「利権の島」買収の裏に「加藤官房長官」 “口利き”面談記録も

馬毛島160億円買収の裏に加藤勝信官房長官か リッチハーベスト社は加藤氏と面談も

記事まとめ

  • 昨年12月に、馬毛島160億円買収で地権者と合意したと当時官房長官だった菅氏が発表
  • リッチハーベスト社がタストン・エアポート社を相手取り民事裁判を起こしている
  • リッチ社は、加藤勝信氏と和泉洋人補佐官に頻繁に面談を重ねていたという

「利権の島」買収の裏に「加藤官房長官」 “口利き”面談記録も

■防衛省「馬毛島」買収に暗躍した「加藤勝信」官房長官(1/2)


 馬毛島の買収で地権者と合意した、と当時官房長官だった菅総理が発表したのは昨年12月。買収の舞台裏は一切表沙汰になっていないが、その一端が分かる訴訟が密かに進んでいる。そこには加藤勝信官房長官の「口利き」を示す面談記録が証拠として提出されていた。

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 その会社は東京・新橋、中華料理店や大衆居酒屋などが立ち並ぶ一画にある。宝石販売会社や法律事務所、「開運鑑定」などが入る雑居ビルの5階。事務所のドアの横には、問題の会社「リッチハーベスト」(以下、「リッチ社」)の他、関連会社2社の表札が掲げられていた。

 民間調査会社によると、不動産業を営むリッチ社は資本金1500万円で年間の売り上げは8千万円程度、従業員は3名となっている。2005年に同社を設立した社長は大手建設会社元役員、もう一人の役員は大手不動産会社の出身だ。事務所の雰囲気や規模、どの点からも「160億円」の巨額案件に関わるような企業には見えない。

 その案件とは、鹿児島県の種子島の西方約12キロに浮かぶ広さ約8平方キロメートルの無人島、馬毛島(まげしま)を巡るものである。昨年12月2日、当時は官房長官だった菅総理がこの馬毛島について、約160億円で買収することで地権者と合意した、と発表。地権者は島の99%以上を保有する「タストン・エアポート」という会社である。すでに島の所有権の半分以上が国に移っており、全てにおいて売買が完了したあかつきには、米軍空母艦載機の発着訓練(FCLP)用地として利用される予定だ。

 つまり馬毛島の買収は我が国の安全保障をも左右する懸案なのだが、そんな重大案件にリッチ社が関わったのは紛れもない事実である。その経緯について詳述する前に、買収交渉の生々しい舞台裏を物語る「証拠」をご紹介しておきたい。

■裁判で提出された音声データ


 リッチ社がタストン社を相手取り、馬毛島の売買代金160億円の3%、約5億円を仲介手数料として支払うよう求める民事裁判を起こしていることはまだほとんど知られていない。そして、その裁判に興味深い証拠が提出されていることも――。

 その一つは音声データの反訳書、すなわち、会話の内容を文字で書き起こしたものである。音声が録音されたのは16年5月31日、場所は世田谷区にある「立石建設」の本社ビル。喋っているのは、タストン社や立石建設の創業者である立石勲氏やその親族と、リッチ社の役員、リッチ社側の関係者などである。

 この反訳書はタストン社側が提出した証拠。音声が録音された翌日、タストン社とリッチ社は馬毛島の売買を巡り専属専任媒介契約を結んでいるが、その背景に「脅迫」があったとタストン社側は主張しているのだ。専属専任媒介契約を結ぶと、タストン社はリッチ社以外の不動産会社に取引の仲介を依頼することができなくなる。また、タストン社はリッチ社から金を借りていて、この時点で数億円に膨れ上がっており、すぐに返済できないなら専属専任媒介契約を結べ、とリッチ社側は求めている。

 この音声データには興味深い点が複数あるが、一つは、国との馬毛島売買に向けた交渉がすでに始まっていることが示唆されている点である。政府がタストン社と馬毛島の売買契約に向けて協議を始める合意書を締結し、それが報じられたのは16年11月。その半年も前に録音された音声データの中で、リッチ社の役員は次のように話している。

「国も、国も、ね? 何度も何度もこの話してるから、ちゃんと了解取れてんのかって言われて(机をたたく)。これ(専属専任媒介契約書)を持ってかなきゃいけないんですよ」

