医者のはなしがよくわかる“診察室のツボ”<PTSD(心的外傷後ストレス障害)>眼球運動の治療でトラウマを克服できる

医者のはなしがよくわかる“診察室のツボ”<PTSD(心的外傷後ストレス障害)>眼球運動の治療でトラウマを克服できる

医者のはなしがよくわかる“診察室のツボ”<PTSD(心的外傷後ストレス障害)>眼球運動の治療でトラウマを克服できる

 過去の辛い記憶が突然「フラッシュバック」する「PTSD(心的外傷後ストレス障害)」。95年の阪神・淡路大震災や地下鉄サリン事件をきっかけに、深い心の傷や大きなストレスを受けた後に強い精神的な苦痛が持続する病気として、一般にも広く知られるようになった。

「PTSD」は、幼少期の虐待や性的暴行、自然災害、戦争など、命を脅かされるような出来事が原因で発症する。感情が萎縮するなど日常生活の様々なところに影響を及ぼし、悪夢でうなされることもある。「PTSD」患者は、原因となった出来事と関連した会話・行動・場所・人物などを避ける傾向がある。他にも、痛み、寒さや空腹感、悲しみや怒りなどを感じない、自分の殻の中に閉じこもるなどの症状が現れる場合もある。強いストレスや出来事に遭遇した後に、これらの症状が1カ月以上続いたら、精神科あるいは心療内科を受診したほうがいいだろう。

 治療は、カウンセリングによる心理療法が一般的だ。医師と患者が共同して治療していくため、自己開示をして、医師と良好な関係性を築き上げることが必要だ。自身のトラウマと向き合わなければならないため、時には治療に辛さを伴うこともある。併用して向精神薬や向不安薬、抗うつ薬、鎮痛薬などの投与も行われる。

 最近では眼球運動に着目した「EMDR(眼球運動による脱感作と再処理)」治療が注目されている。89年にアメリカの臨床心理士によって提唱された心理療法だ。治療法は、トラウマの原因となった過去の出来事をイメージし、セラピストが左右に振る指を目で追う眼球運動を行う。精神的ストレスが少なく、トラウマと向き合う治療法よりも精神的負担が少なく済むことから、今後広がっていく治療法として注目される。

田幸和歌子(たこう・わかこ):医療ライター、1973年、長野県生まれ。出版社、広告制作会社を経てフリーに。夕刊フジなどで健康・医療関係の取材・執筆を行うほか、エンタメ系記事の執筆も多数。主な著書に「大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた」(太田出版)など。

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