横浜点滴殺人「内部犯行説」で浮上した「終末病棟」の闇現場

横浜点滴殺人「内部犯行説」で浮上した「終末病棟」の闇現場

横浜点滴殺人「内部犯行説」で浮上した「終末病棟」の闇現場

 神奈川県横浜市の大口病院で起こった点滴殺人。現場付近の飲食店店主は、「マスコミのカメラが店の前まで占拠するもんだから、客足が遠のいていますよ」と音を上げているが、何せ人の出入りが少ない病院内での密室犯行。戦慄の犯人像はしぼられつつあるようだ。

 終末期医療が専門の4階ナースステーションに保管されていた点滴袋に何者かが注射器を使って、界面活性剤を混入。9月18日、20日と80代の入院患者2人が立て続けに中毒死した。

 9月27日、高橋洋一院長は報道陣を前に、沈痛な表情で声をしぼり出した。

「犯人が腹立たしい。皆目見当がつかないが、内部の可能性も否定できない」

 捜査関係者が語る。

「当初、怨恨の線で被害者の人間関係を洗ったが、それらしき情報は上がってこなかった。点滴袋に界面活性剤が混入されたのは17日以降と見られている。つまり事件当日、犯人は現場に居合わせていなかったかもしれない。ターゲットも無作為。そうなると無差別殺人とも言える鬼畜の所業だ。ナースステーションに出入りできる人物となると、やはり内部犯行を疑う声は強い」

 福岡徳洲会病院センター長の長嶺隆二医師は言う。

「たとえ毒性がなくても、点滴薬以外の異物が血管に入れば、2、3分で死亡します。そんなことは、医療従事者であれば誰でも知っています。状況から考えて、注射や点滴の扱いに慣れた医療従事者による犯行の可能性は高い」

 また、大口病院では7月から9月20日にかけて、前述した2人以外に46人の入院患者が死亡。8月には1日に5人が亡くなっていたことがわかっている。この「大量死」について、高橋院長はこのように発言した。

「やや多いという感じを受けたので、カルテを見たが、院内感染はないし、重症者が送られてくるのが増えたので、そのせいかなというところで終わっている」

 しかし、前出・長嶺医師は疑問を抱く。

「室内での転倒や熱中症で病院に搬送され、死亡するというケースはあるが、わずか数カ月の間に46人が死亡しているのは、異常事態だと言わざるをえない」

 注目すべきは、寝たきりの高齢者が患者の大半を占める「終末病棟」で不審死が発生した点だ。大口病院関係者が重い口を開く。

「患者に大した治療を行っていたわけでありません。病院は病床の回転率を上げていかなければ、診療報酬が稼げない。不謹慎かもしれないが、どんどん死んでもらったほうが、新しい患者を受け入れられるので、病院経営にとっては好都合という考え方もできる」

 事件の“下地”はできていたというのだろうか。

 別の捜査関係者が言う。

「2人の点滴殺人と46人の大量死とのつながりも視野に入れて捜査が進められている」

 事件は「無差別大量殺人」として拡大する様相を帯びてきた。その予兆は以前からあったと前出・病院関係者は言う。

「病院は利益優先で、そのしわ寄せは現場に向いていた。最近は看護師の離職率が高く、人手不足で仕事量が増えていた。こうした中、4月には看護師のエプロンが切り裂かれ、さらに患者のカルテが紛失。ペットボトルへの異物混入など、トラブルが続いていた。そして今回の事件ですよ‥‥」

 この病院関係者は、1カ月ほど前に、4階ナースステーションで、一人の看護師が疲れた表情を浮かべ、このような不満を漏らしているのを耳にしたという。

「点滴や注射を打っても、よくなるわけでもない」

 前出・長嶺医師は、疲弊する終末期医療の闇現場に警鐘を鳴らす。

「我々が激務に耐えられるのは、患者さんの笑顔があるから。しかし、終末期医療では患者さんがよくなる見込みがありません。希望が見いだせないのです。そのため、たくさんの医療従事者が心を病み、ストレスを抱えている。医療界全体で取り組んでいかなければ、同様の事件はまたどこかで起こりうるでしょう」

 はたして「すぐ近くに潜んでいた」とされる犯人の正体とは──。近隣に住む60代の女性は、その影におびえるばかりだ。

「週に1回、整形外科外来に通って、膝に注射を打ってもらっていたけど怖くて、今は通院をやめている」

 一刻も早い解決が待たれる。

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