報復に怯える住民もいるが…暴力団はルールの中で抗争している【激震!山口組抗争の結末・上】

報復に怯える住民もいるが…暴力団はルールの中で抗争している【激震!山口組抗争の結末・上】

凶行は商店街で起きた(C)共同通信社

鈴木智彦【激震!山口組抗争の結末】(上)

「パパパーン」。11月27日、兵庫県尼崎市で指定暴力団・神戸山口組の幹部が射殺され、6代目山口組系の元組員・朝比奈久徳容疑者が殺人の疑いで逮捕された。6代目山口組のナンバー2、高山清司若頭が10月中旬に出所し、警察が動向を注視していた最中の事件は世間に衝撃を与えた。準構成員を含め4万人ともいわれた山口組が、6代目山口組と神戸山口組に分裂してから4年。現場を取材した暴力団に詳しいジャーナリストが山口組の「抗争」に迫った。

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 尼崎市で起きた神戸山口組・古川恵一幹部射殺事件は、商店街での凶行で、人通りの多い夕方だったために多くの目撃者がいた。犯行にはM16という軍用自動小銃が使われ、殺害の瞬間を目撃した住民もいる。目撃者はひどく怯えており、取材した後日、「殺し屋に報復される。書かないでくれ」という電話をかけてきた人もいた。それほど凄惨な光景だったのだ。

 通常の暴力団抗争で使用されるハンドガンとは違い、連射が可能で殺傷能力の高い銃器が使われたので、暴力団が先鋭化し、抗争が無軌道になりつつあると感じたかもしれない。ヒットマンが在籍していた竹中組のトップは山一抗争でM16を使用していた。その気になれば重火器の密輸だって難しくはない。

 過去、九州の抗争では手榴弾を使った襲撃が多発し、入手につながる情報には報奨金が出されるようになった。武器庫へのガサ入れの際、マシンガンや無反動砲が押収されたこともある。必要以上の武器を使わないのは裁判での量刑が重くなるのを避け、また世論を騒がせないという彼らなりの思慮だ。

 実際、今でも暴力団は一定のルールの中で抗争をしている。山口組分裂抗争も例外ではない。例えば、どれだけ憎い相手であっても家族に手を出すのはご法度とされる。

「喧嘩はヤクザ渡世の問題であり、家族や愛人は無関係。もし手を出せば外道として扱われる」(指定団体幹部組長)

 組織のバックにいる企業舎弟や密接交際者を狙うこともない。幹部や組員と違ってガードが緩く、襲撃も簡単だが、一般人を殺害すればマイナスが大きいと判断しているのだろう。

 また、不良外国人に襲撃を外注することもない。殺害に成功したところで、もしそんな事実が出てくれば、自分では殺せないと白状しているに等しく、暴力団社会での立場を失うからだ。

 外国のマフィアのように警察や司法関係者も襲わない。弘道会は警察車両のナンバープレートや捜査員の住所をファイルし、ガサ入れの際に押収されたそのファイルを無言の圧力としているというが、権力と喧嘩しても勝ち目がないことは分かっているだろう。

 そう考えると、尼崎の事件も暴力団のルールからは逸脱していない。周辺住民を恐怖させた凶行も、判例では無期懲役が相場で、ヒットマンが死刑判決となるのは、ヤクザがこうした自主規制を超えた時になるだろう。  =つづく

▽すずき・ともひこ 1966(昭和41)年生まれ。カメラマン兼ライター。暴力団系の取材経験が豊富。主な著書に「サカナとヤクザ〜暴力団の巨大資金源『密漁ビジネス』を追う〜」(小学館)、「昭和のヤバいヤクザ」(講談社+α文庫)など。

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