積水ハウスが63億円被害 不動産業者明かす“地面師”の驚愕手口

積水ハウスが63億円被害 不動産業者明かす“地面師”の驚愕手口

事件の舞台となった物件(C)日刊ゲンダイ

 大手住宅メーカーの積水ハウスは2日、分譲マンション建設用地の購入代金として63億円を支払いながら、土地の所有権移転登記ができなかったと発表。警視庁は「地面師」の被害に遭った可能性が高いとみて、詐欺事件で捜査を開始した。

 取引は同社と契約している不動産会社「IKUTAホールディングス」が、都内の土地所有者を名乗る女から2000平方メートルの不動産を購入し、積水ハウスに転売する「中間省略登記」という形式で行われた。積水ハウスが6月1日、購入代金70億円のうち63億円を支払った。しかし法務局に所有権移転の登記申請をしたところ、女が提出したパスポートなどの偽造が発覚、同月9日、登記申請が拒否され、女と連絡が取れなくなったという。

 物件はJR五反田駅から徒歩3分、緑に囲まれた一角にある、旅館「海喜館」。まるで「お化け屋敷」のように朽ち果てている。登記簿によれば1975年にAさんが相続し、数年前まで営業していた。

「駅近で約600坪の整形地となれば、100億円の価値が見込めます。その上、抵当がついてない“きれいな土地”ということで買い取りたい業者が引きも切らなかったが、Aさんは首をタテに振らなかった」(関係者)

 そんな超優良物件に“異変”が起こったのは今年4月24日。登記簿にIKUTA社の名前が記載されたのだ。自身も地面師の被害に遭いかけた不動産業者がこう言う。

「誰も触っていない土地に目をつけ、免許証や保険証をすべて偽造して売り抜きをかける。間には個人でやっているようなブローカーが何社か入り、弁護士を立て、直接やりとりしません。ヤツらはとにかく決済を急ぐ。私の場合、転売しようと思って話を進めていたのですが、転売先が決済に間に合わないという理由で、取引はボツになった。後になって、書類が全部偽造され、地面師による架空取引だと分かった。直接、話をしていたブローカーによると、本人かどうか確認するために『お宅にお邪魔したい』と言うと、『近所の人に知られたくない』と理由をつけ、絶対に家には入れない。その代わり、無理難題をふっかけても揃えるのが難しい書類も含め、すべて提出します。司法書士も書類でしか判断できないので、見極めが困難なのです」

■中間省略登記の仮登記は難しくない

 それにしても、なぜ積水ハウスのような大企業がダマされたのか。

「優良物件であればあるほど、売り主の立場が強くなります。買い手も優良物件が手に入るとなると、つい儲けばかりを計算して冷静な判断力を失いがちです。うるさいことばかり言って、いたずらに相手を刺激するのは避けたい。『だったら、他の業者に話を持っていく』と言われたら、すべてがパーですから。中間省略登記の仮登記は比較的簡単にできます。書類はすべて完璧に揃い、司法書士や弁護士のお墨付きがあり、仮登記ができればつい信用しても無理はありません。しかも積水ハウスは以前から、業界内でもチェックが甘いのではないかという指摘があった。実際、私が取引に関わった時も、あまり細かい注文をしてこないので、いい会社だなと思ったぐらいです」(前出の不動産業者)

 近隣住民によれば、数カ月前、積水ハウスの社員とおぼしきサラリーマン数人が、真っ青な顔をして辺りをウロウロしていたという。


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