首相を呼び出す、無双のキングメーカー「二階幹事長」の頭を悩ませる「公認問題」

■くら替え問題


 昨年12月14日の8人が集った「ステーキ会食」で、菅義偉首相を呼び出したことを暴露された二階俊博幹事長。政府が「5人以上の会食の自粛」を要請する中での“決行”に、「飯を食うために集まったんじゃない」とうそぶき国民の総ツッコミを受けていた。菅氏を首相に就ける流れを作ったキングメーカーとして無双ぶりを見せつけるかのようだが、そんな二階氏にも悩みのタネとなっている「公認問題」があるという。

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「衆院の山口3区の一件ですね」

 と政治部デスク。

「そこは二階派(志帥会)に所属する河村さん(建夫元官房長官)の地元なんですが、岸田派(宏池会)の林さん(芳正元文部科学相)が参院山口選挙区からくら替え出馬することに決めたという話が浮上しています。自民党の公認が得られない場合には、無所属での出馬も辞さないという強い決意のようで、揉めに揉めそうな気配です」

 山口3区は、かねて因縁の選挙区だった。

 林家は芳正氏で4代目となる政治一家。蔵相や厚生相を務めた父・義郎氏の時代には、衆院中選挙区の山口1区を地盤としていた。

 その旧1区は小選挙区制の導入で山口3区と4区に分かれ、4区を安倍晋三前首相が、3区を河村氏が確保。

 1996年10月の衆院選で、義郎氏は比例代表中国ブロックに回ることとなった。2003年に政界引退したが、一方で息子の芳正氏は1995年に参院議員となっていた。

「もともと旧山口1区時代から、安倍家と林家はしのぎを削ってきました。現在も晋三さんと芳正さんは犬猿の仲。晋三さんが地元とする下関は林家の城下町だという意識も強いし、実際そうですしね。それはともかく林家にとって、小選挙区の地盤を奪還することが悲願。これまでもコトあるごとに“芳正さんの衆院くら替え話”が浮上しては消えてきました。後援会からのプッシュもあり、芳正さんもスキあらばと狙ってきたわけです」(同)

■比例復活すらできない


 文科相、防衛相など大臣を歴任してきた林氏も今年、還暦を迎える。首相を目指すと言って憚らないが、そのためには衆院議員への転身は必須。衆院議員の任期切れまで1年を切って、状況が慌ただしくなってきたようだ。

「年末には、かつての派閥ボスである古賀さん(誠元幹事長)と面会したほか、引退しても依然として政界に影響力を持つ青木さん(幹雄元自民党参院会長)とも年明け6日に会って、次期衆院選でのくら替え出馬を伝えています。ガチンコ勝負に舵を切った印象がありますね」

 ある永田町関係者によると、

「河村さんは今年79歳。長男の政策秘書に地盤を譲るという話がありましたが、その間隙を縫って林さんが出てきかねず、それは実現しないままでした。結局、今年のどこかである解散総選挙には河村さん本人が出馬することになりそうですが、少し前に体調を悪くしたようで、そういうこともあって、林さんが攻勢をかけているのはありますね」

 相手の弱いところを突く。戦争の基本である。

 実際、山口3区で両者がガチンコ勝負をしたらどうなるのか?

「林さんの圧勝ですね。先ほどもお話ししましたが、中選挙区時代からもともと林さんの地元だったわけですし、すでに政治家として“上がり”の河村さんに対し、首相待望論の根強い林さんとでは有権者の熱量も違う。公認の最終責任者は幹事長の二階さんなので、『自民党公認の河村さんvs無所属の林さん』という構図になるわけですが、林さんの圧勝は揺るがない。下手をすれば河村さんは比例復活すらできないかもしれません」

 とはいえ、河村陣営も手をこまねいているわけではない。

■製造者責任を問われる


 昨年、河村氏の地元での決起集会では、二階幹事長は派閥の半分弱の人間を送り込んだ。

 そこで二階氏自ら、「反党行為をした人がどういう立場になるか、言わずとも分かるだろう」と発言。

 さらに二階氏の右腕である林幹雄幹事長代理は、「党に弓を引くことになり、除名になる。そういうおろかなことはしないと思う」などと、処分をチラつかせ挑発したのだった。

「本気で分裂選挙になれば戦争になります。その際には、林芳正さんが文科相時代に公用車で若干いかがわしく映るヨガ店を訪れていたと報じた週刊文春の記事のコピーが選挙区に大量にバラ撒かれることでしょう。かつて後藤田正純さんが女性との逢瀬をフライデーされた時も同じでしたが、仁義なき戦いそのものですね」

 とはいえ、

「二階さんを支える林幹雄さんも、年長の河村さんがいなくなれば自分が文字通り派閥のナンバー2になれるので、河村さんの当選を心から望んでいるかと言うとそこまでのものではないようです。さらに言えば、菅政権が低空飛行のままでは、“製造者責任”を二階さんは問われることになるでしょう」

 首相を呼び出すほどの権勢を極めた幹事長も一寸先は闇、ということになるだろうか

週刊新潮WEB取材班

2021年1月12日 掲載

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