国会質問も行われた「菅総理」密接業者の公有地転売問題 神奈川県知事の苦しい言い訳

■「菅総理のタニマチ」という補助線


 週刊新潮11月5日号で報じた「菅総理」密接業者の公有地転売「ぼろ儲け」の謎。総理は関与を否定、神奈川県知事も火消しに回った。だが、つぶさに見ると、この取引は奇々怪々なのである。国会質問まで行われた、菅総理版「森友事件」の裏側とは。

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「当該企業の経営者と面識はあるか」

「献金を受けた事実はあるか」

「神奈川県や横浜市とこの案件について総理の事務所関係者が関与した事実はあるか、お答えください」

 菅総理が国のトップとなって初めての国会審議。代表質問の中で、本誌(「週刊新潮」)報道を受け、野党からはこんな質問が飛び出した。

 はっきり言えば、この売却、説明のしようがないことばかり。どこをどう取っても疑問しか出てこない。しかし、「菅総理のタニマチ」という補助線を入れると、立ちどころに問題の解が見えてくる……。国会という場で、ご本人に質問が行われたのも当然なのだ。

「(取引への)関与はない」

 当の菅総理は述べたが、この案件にはさまざまな疑問がある。まずは改めて疑惑を整理しておこう。

■「菅官房長官へ話しに行く」と“恫喝”


 横浜市保土ケ谷区。横浜国立大学の南門近くの住宅街に、神奈川県警の職員宿舎「常盤台公舎」があった。利用者減少に伴って廃止が決まり、払い下げのための手続きが始まったのが2013年。当初、県は一般競争入札を予定していたものの、そこに、この土地の「隣接地権者」である「(有)成光舎」の河本善鎬(かわもとよしたか)代表が現れ、「保育所等を作りたい」と売却を依頼。すると、奇々怪々の出来事が動き出すのだ。まず同社は、主な業務がパチンコホール経営であるにもかかわらず、横浜市から「保育所整備をしてほしい」との副申書(ふくしんしょ)(参考意見)も出て、とんとん拍子に随意契約での売却が決まる。

 その後、県が鑑定によって決定した売却額は約4億5700万円。しかし、これに河本代表は「高過ぎる」と文句を付け、値引きを要求。当初は必死で抵抗していた県もなぜか途中で要求に屈し、2014年、再鑑定を実施。約7千万円、15%も値引きした約3億8800万円での売却を決めてしまうのである。

 行政の「全面譲歩」はこれに留まらない。2015年、この土地は成光舎に売却される。その際には、「保育所等の設置」と「10年間の転売禁止」という条件が付いた。しかし、成光舎は何と売買当日にこの土地を自らの関連会社に売却。さらに転売をするべく、動きを進めていた。この契約違反が県にばれると、河本代表は「横浜市の条例で工事ができず、保育所の開設は無理」と言い出す。今更になってのとんだ背信行為に、県は激怒……と思うところだが、なぜか代表の言い分を全面的に受け入れ、「転売禁止」を解除してしまったのだ。こうして2016年、河本代表は土地を大手住宅メーカーに売却。2億円近い「濡れ手で粟」の利益を得た……と見られる。

 この河本代表は、実は菅総理の長年のスポンサー。衆院初当選時から10年以上も「成光舎」名義で献金を続けたばかりか、菅総理の所有ビルを買い取ったり、自らの所有ビルに菅事務所を入居させたりしていたこともある。

 本件の交渉過程でも、河本代表が、「県の対応によっては、菅官房長官へ話しに行く」「納得がいかなければ、官房長官にも行きますから」などと、総理の名を出して県の役人を“恫喝”していたことが、県庁の内部文書に記されているのだ。

■お粗末な言い訳


 不可解な公有地の売却手続きと、交渉に飛び出す大物政治家の名……まさに「森友事件」を彷彿とさせるが、菅総理は冒頭のように関与を否定している。

「神奈川県の黒岩祐治知事も、ぶら下がりの会見を行いましたが……」

 とは、さる全国紙の社会部デスク。

「“適正な手続き”を強調していました。随意契約にした点については、“最も高い価格で売却できる方法を選択した”“成光舎は隣接地主”のため“より高い価格で売却できる”と」

 その後、大幅に値引きをする癖に、「高い価格で」とはよくも言えたものである。

「再鑑定をしたことについては“建築資材の高騰が見られたから”。契約違反を追認したことは、“買い戻しても当初の価格以上で売却できる見込みはない”と弁明していましたね」

 本誌では、報道に当たって、情報公開請求を行い、県から内部資料を入手している。その枚数はおよそ2700枚もあるが、他方の、知事の弁明を聞く県政担当の記者にはそれがない。だから、こんな説明にも納得してしまうかもしれないが、実際、これらはかなり苦しい言い訳だ。

 例えば、「建築資材の高騰」。これは、そもそも成光舎側が値下げさせるために持ち出してきた論理である。文書を見ると、県はこの指摘に対し、「それは結果論である」「再鑑定は行わない」と明言している。それがある時点を境に、成光舎の言い分に丸乗っかりしたところが不可解なのである。

「買い戻し」についても、資料の中にこれを検討したという箇所はない。ただ唯々諾々(いいだくだく)と河本代表に従っただけなのに、今になって新たな論理を持ち出す。

 要は「値下げ」「追認」という結論ありきで、理由を後から探しているに過ぎないのである。

「知事の発言は言い訳としてお粗末です」

 と言うのは、「かながわ市民オンブズマン」代表幹事の大川隆司弁護士。

「隣接所有者というだけでは、そもそも随契(ずいけい)をする理由にはならないし、もうひとつの条件であった保育所の建設も守られていない。再鑑定によって、知事が言うような『高い価格』でも売られていない。論理が破綻しています。建築資材の高騰についても、当時、大幅に上昇するような社会情勢にあったとは認められない。また、成光舎がその後、高い金額で転売したであろうことをみても、『当初の価格以上で売却できる見込みがない』との説明には、疑問が残るばかりですね。本来なら、契約違反で土地を買い戻し、一般競争入札で売るべき案件です」

「週刊新潮」2020年11月12日号 掲載

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