36人犠牲の京アニ放火事件 “死刑囚”が高度医療で延命の不条理【2019年あの事件と騒動の今を直撃】

36人犠牲の京アニ放火事件 “死刑囚”が高度医療で延命の不条理【2019年あの事件と騒動の今を直撃】

煙を上げ、激しく燃える「京都アニメーション」スタジオ(病院へ移送された青葉真司容疑者=左)/(C)日刊ゲンダイ

【2019年 あの事件と騒動の今を直撃】

「ドン、ドン、ドーン」

 7月18日午前10時30分ごろ、大きな爆発音とともにアニメ制作会社「京都アニメーション」第1スタジオ(京都市伏見区)の3階建てビルが一瞬にして炎に包まれた。フロアは瞬く間に火の海となり、建物から絶え間なく立ち上る黒煙が上空を覆った。

「助けて――」 

 全身にやけどを負った女性が悲鳴を上げながら民家に駆け込む。建物に取り残された男性は窓から助けを求め、外壁にへばりつくようにして2階から脱出した人もいた。顔が赤く焼けただれ、全身すすだらけで真っ黒になった人たちが次々に救急搬送され、現場は阿鼻叫喚の地獄絵図と化した。建物内は充満した煙で視界が遮られ、屋上に出る扉の手前の階段から20人の焼死体が折り重なるようにして見つかった。男性14人、女性22人の計36人が命を落とし、33人が重軽傷を負った。

 放火した青葉真司容疑者(41)はスタジオ1階でバケツに入ったガソリンをまき散らし、「死ねー」と叫んでライターで火を放った。その際、はいていたジーンズに火が燃え広がり、数十メートル逃げたところで、追いかけてきた従業員に取り押さえられた。足の裏は焼けただれ、全身の90%にやけどを負い、京都市内の病院に搬送された。

 2日後、大阪府内の病院に移送され、人工皮膚と培養表皮を使用して移植する手術を繰り返し、8月上旬には命に別条がない状態まで回復。11月14日、京都市内の病院に転院し、車椅子に乗った青葉容疑者は、治療に当たった医療関係者の前で涙を流した。

「多くの人が働いている第1スタジオを狙った」

「どうせ死刑になる」

「道に外れることをしてしまった」

 調べに対し、青葉容疑者はそう口にした。

 全身90%以上のやけどを負った患者の治療は過去に例がなく、治療費は高額になる。逮捕前の費用は自己負担だが、本人に支払い能力がないとなれば話は別だ。動機や経緯などいまだ不明な点は多く、裁判で明らかにする必要があるとはいえ、「どうせ死刑になる」(青葉容疑者)というような殺人鬼が、高度な治療で生き延び、36人もの尊い命を奪ったことは、「理不尽」のひと言では片付けられない。

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