【ベトナム編・下】金の卵の「卵」たちの日本人気の理由は

【ベトナム編・下】金の卵の「卵」たちの日本人気の理由は

授業では教えなくても…(提供写真)

【現地リポート 外国人労働者の実像】

 ベトナム編(下)

 ◇  ◇  ◇

 今月から可能となった外国人の単純労働者の受け入れ。送り込む側のベトナムの国際空港での光景は、まるで高度成長期の「金の卵」たちの国際版のようだった。

 首都ハノイから車で1時間半ほどのハイズオン市の公立高校を訪れると、全校生徒が歓声で迎えてくれた。そして、ほとんどの学生は、あいさつ程度の日本語を話せた。ある学生は、私に日本語が話せると言って近づいてきて、いきなり「ごめんなさい」と頭を下げて笑っていた。

 多少困惑しながら、校長に話を聞くと、同校では卒業生(1学年の学生数は約300人)の3割が留学生、もしくは実習生として日本に行くという。それ故、日本語は授業で教えていないが、自分で少し勉強している学生が多いとのことだった。

 学生たちは「金の卵」のさらに「卵」のような存在だが、なぜこれほど、日本はベトナムの若者に人気があるのだろうか。

 同校の卒業生で現在、日本に留学中のAさんは、近くに日系企業も多数進出しているタンチョン工業団地があり、日本が身近であることが第一の理由であると語る。

 ハイズオンの学生たちも、とにかく日本に行けば、日本で働けるかもしれないと思っている。さらにベトナムに帰国することになっても、比較的高賃金である地元の日系企業で働けると考えるのである。

 日本が新制度で受け入れる「特定技能」の外国人労働者は、移民なのかどうか――。昨年の入管法改正審議では外国人労働者が「特定技能1号」から「特定技能2号」になれば母国に戻らないこと(永住)を前提に議論となったが、送り出す側の条件としては、日系企業が現地にある程度進出しており、日本が身近になっていることが挙げられる。特にベトナムでは常に帰れる状況がある。

 これは実際に彼らが日本で働いた後に帰国することを意味するのではない。あくまでも彼らのマインドの問題である。

 これは日本国内の大都市に大量の「ヒト」がなだれ込んだ昭和の「金の卵」との大きな違いであろう。日本企業が安価な労働力を求めてベトナムに進出することで、結果としてベトナムは「送り込む国」としての安価な労働力を日本に提供するようになるのである。

 ヒトの流入と流出の一体化は、グローバリゼーションがなせる構造であると言える。

(安井裕司/日本経済大学教授)

関連記事(外部サイト)