「菅総理」密接業者が公有地を異例の好条件で入手 行政の不自然な譲歩のナゾ

■第二の森友疑惑! 「菅総理」タニマチが公有地を異例の好条件で取得(1/2)


 思えば安倍政権の躓きの石となったのは、公有地売却に絡む「森友疑惑」であった。その後継政権を自負する菅総理も、関係者が不透明な公有地の払い下げを受けていた。太いタニマチが異例の条件で公有地を手に。

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 横浜市のちょうど中央に位置する保土ケ谷区。その北東、横浜国立大学の南門近くに位置する住宅街。そこに斜面状の3千平方メートルほどの土地がある。

 現在、その区画には、北から南へ、老人ホームと低層マンション、ドラッグストアが立ち並ぶ。一見、何の変哲もない一画であるが、本来ならばここには今頃、保育所が出来ているはずだった。この土地はかつて、神奈川県の県有地。5年前、「保育所や学生寮の設置」を条件に、ある民間業者に売却された。しかし、その条件は守られず、土地は転売され、保育所は影も形もない。そしてこの不可解な取引の中には、横浜を地盤として立身出世、ついに1カ月半前、国のトップとなった人物の名が見え隠れするのである……。

 政権発足当初は支持率70%前後。「たたき上げ」「パンケーキ」のイメージ戦略と、「デジタル庁」設置や携帯電話料金の値下げ、不妊治療の保険適用など、「国民目線」の施策提示が功を奏して上々のスタートを切った菅政権。この1カ月で支持率は下降線に入ったがそれでも尚、高水準だ。

 そんな中、表に出た不動産売買。もう少し言葉を加えるならば、公有地がある業者に異例の条件で売却された。業者は菅総理の長年のタニマチで、交渉の過程で総理の名前も出していた……となれば、誰もが前政権時の「森友問題」を思い起こすのではないだろうか。

 この奇怪な取引について、本誌(「週刊新潮」)では今夏以来、神奈川県に情報公開請求を行い、多数の内部資料を入手した。それを検討すると、経緯の異様さと、菅総理の影や形が立ち上がってくるのである……。


■不可解な随意契約


 神奈川県がこの土地の売却手続きに入ったのは、2013年。もともとここには、神奈川県警の職員宿舎「常盤台公舎」があった。それが利用者の減少に伴い廃止され、払い下げられることになったのである。

 さる自治体の公有地売買担当者によれば、

「公有地の売却については、民間に売る場合、公平性を保つため、一般競争入札で行うことが原則」

 当然、この土地も競争入札の方針で、県は、不動産鑑定士に評価額の鑑定を依頼。秋にも入札を行うスケジュールを予定していた。

 ところが、

「保育所と学生寮を併設した施設整備のため、この土地を取得したい」

 6月になって現れたのが、横浜市内の「(有)成光舎」なる会社の河本善鎬(かわもとよしたか)代表である。また、同社は、この県有地を四角形とすると、左辺と下辺の部分をL字型に細長く持つ「隣接地権者」でもあった(図参照)。

 県はこの提案に難色を示しつつ、前向きな姿勢も示す。

「随意契約にするには、隣接地権者であることに加えて、横浜市長から“成光舎に譲ってやってもらいたい”との副申(ふくしん)(参考意見)が必要」

 とアドバイス。しかも、わざわざ横浜市にも連絡し、その書き方を指南までしているのだ。そんな“厚遇”が実ってか、8月、横浜市の林文子市長から神奈川県の黒岩祐治知事宛てに「市は待機児童ゼロを目指している」「成光舎が県有地を保育所整備のために活用するのであれば、市民にとって有益である」との「副申書」が提出される。これを受けて、県は9月、同社に随意契約で売却する方針を固め、河本代表に伝えているのである。

■主な業務はパチンコの経営


 しかし、これを振り返り、

「疑問を感じますね」

 と言うのは、さる神奈川県庁関係者。

「そもそも成光舎に本当に保育園を設置する能力や意欲があったかどうか疑問」

 実は成光舎の主な業務は、パチンコホールの経営。同社の商業登記簿を取ってみても、「目的」欄に記されているのは、「遊技場の経営」「飲食店の経営」「バー、キャバレー、ナイトクラブの経営」など。これまで福祉関係の業務経験など皆無であろう業者だ。畑が全く異なる保育所の設置が可能か、県はそうした調査もなく、売却を決めているのである。

 そもそも、隣接所有者である点についても、もともとの地権者ではなく、

「2006年と2013年に購入している」(同)

 成光舎の所有地は、細長い棒状の崖地で、利用価値は少ない。要は、

「県有地の売却を事前に知り、狙って周囲の土地を購入していたのでは」(同)

 随意契約の経緯だけでもかように疑問はあるが、交渉はここから更に混迷する。


■「納得ができない。また来ますよ」


 先に述べたように、県はこの土地について、既に不動産鑑定士に評価額の鑑定を発注していた。その結果が出、県は売却額を約4億5700万円と決定。12月に河本代表に伝えた。

 すると、

「思ったよりも高い」

 と河本代表は異論を唱え始めたのである。

「(こちらの見込みは)3億円台の半ばくらい」

「事業の採算が合わない。保育園・学生寮も開設できない恐れがある」

 これに対して県は、

「鑑定評価の内容に問題点は確認できない」

「今の条件で貴社が購入できないとのことであれば、一般競争入札に向けた手続きを進めることになる」

 と応じる。極めて真っ当な対応だが、河本代表はこれに激怒する。

「その発言は問題ですよ」

「そんなこと言うなら、最初から話をする必要はない。帰りますよ。現地に旗を立てますよ。差し止め訴訟を起こしますよ」

「納得ができない。また来ますよ。また来ますよ」


■突如再鑑定を実施


 この発言は県が作った内部文書の交渉メモから引いている。実際の表現はもっと苛烈であったろう。まるで“恫喝”に見える。

 県はこれにも動じず、再鑑定はしない、との方針を貫いていた。

 しかし、2014年の5月。「再鑑定を実施する」……なぜか突然、県はこれまで否定していた再鑑定に舵を切り、河本代表に伝達するのだ。もっとも、最初の鑑定の有効期限は1年間。その期間内での再鑑定はイレギュラー。そのため「建築費が高騰した」「消費税が上がった」との理由を捻出しているのである。

 7月、その再鑑定の結果が出る。額は約3億8800万円。結果として当初の鑑定より7千万円、実に15%もの値引きとなったのだ。

「週刊新潮」2020年11月5日号 掲載

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