〈企業・経済深層レポート〉 「エーザイ」「協和発酵」リストラに踏み切る製薬会社の裏事情

〈企業・経済深層レポート〉 「エーザイ」「協和発酵」リストラに踏み切る製薬会社の裏事情

(提供:週刊実話)

昨年から今年にかけ、希望退職者を募る製薬会社が続出している。

 大衆薬「チョコラBB」シリーズでおなじみの製薬会社「エーザイ」が、昨年から各年100人、2021年までに300人の希望退職者を募ったところ、初年度だけで約300人が応じた。

 キリングループの中堅製薬会社「協和発酵キリン」は、人数は未定ながら45歳以上、勤続5年以上の社員を対象に希望退職者を募る。

 他にも希望退職者を募る製薬企業が多く、その数、製薬業界全体で約3000人超ともいわれ、製薬企業の関係者は「事実上のリストラです」と悲鳴を上げる。

 製薬会社でリストラが進む背景には何があるのか。

 製薬業界関係者は大きな要因に、「2010年頃から問題になっている大型医薬品の特許切れがある」と指摘する。

 医薬品特許の有効期間は出願の日から最大20年で、取得すれば企業収益に多大な貢献をもたらす。
「武田薬品工業は、糖尿病治療薬のアクトス、高血圧のブロプレス、消化性潰瘍治療薬タケプロン、子宮内膜症治療薬のリュープリンなど様々な特許を持ち、国内トップクラスの製薬会社として君臨していた。ところが、これらの特許が次々と切れはじめたため、経営が苦しくなってきています」(製薬業界関係者)

 一方で、世間が注目するような画期的な新薬は、なかなか開発できていない。
「そもそも新薬の開発は、一般的に10年スパンの長い年月と数千億円単位の莫大な開発資金が必要となる。しかし、それだけの時間とコストをかけても新薬の開発は至難の業なのです」(同)

 そのため、武田薬品が2019年に打った手はアイルランドの製薬会社大手「シャイアー」の買収だ。買収金額はなんと約6兆2000億円。しかし、武田はこの買収で一躍世界トップ10入りを果たした。
「結局、できるかも分からない新薬創出にお金をかけるよりも、収益を上げる薬を持っている会社を買収するほうが手っ取り早いのです。そのため世界の大手製薬企業は、昨今、次々とM&Aを仕掛けています。しかし、こうした動きができるのは、一部の大手製薬会社のみ。特許が切れた中堅以下の製薬会社の大半は、先行きが見えないため、人員を減らさざるを得ないのです。それが昨年から今年にかけて、多くの製薬会社が希望退職を募る大きな要因の一つになっています」(同)

 それに加え、国の薬価制度の大きな変化が、製薬企業を苦しめているという。
「日本の税収は年間40兆円しかないのに、国の一般会計予算は100兆円で毎年60兆円の赤字。これが積もり積もって、国の借金は、今や1000兆円です。その大借金の大きな原因の一つといわれているのが年間42兆円(2017年度)という莫大な医療費です。その42兆円のうち、7兆7000億円が調剤費なのです」(金融系シンクタンク関係者)

 この薬代金をどう抑えるかが、大きな課題になっているという。
「国は低価格のジェネリック薬品を積極的に使用する医療機関が儲かる仕組みにしたりなど、あの手、この手で薬価を抑えるのに躍起になっています」(同)

 こうした、シワ寄せが製薬会社にジワリと押し寄せているのだという。

 さらに製薬会社のMR(医薬情報担当者)の役割が変遷していることもリストラに拍車をかけている。MRとは、主に製薬会社の営業部門に所属し、医薬品の品質、有効性、安全性などの情報を、医療関係者に提供する職種。患者の治療に最適な処方薬として、医療関係者に自社の医療薬を選んでもらうことを目指すのが大きな役割だ。
「よく病院で医師の診察や業務が終わるのを待っている医薬品関係者を見かけると思いますが、その人がMRです。ただ、最近はスカイプやITを駆使して、薬の効能などを医師や薬剤師に説明する手法が発達しつつあり、従来のMRは必要とされなくなりました。さらにMRより医師の研究や論文の手助けまでできる、より専門知識を持ったMSL(メディカル・サイエンス・リエゾン)が医師に重宝され始めています。そのため、製薬会社ではMRを減らす動きが強まっているのです」(MR・男性)

 新薬が開発できず弱体化している製薬会社が増え、その改善策も見つかっていないため、手っ取り早くリストラをする傾向が強まっているのは確かだ。
「現状のままなら、小野薬品のがん免疫治療薬『オプジーボ』のような画期的新薬は、ますます生まれにくい方向に向かっている気がします」(製薬企業関係者)

 大規模なリストラで現状をしのぐしか、根本的な解決策が見つかっていない製薬業界は、崩壊に向かっているのかもしれない。

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