「金集元(ママ)からも、いい加減にしろってプレッシャーがかかってきてるからこっちも必死になってるわけですよ。そしたらちょうどここにきて、国の方がいいよって言いだしたから、じゃあこれに乗っかるしかないだろう。だからここ1カ月くらいの話ですよ」

■「ちょろちょろさせるな」


 また当時、タストン社の勲氏は沖縄を地盤とする下地幹郎代議士にも交渉の窓口を依頼していたようで、「下地先生なら菅官房長官のハンコをもらえる」、つまり馬毛島の売買をまとめられる、とリッチ社の役員に伝えている。しかしリッチ社役員らはそれを一蹴し、次のように話している。

リッチ社役員「押さないって言ってんじゃん、だから。菅さんは」

勲氏「言ってるんですか?」

リッチ社役員「言ってますよ。下地の話は聞かないっつってんだから」

リッチ社関係者「もう(菅さんに)会ってるんだよ、みんな」

リッチ社役員「なんで自民党が維新の会のハンコ押すんですか?」

リッチ社関係者「だから下地があんまり動いているようだから早くしろよ、と(机たたく)」

リッチ社役員「ちょろちょろさせるなって言われてるんですよ。下地クラスを」

 それでも勲氏は「下地ルート」を諦めきれないようで、こう食い下がる。

勲氏「その下地の話は本当にだめなんですか?」

リッチ社役員「だめですよ。何回も言うけど。いや、だから、借りてくればいいじゃない、下地がお金用意するつったら」

勲氏「あの人は金はできないけど、ハンコさえもらえばと言うんですよ」

リッチ社役員「だからもらえないっつってんだから」

勲氏「菅さんからですか?」

リッチ社役員「600回言いますよ、もう、600回言ってますよもらえないって。なんで下地の書類に菅さんがハンコ押すんですかって」

リッチ社関係者「話になんねーな」


■契約前に何度も加藤氏と面談


 この反訳書以外にもう一つ興味深い証拠がリッチ社側から提出されている。馬毛島売買の仲介行為に関する「面談記録」(画像参照)。それを見ると、専属専任媒介契約が交わされた2日後の6月2日、リッチ社は、当時は内閣府特命担当大臣だった加藤勝信官房長官の議員会館で秘書と面談している。一方、タストン社側は「勲氏が手帳に記したメモ」を証拠として提出しているが、6月2日のメモには〈弁ゴ士より議員会館に提出〉とある。つまり同日、リッチ社は交わしたばかりの専属専任媒介契約書を加藤氏の事務所に届けたとみられるのだ。

 さらにその2年後の18年10月25日から12月28日にかけて、リッチ社は4度も議員会館で加藤氏本人と面談している。また、菅総理の懐刀で、週刊文春に「コネクティングルーム不倫」を報じられた和泉洋人総理大臣補佐官とも3度面談している。タストン社と防衛省が馬毛島の売買仮契約を結んだのは19年1月9日。その直前、リッチ社は加藤氏と和泉氏に頻繁に面談を重ねていたことになるのだ。

「馬毛島に関しては、長らく防衛省とタストン社の勲氏が売買交渉を続けてきましたが平行線を辿るばかりだった。そこで途中から菅総理が『菅案件』として馬毛島案件を抱え込んだ。18年7月には菅総理本人が勲氏と会っていますが、主に現場で動いたのは和泉補佐官でした」(政府関係者)


■リッチ社と加藤氏の関係


 では、リッチ社と加藤氏はいかなる関係なのか。

「リッチ社と加藤さんの義父、故加藤六月元農水相は古くからの親しい間柄で、それが勝信氏に引き継がれたと聞いています」(同)

 両者の関係を間近で見てきた勲氏にも話を聞きたいところだが、同氏に近い関係者はこう語る。

「勲さんは昨年11月に正式に馬毛島の売買が決まって安心してしまったのか、今年に入ってから一気に体調を崩してしまいました。元々80代とは思えないくらい若々しいというか元気な人だったのですが、急に年相応以上になった」

 リッチ社と加藤氏の関係については、

「一体視していました。勲さんはリッチ社を加藤さんの『関連会社』と言っていました」(同)

「週刊新潮」2020年11月19日号 掲載

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