完成後も市民閉め出し…新国立競技場はなぜ自由に入れないのか
2019年12月04日 09時26分 日刊ゲンダイDIGITAL

完成したのに市民を“シャットアウト”(新国立競技場)/(C)日刊ゲンダイ
いつになったら、一般市民に開放されるのか――。先月30日に完成した新国立競技場のことだ。来年の東京五輪のメインスタジアムとして1569億円をかけて竣工したが、市民は“シャットアウト”されている。
整備の事業主体である独立行政法人「日本スポーツ振興センター(JSC)」は新国立の整備に関するリーフレットの中で、〈市民に開かれた「杜のスタジアム」を創ります〉と強調したが、建物の周囲は依然として白いフェンスで囲まれたまま。「市民に開かれた」どころか、気軽に立ち入ることすらできない。
JSCが起工式で使用した新国立のイメージ動画には周長850メートルの屋上空間「空の杜」で市民が散策したり、ジョギングする姿が描かれている。にもかかわらず、実際は閉め出しているのだ。
なぜ、完成したのに自由に入れないのか。スポーツ庁に問い合わせると、「大会組織委員会が今後、新国立で五輪に向けた整備工事を進めていきます。したがって、フェンスを残した方が効率的との判断に基づき、組織委の要望で置いてあります」(政策課)と答えた。テロ対策などセキュリティー上の理由もあるという。
五輪後も半年以上はフェンスを放置
確かに、組織委はホームページ上で〈メインスタジアムであるという特殊性、また、大会要件であるセキュリティの観点より、(中略)仮囲い及び仮設事務所等については、撤去をせずにそのまま引き継ぐこととなりました〉と明記している。とはいえ、「国立」と称して血税を含んだ莫大な費用を投じたのに、完成後も市民は出入り禁止とは、五輪最優先の乗っ取りじゃないか。
組織委に工事について聞くと、「今月から着手しており、貴賓席やメディア席、開会式演出用の照明の設置などを行います」(戦略広報課)と回答。工期は2021年3月までを予定しており、新国立を囲むフェンスは工期終了時に撤去予定という。つまり、大会終了後も半年以上はフェンスを放置したままなのだ。
フェンスだらけのメインスタジアムなんて、何とも滑稽じゃないか。