「ゴールデン街」最古参マスターが述懐する59年(3)「酒と会話で憂さを晴らす」

「ゴールデン街」最古参マスターが述懐する59年(3)「酒と会話で憂さを晴らす」

「ゴールデン街」最古参マスターが述懐する59年(3)「酒と会話で憂さを晴らす」

 ゴールデン街は、その雰囲気に引かれ、多くの著名な作家、ジャーナリスト、編集者といった文筆業関係者だけでなく、映画監督や劇団の演出家、男優、女優、モデルなどが通った。

 常連客だった中上健次氏は芥川龍之介賞、佐木隆三氏は直木三十五賞を受賞したことも報じられ、文化人が集まる街と言われるようになるが、「突風」はそのハシリでもある。

 劇団仲間が集まり、モデルも兼ねていた柴田氏と同じ所属事務所の菅原文太もよく飲みに来た。

 柴田氏は当時、俳優の片手間だった声優業で、専門の事務所「青二プロ」を設立。声優、俳優の養成にも力を入れた。柴田氏が今まで出演したアニメの作品数は2000を超し、現在も9本のレギュラーを持つ。

 昨年から歌舞伎町を中心に有線で「悪質ぼったくり追放」のアナウンスを流しているが、声を担当しているのは柴田氏だ。

 今年80歳を迎えた柴田氏だが、私生活もエネルギッシュ。やはり声優である夫人(関根明子さん)とは頻繁に海外を巡る。水泳、乗馬、ゴルフも続けている。

 70年代には学生運動の活動家も飲む街だったゴールデン街。80年代にはバブルの波が押し寄せ、不審火騒ぎが頻発するほか、猛烈な地上げ攻勢にもあった。

 その後、空き店舗だらけになり存亡の危機を迎えたが、出店を目指す若者の誘致を積極的に働きかけるなど、柴田氏らの尽力で、今のゴールデン街は再び生まれ変わったのだ。

「遅かれ早かれ再開発をしなくちゃならない時代が来るだろう。ライフラインも限界に来ている。しかし、ゴールデン街の店はどこも3〜4坪の狭い空間で、昔風でカラオケのない店がほとんど。おのずと酒と会話になる。愚痴が出る。その日の憂さを晴らす。こんな雰囲気が昭和の薫りと言われている。この雰囲気を愛する人はいつの世にもいる。防災、安心、安全対策を皆で行って、頑張りが続くかぎりこの薫りをゴールデン街に残していきたい」

「突風」は会員制とあるが、初めての客でも、気さくに打ち解けられる雰囲気を柴田氏ご夫妻は醸し出している。話の続きがじっくり聞けるかもしれない。

笹川伸雄(ジャーナリスト)

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