覚し、総務相から外れました。NHKは内心ホッとしたでしょうね。その後ものらりくらりとやり過ごしながら、史上初の受信料値下げを発表したのは、東日本大震災後の11年10月でした」(同)

 月額最大120円の値下げだった。

「菅さんは当初から、“6000億円というNHKの予算の中で、受信料を集めるのに800億円もかかっている”のはおかしいと言い続けていましたが、その状況は今も変わっていません。現在、NHKの事業収入は7384億円(19年度)で、そのうちの96%となる7115億円が受信料によって賄われています。そして受信契約、受信料徴収のために、759億円も費やされています。ムダはまだまだあります」(同)

 受信料を集めるために759億円。単純計算で1日2億円である。そして、今年10月には受信料値下げが再び行われる。現在の月額1260円(振込・クレジット)を1225円にするという。値下げ額35円。

 未だ菅総務相が提案した2割値下げには遠く及ばない。果たして、菅“首相”がこれを見たらどう思うだろうか。

週刊新潮WEB取材班

2020年9月3日 掲載

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